【超短小説】年雄とワゴンセール
年雄は近所のスーパーマーケットに来ていた。
靴下を買う為だ。
靴下屋さんに向かう途中にある靴屋さんで、年雄の苦手な物が目に入ってきた。
ワゴンセールだ。
年雄はワゴンセールが苦手だ。
つい買ってしまうからだ。
年雄は自分に言い聞かせる。
"やめろ。足を止めるな。ワゴンの中をのぞくんじゃないぞ"
年雄は目を細くして、ワゴンの横を通り過ぎようとした。
全品980円!
値段が年雄の細くした目に入ってきた。
"ヤバい!足が止まる!クソ!"
年雄はワゴンの中をそーっと覗いた。
年雄はホッとした。子供の靴がメインだ。さすがに買わない。
しかし、ワゴンセールを考えた人は天才だと思う。
売れ残り。人気のない商品。でも、ワゴンいっぱいに詰めてあると、中には掘り出し物がありそうに思えてくる。
年雄はその術に何度もハマり、一度しか着ない服、遊ばないおもちゃ、履かない靴を買ってしまう。
今回はセーフだ。子供の靴だらけ。子供の・・・?奥に大人用もある?
年雄は恐る恐る靴の山をかき分ける。
白のエナメル。27センチ。
あった!大人用の靴!しかも白!どんな服にも合わせやすい!掘り出し物だ!
これだからワゴンセールはやめられない。
あるんだよ!こういう事が!
年雄は興奮気味に靴を買った。
会計の時、店員さんが"よく見つけましたね"と含み笑いをしたように思えた。
浜本年雄40歳。
帰って掘り出し物の靴を履いて散歩に出かけた。
歩く度に"ピッピッピッ"と音が鳴る靴だった。
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