【超短小説】年雄の恒例行事
年雄の毎年恒例の行事。
今年もやります。
それは、手袋探し。
家を出る時は手袋をしていた。
自転車漕いで目的地に着き、用事を済ませて家に帰る。
気が付くと手袋が無くなっている。
毎年やってしまうミス。
家を出る時は寒かったけど、途中暑くなって脱ぐ。
記憶はそこまで。
どこで脱いだ?
どこに置いた?
覚えていない。
仕方がないので、来た道を手袋を探しながら戻っていく。
見つかるも見つからないも運次第。
年雄は毎年この行動をとっている。
一年に一回の恒例行事。
なぜまた同じ失敗をする!
去年も一昨年もずっと反省してきたじゃないか!
手袋脱いだ時こそ記憶に留めろ!
何度も何度も、何年もずっと同じ失敗と反省。
年雄は、手袋を無くす事に関しては、もうベテランだ。
プロだ。
だから分かる。
今年の手袋は、もう出て来ない。
今年の風が年雄に教えてくれる。
浜本年雄40歳。
ベテランのカンだが、新品を買うと、無くした手袋は出てくると思う。