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「約束」 1

?:わたしの名前はね、何かでちょーてん…?をめざしてほしいからつけられたんやって
だから、これから先にこれっ!って決めたことが出来たらそれでいちばんになるの!!


1人の女の子が夕焼けを背に目の前の子に話しかける


○:そうなんや!
でも…ひとりでいちばんになるのはさみしない?


男の子は心配する


?:うっ…そうかもしれへん…グスン

○:泣かないで!?…や、やからさぼくも天が決めたことでちょーてんを目指すよ!
そしたらふたりでいちばんや!

天:..ほんと?…「約束」してくれる?ウルッ

○:うん!ぜったい!!「約束」!!!

天:えへへ…//

○:だから、これあげる!

天:なにー?これ

○:ぺんだんとってやつ?ぼくもおなじの持ってんねん!
なんか、おねがいごとを決めて、かなった時にくっつけたらずーっとそばにおれるんやって
やから、ふたりでちょーてんになったらこれくっつけようよ!!

天:そうなん!?ありがとう!!ずっと大切にもっとく!

○:うん!やから、指切りげんまんね!!

天:わかった!



2人が指切りを交わそうとした瞬間
視界がぼやけてくる



○:っ…

またあの夢か


高校生3年生の○○は自分のベッドで目覚めた

時間はまだ5時、普通の学生なら二度寝にうつつを抜かすところだが


○:っ..よし!


重たい腰を上げ、登校の準備をする


○:おはよ、母さん

母:おはよ○○
もうできてるからパパっと食べちゃいな?

○:ありがと、いただきます!


簡単な食事と身支度を終え、学校に向かう


こんな時間から暑いな…
でも、こうやって早起きして来るのもあとちょっとやんなあ


○○は野球部に所属している
現在の時期は7月で、夏の甲子園の予選大会まであと1週間と言ったところである


約束…か、もう「あいつ」はそんなこと覚えてへんのやろな


そんなことを思いながら○○は学校に到着した

すぐに誰もいないグラウンドに出て、黙々と練習を続ける


習慣というものは恐ろしい、1年生の頃はただしんどいだけだったが、今ではやらなきゃ気持ちが悪いほどになっていた。

一通りのメニューを終え、息を整えていると「あいつ」がやってきた

?:大会まで1週間やのに、アホちゃうん?


○:!おはよ、天

天:っ///…ふんっ!
○○は調整って言葉を知らへんの?


彼女は山崎天、○○の幼少期からの幼なじみであり、
野球部のマネージャーである。

密かに○○が恋心を抱いている相手だ。

中学3年生から高校1年生の間だけ、天は親の転勤の影響で東京の高校に通っていたが、2年次に○○と同じ高校に転校し、今に至る


○:天こそ、こんなあさから何しにきとるんや笑

天:そ、それは!
…どーせどっかの誰かさんは野球バカだからオーバーワークしてへんよなって思って見に来ただけやで?
あくまでチームのためやからな!?

○:はいはい笑
心配してくれてありがとうな?

天:っ!//..もう知らん!教室行く!!


○:うん、またな〜

よし…あともう1セット


朝一から想い人に会えて、1層気合いが入る○○だった



〜教室〜

天:はぁ…


天はため息をついていた


そこに1人の女の子が


凪:天様!おはようございます!!
今日はいつもに増してしかめっ面で可愛いですね😍え?どうしたんですか??

彼女は小島凪紗
天を心から慕っている高校からの友人だ

天:こん凪〜、今ちょっと1人にさせてくれへん?

凪:分かりました(`・ω・´)ゝ

天が言うとすぐに凪紗は去っていった


クラスメート:天ちゃん今日も可愛いなあ
 
クラスメート:でも最近元気なさそうやない?

クラスメート:そんな顔も綺麗だよね〜


天:はぁ…

天は再度ため息をついた


うう、最悪や

今日も、頑張って!の一言が言えんやった…

でも、元はと言えば○○が悪いんやからな?

あの時…


そう、あの時から天は変わったのだ



時はは中学生時代にまで遡る



〜中学生時代〜

天は天真爛漫で男勝りな性格だった

髪も短く、ソフトボール部に所属しており年中肌も小麦色に焼けていた。

○○はソフトボール部に入った天の影響で中学から野球を始めた

その時から、○○は天との「約束」のため天がもしソフトボールで頂点を目指すのなら…!と、競技が似ている野球で頂点を目指そうとしていたのだった

お互いがお互いと競い合い、時には励まし合いながら頑張っていた


天:(やっぱ○○かっこええなあ…//)

○○は「約束」のことを覚えてくれとるんやろか…まあもし忘れてんのやったら?絶対シバくねんけどな?//


実は○○だけでなく、天も○○にずっと惚れていたのだ

だが、幼なじみで大親友という関係を失うのが怖かった2人は、どちらも思いを打ち明けられずにいた


天:(でも…)

実は、天はひとつ秘密を抱えていた


そんなある日

いつも登下校は二人だが、帰りは話す時間を作るため
いつも遠回りして帰っている。

〜下校中〜

天:なぁ、○○は好きな人とかおらんの?

○:お、おらんよ?!急にどないしたんよビックリするわ

天:別に〜?笑

おらんのか、良かった//

○:そういう天はどうなんやって

天:わ、私!? 私は…//っておらん!おらんよ?…///

○:(え、嘘、この反応いらっしゃる人のやつやん)

密かにショックを受ける○○であった

○:ま、まあ天はその、俺が言うのもなんやけどモテると思うで、顔立ち整ってるし

天:!!っ…えへへ、そうかなあ//

天:..って!私の方はええんよ//じゃあ○○の好きな女の子のタイプ教えて…?//

○:(何処の馬の骨か知らんが、今日から俺のライバルやな、今はちょっっとだけリードしとるか知らんけど今に見とけよ)

天:なぁ…聞いてんの!バシン

○:痛!え、何!?

天:やからあ、○○の好きなタイプ教えて..??

○:タイプ?…タイプかあ、えっとなあ

おいおいマズイぞこんなタイミングで天のことが好きななんて言えへんしどうしよ、えっと黒髪ショートで、男勝りな性格で肌が小麦色の子、性格は素直な子やな!…ておい、それじゃあバレてまうやろ!?いや、いっその事勢いで天に告白したろうかな!?どうしよ、えっと、ええっと…

天:..ドキドキ

○:髪はロングで女の子らしくて肌が白くて綺麗な綺麗な感じで…あ、あとはツンデレ?みたいな子やな!…ってこれじゃあ天と真反対やな(笑)

俺のばがぁぁぁぁぁぁぁぁぁあなんで素直に言えへんのや!何が「天と真反対やな(笑)」やアホ!!

天:っ!!..ズキン

○:ま、まあでも俺は天のこと【友達】としてめっちゃ好きやし?なんなら家族同然みたいなもんやし全然嫌いとかやないからな?笑

何言っとるんじゃ我!?めっちゃ好きや!!【友達】としてやなくて、異性として…あー、こんな勇気がない自分が嫌や

天:そう…なんや(シュン…

○:う、うん…

あれ、心做しか天、元気ない?

天:お、教えてくれてありがとうな!

○:全然ええよ、…逆に天は好きなタイプとかあるん?

天:私?私は…

○○がああやって言ってるんなら言えへんやろ

天:..鈍い人(ボソッ

○:え?

天:もう言いませーん笑

○:なんやねん、もう笑

めっちゃ気になる

--

○:そーいえば、もうすぐ3年生やなあ

天:うん

○:そろそろ高校とか決めなあかんな

天:そ、そうやな…

言えない、○○には

天は親の転勤で明日には東京の方へ引っ越すことになっていただから、最後になるであろうこの下校中に本当は想いを伝えようとしていた

私やってちゃんと告白したいけど、○○の理想は私なんかとかけ離れすぎてるそんな無謀な賭けに挑むんは嫌や…

○:天、どうかした?

天:ん?なんもないで??

○:ならいいねんけど…

やっぱり、今日の天はおかしいいつもは止まらないくらい口が回るんに、会話が上の空やったり好きなタイプ聞いてきたり

○○の中で胸騒ぎがした

○:なあ、天?

天:..何?

○:「約束」覚えてる?

天:!!..もちろん覚えてるよ

天:この前勝手に○○のプリン食べたことやろ??大丈夫、ちゃんと今度返すから笑

○:ち、違っ..!!

違う、そんなのいくら食べたっていいそうやなくて、もっと、大切な…

天:あ!ついた、明日は用事があって1人で行くから先行っといてええで?…ほんじゃな、○○!!

○:あ…うん。じゃあな

まあいいや、またいつか聞けば

そう思って自分の帰路についた○○だった

しかし

〜翌日〜ホームルーム〜

○:(今日は1人で学校行く言うとったんに、まだ来とらんのか?)

まだ天が学校に来てない

先生:えー、みんなは初耳やと思うけど山崎が今日から親の都合で東京の方に転校することになった。寂しいやろうけど、山崎からみんなへのメッセージ預かってるから、今から読むぞー

○:!?!?

は?今なんて??

○:バン!!…先生、どういうことや

先生:やから、親の都合で東京に引っ越すんやって、こっちだっていつも一緒におった○○なら知ってるもんやと思っとったわ

○:そんなわけ…!…っ!!すみません、体調悪いんで早退します。

先生:おーう、気をつけてなー。9時の新幹線や、って言ってたぞー

○:!!…ありがとうございます

そう言うやいなや○○は教室を飛び出した

センセーヤサシー

先生:若者が1番青春してる時を止める義務はないよ

はぁ、はぁ..!!

息を切らしながらも○○は足を止めない

天…どうして

どうして俺に言ってくれんかったんや…!

幸い新大阪駅までは急げば30分とかからないホームルームが8時半からだったからまだ間に合う

タクシーもバスも、そんな都合よくある訳じゃない

とにかく今は走れ、走れ..!!

○○はより1層走るペースを上げた

〜新大阪駅〜

○○、絶対怒ってるよな…謝りたいな…でももう、決めたことやから…

父の転勤が決まったのは今年の初めだった
 
最初は父の単身赴任だったが、事情が変わり、家族全員で向かわなければならなくなった

もちろん、天はずっと反対してた

地元の大阪が好きだし、何より、大好きな○○と離れ離れになるのが嫌だったからだ

アナウンス:ご案内いたします。この電車はのぞみ号東京ゆきです。途中の停車駅は〜…

っ…泣くな私、自分が決めたことやろ

昨日のこと、後悔してないと言えば嘘になる

あの時、私が想いを伝えてればなにか変わったんかな?

○○なら、きっと…

天:うぅ…グス

天父:天、すまない…俺には謝ることしか出来ん

天:お父さんは悪くないよ…グスン

天母:ありがとうね、天。ほら、新幹線来たわよ

天:うん…

もしかしたら…なんて期待してたがそんなこと思っちゃいけない

○○は絶対怒ってるし、顔も見たくないって思われてるかも

○○は携帯を持ってないから連絡も取りようがない

このままいっそ私のことも忘れてしまうかも…

でも…

天:「約束」だけは…

絶対に忘れて欲しくない、私だって絶対忘れない

覚悟を決めて新幹線に足を踏み入れようとしたその時

?:てーーーーん!!!!

ああ、こんな時でさえ好きな人の声が聞こえるなんて、自分自身が嫌になる

?:やーまーさーきーてーーーん!!!!

ほら、耳だけじゃなく目にも○○の姿が…って、え!?

天:ま、○○!?

○:あ、見つけた!!ゼェゼェ

嘘…どうして…

天:な、なんd

天の言葉を○○が遮る

○:この際やから言わせてもらうけど、俺は天のことが

そこまで言おうとした時、今度は○○が駅員に遮られた

駅員:お客様、他のお客様のご迷惑になりますので早くお乗り下さい。

天:っ…はい

○:待ってくれ、てn

○○が言い終える前に、扉が閉ざされた

母:ほんとにごめんね、天

天:やから、大丈夫やって!そんな悲しい顔せんといて?

良かった、最後に顔を見ることが出来て

挨拶を交わせなかったのは少し悲しいが、十分すぎるほどだ

さよなら…○○…

あと数秒ほどで私は生まれ育ったこの土地を離れる

座席に座り、外を眺めると○○の姿が見える

○:--------

何か言ってる??

や く そ く

天:っ..!?

たしかに今「約束」って

○○がポケットから何かを取り出し、窓に近づける

おねがいごとを決めて、かなった時にくっつけたらずーっとそばにおれるんやって!やから、ふたりでちょーてんになったらこれくっつけようよ!!

遠い過去の記憶が蘇る

天:わ、私やって…!

天は急いで首元に肌身離さず付けていたペンダントをかざそうとした、しかし

天:え、ない!?

どうして…?

新幹線が動き出す

○○は一瞬寂しそうな顔をしたが、直ぐに笑顔になり、天を見送った

--

天:-------------

天が何かを言っているが、こちらからは何も聞こえなかった

○:っ…

やっぱり、もう覚えてへんのかな

そうひとり呟いた○○は、力ない様子で帰路についた


そして時は進み、高校2年の春まで進む


〜続く〜























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