雨のち晴れ晴れ - ハーバード留学記 -

ハーバードケネディスクール留学記+日常で自分が考えたことを書き並べていきます。 プロフィール: ハーバード公共政策大学院に留学中(ソーシャルインパクト研究) ← 戦略コンサル(大企業/政府/NPO向け) 関心領域:社会課題、NPO経営、海外留学、難民・移民、経営コンサルなど。

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ハーバードケネディスクール留学記+日常で自分が考えたことを書き並べていきます。 プロフィール: ハーバード公共政策大学院に留学中(ソーシャルインパクト研究) ← 戦略コンサル(大企業/政府/NPO向け) 関心領域:社会課題、NPO経営、海外留学、難民・移民、経営コンサルなど。

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社会課題に悪者はいない

3か月前にXでこんなことをつぶやいた。 さて、これは本当だろうか。社会課題に悪者はいないのだろうか? なぜ、社会課題になっているのか世の中では日々、私たち一人一人に無数の「問題」が起きている。 転んで怪我をした、スマホが壊れた、電車が遅れた、親が入院した、詐欺被害にあった、電気代が払えなくなった、…。 この数えきれない問題たちをここでは「個別課題」と呼ぶことにする。 (注:本記事では、「課題」と「問題」は区別せずに用いています。) これらの個別課題の多くは、人々が個

    • アメリカのキャンパスで見た大統領選の風景

      長かったこの2日間を、深夜の大学図書館で思い返している。 世界が注目するこの激しい選挙戦を、アメリカの大学のキャンパスで、それも公共政策大学院で迎えることができたのは、今後自分の留学生活を振り返っても大きなハイライトになるだろう。 だからこそ、眠い目をこすってでも自分が聞いたこと・思ったことを書き残しておきたいと思う。 熱気に包まれるキャンパス11月5日、大統領選当日のキャンパスは言わばお祭り状態だった。 選挙の論点を整理するイベントに続いて、学生・教授たちが一堂に会

      • 衆院選を経て考えたこと(ネット戦、少数与党、投票率、在外投票)

        日本では衆議院選挙の結果が出ましたね。与党の過半数割れということで、今後の政局がどうなるのか、という状況です。 さて、Xにも投稿しましたが、今回の選挙を経ていろいろと考えたことがあるのでまとめておきたいと思います。 ①ネットが主戦場の時代は近い今回の選挙では、国民民主党やれいわ新選組等、切り抜き動画を量産する政党が若者中心に議席を増やしました。 (ここには公式の動画を載せましたが、実際に伸びているのは一般人が党首討論や街宣を切り取った動画ですよね。) このような動きを

        • ガザ戦争とハーバードと私②

          前回の記事では、2023年10月7日の奇襲攻撃が、その後いかにハーバードに飛び火したのか、そして学長がいかにして辞任に追い込まれたのかを振り返った。 学長が辞任して一連の騒動は終息すると思った者もいたかもしれない。しかし、実際にはこの「戦争」はその後学生たちを巻き込んでより肥大化していくことになる。 今日はこの「学生 vs 大学」の戦争の様子と、一年を振り返っての私の思いを残しておきたい。 5. 「学生 vs 大学」という新たな戦争1月に学長が辞任してから、ガザでの戦況

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        • 社会課題を考える
          22本
        • 留学記:ハーバードケネディスクール
          23本

        記事

          ガザ戦争とハーバードと私①

          ちょうど1年前の10月7日、ハマスがイスラエルに対して大規模な奇襲攻撃を実行した。イスラエル人250人以上が命を落とし、多くの負傷者・人質が出た。 その直後、イスラエル側の報復攻撃が始まった。 パレスチナの死者数は、すぐにイスラエルのそれに並んだ。 7日の朝、ボストンの自宅でこのニュースを見た私は、しばらくニュースを追いかけた後、ため息とともに「始まってしまった」とつぶやいた。戦争がまた生まれてしまった(再燃してしまった、というべきか)。 しかし、このハマス-イスラエル

          ガザ戦争とハーバードと私①

          NPOにおけるインパクトの評価について

          (9/29 加筆・編集済) 今日は、私がこの夏にインドのNPOで行った事業によるインパクトの評価について経験をシェアしていきたい。 NPOによる事業評価については、まだまだ国内で多くの事例が語られているとは言い難く、自分の経験から話せることもあるのではないかと思っている。 具体的に何を評価するのか?評価の意義について述べる前に、そもそも事業によるインパクトの評価とは何を意味するのか、から始めたい。 簡単にいえば、自分たちが行っている事業がどれだけ社会にインパクトを生ん

          NPOにおけるインパクトの評価について

          「日本人である」という特権

          留学してから、「日本人である」というのはある種の特権だという思いを強くした。 日本にいれば、「日本人であること」は当たり前なので、自分の国籍に感謝することなどない。しかし、海外で生活を送ると、そしてとりわけ他の国出身の友人たちと話すと、心底「日本人である」というのは特権であるように思えてくる。 「入国できる」という特権これまで30ヵ国近くに入国してきたが、日本のパスポートを保有していることほど心強いことはない。 良く知られた事実だが、日本のパスポートはビザなし(あるいは

          「日本人である」という特権

          社会課題を広く・深く理解する【2024上半期】

          好奇心が旺盛な人間なら誰しも、世の中にある課題は、できるだけ広く、そして深く知りたいものである。 その意味で、YouTubeやPodcastというのは極めて有用なプラットフォームである。マスメディア各社や信頼できる機関が時間をかけて作ったものを、ほぼ無料で楽しむことができる。 そんな中でも、私が2024年上半期で特に印象に残ったものを挙げたい。 選定基準は下記のいずれかである。 そもそも全く知らない社会課題を紹介している 知名度の高い社会課題を違う角度から検証してい

          社会課題を広く・深く理解する【2024上半期】

          社会課題に悪者はいない②

          前回は一人の少女の家出を例に、「個別課題」と「社会課題」の考え方を紹介した。そして、「この社会課題には特定の悪者がいる」という思い込みを超えていかない限り、社会課題の解決は難しい、ということも述べた。 今回はそれを、「虐待冤罪」という具体的な事例から理解したい。 「虐待冤罪」という社会課題まず、是非このドキュメンタリーを視聴してほしい。カンテレの「ザ・ドキュメント」で放送され、複数の賞を受賞したドキュメンタリーである。 「虐待冤罪」という問題を知らなかった方々には、極め

          1年目後半、春学期の8つの授業から学んだこと①

          インドでのインターンも終わり、インド国内とアメリカを旅していました。インドは本当に気づきをたくさんくれる国でした。 さてさて、長らく放置していた先学期の振り返りをしたいと思います。学んだ内容を振り返ることは学ぶことそのものよりも重要だと思っているので、学期後には振り返りの時間を設けるようにしています。 (ですので、今回の記事はどちらかというと自分向けなので、面白くないかもしれません…。) さて、では科目ごとに振り返っていきますが、今回は多いので記事を分けます。今日は必修

          1年目後半、春学期の8つの授業から学んだこと①

          「日本人は時間厳守」なのか

          インドでの生活も2か月近くなり、終わりが迫ってきました。 さて、今日は簡単に。最近「時間厳守」について考えることが増えました。 日本人はよく時間に厳しいといいます。しかし果たして本当に「日本人が」時間に厳しいのでしょうか。それは「国民性」という魔法の言葉で片づけてしまってよいのでしょうか。 2つの側面から考えたいと思います。 そもそも「時間厳守」なのか?私たちが「時間厳守」といったとき、何をイメージするでしょうか。電車が時間通りに発車する、授業や会議が時間通りに始まる

          「日本人は時間厳守」なのか

          英スナク首相 辞任スピーチ【日本語訳】

          今日本では都知事選が話題ですが、その数日前にイギリスで政権交代がありました。 選挙後に保守党党首・スナク首相が行った退任スピーチは、極めて潔く素晴らしかったのですが、全訳が見つからないので自分で日本語訳してみました。(一部意訳が含まれます。) スピーチの動画はこちらです。 私は彼の政策には反対する点も多々ありましたが、このスピーチには心から感動しました。敗者のスタンスとして、手本にすべきものだと思います。 全文と日本語訳―――――――― Good morning.

          英スナク首相 辞任スピーチ【日本語訳】

          死因に表れる社会問題

          今日は簡単に。 インドに来て1ヶ月が経つが、毎日感じる問題の一つに、大気汚染がある。 私は通勤にオートリキシャーと呼ばれるトゥクトゥクのようなタクシーを利用している。 ご覧の通り、窓やドアがないので、外気が直接体に当たる。暑い日は気持ちが良い一方で、排気ガスの煙たさを感じることも多い。特に、通勤ラッシュの時間は道中に車やバイク、リキシャの排気ガスが立ち込める。息をするのが苦しいことさえある。 インドでは原付バイクやオートバイの利用者も男女問わずかなり多い。そうなると、

          日本のソーシャルセクターの「北極星」は何か ~アメリカと人種差別③~

          今日は少し専門的だが、日本のソーシャルセクターでも徐々に流行し始めている2つのコンセプトに関するアメリカでの議論を、人種的公正という観点から紐解きたい。そしてその上で視点を日本に移して持論を述べようと思う。 今回の議論は、前々回と前回で紹介した「アメリカと人種差別の不可分性」への理解が前提となるので、ここに再掲する。 今回紹介する2つのコンセプトとは、collective impact(コレクティブインパクト)とstrategic philanthropy(戦略的フィラン

          日本のソーシャルセクターの「北極星」は何か ~アメリカと人種差別③~

          アメリカ社会から学ぶべきことは何か ~アメリカと人種差別②~

          前回は、アメリカ社会に多大なる影響を及ぼす人種差別の存在を紹介した。 今日はそこから少し話を広げてみる。 あらゆる社会課題に人種差別が影を落とすことが特徴であるアメリカ社会では、社会課題の「解決手法」を考える際も、人種的公正さの観点から批判的な検討がなされる。 「社会課題解決」と聞けば、誰もが当然望ましいことだと感じる。実際、課題が100%解決するのであればそれ以上のことはない。 しかし、現実はもう少し複雑である。 問題の解決に向けて社会運動が誕生し、改革の機運が高

          アメリカ社会から学ぶべきことは何か ~アメリカと人種差別②~

          全ての社会問題に通底する「人種」の視点 ~アメリカと人種差別①~

          アメリカで公共政策を学ぶ中で深く痛感するのは、アメリカという国における「人種差別」という問題の根深さと、その社会におけるとてつもない存在感である。 私たち日本人にとって、人種差別という問題はあまり身近ではないかもしれない。日本が単一民族国家だというつもりはないが、人種的多様性は極めて低いため、この問題がクローズアップされることは少ない。 それでも、国際社会に少しでも興味がある人であれば、アメリカでは人種差別が大きな問題であるということはそれなりに理解されていると思う。その

          全ての社会問題に通底する「人種」の視点 ~アメリカと人種差別①~