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「よその思い出」⑦

おはようございます。
「よその思い出」の7回目です。
この「山のはじまり」のパートは自分でも気に入っていて、最初に読んでもらった人にもここがいいと褒めてもらいました。
もうすぐ終わりです。次の、次くらいで。
最後のパートをもう少し直したいなと思っています。

「何かが足りない」という気持ちや将来の夢みたいなものを燃料にして進もうとすると、そのときはスピードが出たとしても、私の場合はすぐに燃料が切れてそのときの自分を代わりに燃やしてしまい、それも大して燃えないのでまたすぐに燃料切れで、しかも回復にとてもとても時間がかかるし、後々本当に大変なので、それはもうやめようと思います。

それでは、「よその思い出」7回目、どうぞ。

山のはじまり 

 遠くから見れば山は緑の三角だけれど近づけば一本一本の木だ。ここは山が近いらしい、高校生のとき部活の合宿で電車で二時間くらい離れたところに住む友達が合宿所のあるこの町に来てそう言った。生まれたときからここに住んでいるので意味が分からなかった。
 川には土手があり、土手を上ると道がある、道がなければ畑がある。民家がぼつりぼつりとあり、その後ろから山がはじまる。家のすぐ後ろは竹藪、家が無く道のすぐ後ろから山がはじまる場合は杉の木の場合もある、杉の木は幹が長く真っ直ぐで途中に枝とかもあまりないので杉から山がはじまると少し奥の斜面になっているところが幹の間から見えて、しいだけの原木が組んであったりする、竹と杉の木以外の木の名前がわからない、杉の木は今の時期でも濃い緑色で上の方が細長い三角形で山全体を見ても杉の固まって生えている部分は三角のとげとげになっていてわかる、そのほかは、遠くから見るとまるくフサフサとして触ると柔らかそうな抹茶を牛乳で割った色の葉っぱが光る木や、細い枝に黄色味の強い細い葉が付いている木や、まあいろいろある。山が緑のまだらだ。
 山のはじまりのゆるい斜面には木を払ってお墓になっているところもよくある。野生の藤の花がはみだしていて、よく見ればその一帯にはあちこちに透明感のない薄い紫色がちらちらとしている。ちょっと前までは山桜が見えたが、山に咲いている花は色がボケているというか、やさしい色をしているなと思う。片道三十分の車の助手席で毎日思う。

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