【超短小説】年雄、バスに揺られる

年雄は上京してからバスに乗る事はほとんどなく生活してきた。

大体が自転車か電車だ。

でも今日は違う。

最寄りのバス停から目的地まで一本のバスがある。

小雨も降ってる。

上京してから、2回目か、3回目のバスに乗る事にした。

バスに不慣れな年雄でも、終点まで乗ればいいだけだから、気楽だ。

人も少なく、難なく座れた。

ゆらゆら揺られながらのちょっとしたバスの旅。

いつも自転車で通る道だが、バスから見える景色はなんだか違って見える。

静かな街並み。

たまにはいいもんだ。

でもしばらくして、年雄はゆらゆら揺れるバスの中で異変に気がつく。

ゆらゆら、ゆらゆら。

バス酔い。

年雄はゆらゆらが苦手だった。

遠足でバスに乗る時は、必ず酔い止めを飲んでいた事を思い出す。

しばらく乗ってなかったので、忘れていた。

終点まではまだ距離はあるが、年雄は途中で降りた。

小雨に降られなが、目的地まで歩く。

歩きながら年雄は思った。

これはこれで悪くない。

浜本年雄40歳。

目的地に着く頃には雨は止んでいた。

たまにはこういう移動もいいもんだ。

なんて、自分を励ます。

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