「よその思い出」①
こんにちは。
新しい小説ができたので少しずつ載せていきます。今、考えていることなども一緒に、話しながら。
改めて、自己紹介のようなもの。古本ハレクモ、という屋号で活動していますが、やっていることは、
◇普段は新刊書店と古本屋で働いてます。
◇消しゴムはんこを作って、主にイベントなどに出店していましたがしばらくイベントは無いので最近通販始めました。
◇文章を書いて、自分で冊子を作っています。
こういう活動を始めた最初のきっかけは「一箱古本市」で、当初は古本のみ販売していました。屋号はそのときにつけました。そこで出会った人たちの影響で、古本だけでなく、自作のものをいろいろ販売し始めました。自分の作ったものを発信してもいい場所が出来て、それまでの生活といろいろなことが、考え方も含めて変わって、本当にいろいろ変わって、今に至ります。
とりあえずここでは、冊子にする前の文章を載せていきたいと思っています。無料にするか有料にするか、期間を設定するか等、その都度決めていくと思います。「よその思い出」は、できたばかりで、これから修正していくかもしれません。これで完成、と思ったときに、改めて全文掲載し、冊子作りも始めるよていです。
それでは、「よその思い出」1回目です。
大山さん
散歩の途中の休憩を川沿いのベンチに座って缶コーヒーをのんで、役所の帰りに、話が分かってすっきりしたところとそんなに払いたくないなというモヤモヤと両方ありつつ、川べりのそこの場所は最近の散歩で気に入ったなと思いながら、終えて歩き出したときに中学生の頃に友達だった大山さんという人のことを思い出した。
今いちばん欲しいものはなんですかという質問に「時間」と答えた大山さんに私は衝撃だった。私はとにかくなんでもいいから学校というものが終われば何とかなると思っている、というかそれが終わらない限りは何もできないと思っている。まだ高校も三年も残っているのに、なんということだろう。時間なんて邪魔でしかない。大山さんは学年でいちばん成績が良く、スポーツもできて、ピアノが音楽の先生もあきれるくらい上手かった。大山さんは国連で働きたいと言っていた。コクレンデハタラク。
田舎の電車のボックス席。単線の通勤通学時間以外は一両編成のワンマン電車。駅はだいたい無人で、券売機もその路線の最初と最後の駅にしかない。運賃は運賃表を見て降りるときに運転士さんに渡す。ボックス席で大山さんが開けた窓を、向かいに座っていた中年の女の人が閉め返した。それに対し大山さんはすかさずイヤミを、隣に座る私に話しかけるというかたちで発した。大山さんは「お年寄りは寒がりだから仕方ないね。」という内容のことを確か言った、私がそれをあれはイヤミだったのだ!と気が付いたのはそれから数年後だった。大山さんはそれを二回言った。何で二回言うんだろうと思いながら適当に返事をした私に大山さんはさぞかし歯がゆい思いをしたのだろう。大山さんと一緒に運賃をごまかしたのがばれたこともあったが必死に言い訳する大山さんの後ろ姿の記憶があるだけで駅員さんに怒られたのかもしれないし親や学校に報告されていて当然なのだがそのあたりはちっとも覚えていない。都合のいい頭だ。大山さんはなんで私と友達だったんだろう。友達と思っていたのは私だけだった可能性もあった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?