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#仲間と作る本 ~待っててくれて、ありがとう~

わたしは夫とお付き合いをし始めてから
たった2か月で結婚した。
知り合ってからの期間は長かったものの
それでもスピード婚だと思う。

もう36歳だったし、それまで散々好きなことをやりつくし、もともと知り合いだった夫と、それこそ気付いたら、一緒になっていた。

あ、話したいのは夫の事ではありません。


そんな短い交際期間の中でも、夫の口からたびたび出てきたのは、母方のおばあちゃんの事。

小さいころから、本当によくかわいがってもらったこと。
孫達もおばあちゃんのことが大好きで大人になってからは、おばあちゃんを連れてみんなで温泉やドライブに行ったこと。
農家だったおばあちゃん。
働き者で、腰が90度に曲がってしまったこと。

わたしにはもう、祖父も祖母もいなかったため、夫のそんな話しを聞いて、早くおばあちゃんに会いたいな、と思っていた。

でも、先に書いた通り、あっという間に結婚してしまったため、おばあちゃんには、まだ会えていなかった。

94歳という高齢のため入退院を繰り返している。
今度、会いに行こうね。そんな話をしていた矢先。

「容体が急変した。病院に会いに行って!」

夫からの電話。

「俺はまだ行けないから、行けるなら先に
行っていて!」


北海道でもめずらしいほどの大雪が降りしきる午後5時過ぎ。
まだ仕事中だったが、出先から病院へ急いで向った。

病室には、夫のいとこや叔母たちが大勢駆けつけていた。
もちろん、初対面の方ばかりだ。

「初めまして、嫁です」

という挨拶もそこそこに、おばあちゃんの枕元に近寄った。

おばあちゃんには、大勢の孫がいるが男の孫はたったふたりだけ。
結婚をしていない夫の事を心配して
元気な頃は

「結婚はまだか、結婚はまだか」

と、いつも言っていたという。

おばあちゃんの意識がないのはわかっていたが、やっと会えた嬉しさ、このままじゃいやだ、色々な思いが入りまじり、気付けばおばあちゃんの耳元にむかって話していた。

「おばあちゃん、初めまして。嫁だよ!
もう結婚式も決まっているし
寝てる場合じゃないよ!
絶対に結婚式に出てくれないと困るよ!」

そんな事を、わりと大声で、泣きながら話した。

すると。

おばあちゃんの、口が、目が、ひくひくと動きだした。
一生懸命に目を開こうと、何かを話そうとしているのは、明白だった。

涙を流すおばあちゃんの口元に耳をあて、声を聞きたかったが、何も聞こえてはこなかった。

それでも

「うん、うん、わかったよ。結婚式、出てね」

などと答えていたと思う。

その後、叔母やいとこたちに軽く挨拶をすませ、また仕事に戻った。

次の日の朝。

おばあちゃんが亡くなった、という報せが届いた。

夫とふたり、ベッドの中でひとしきり泣いた。

でももう、94歳。大往生。

わたしが会いに行くまで
待っていてくれたのかな。

ありがとう、おばあちゃん、
という、感謝の涙にかわっていった。


みんなが大好きだったおばあちゃんを送る
通夜と告別式。

「大往生だったよねー」

と口々に言いながら、わいわい賑やかに執り行われた。


おばあちゃんは亡くなってしまったが
きっと絶対にいつも

見守ってくれている。

これからもよろしくね、おばあちゃん。

待っていてくれてありがとう、おばあちゃん。

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