【呪い合いを超えて】
「呪い合うしかないですよね。」(注①)呪術廻戦に登場する伏黒恵のセリフだ。個人的にこのセリフは日本が陥っている状況を表すのに適格な言葉であるように思えてしまう。
周知の事実ではあるが、新型コロナウイルスの流行と
オリンピックの開催により日本は大きく揺れている。
開催支持派と反対派の衝突は既存の保守とリベラルなどの思想に影響を受けながら(もしくは与えながら)、開催された現在もこの対立は収まらない。
SNSを主戦場として散見される両者のぶつかり合いはもはや対話を主軸とした議論ではなく両者の思想を元とした、意見の押し付け合いである。
しっかりとした良識とデータをもとにした建設的な批判も多くある一方
「自分の考えと異なるから」と自身の意見を補強するに都合の良いエビデンスを笠に着て、相手の意見も背景も認めない、愚かしい言説も飛び交っている。
(著名な論者の方でも、加担してしまっていることがあり、驚くことがある。)
問題は後者のほうがストーリーとして分かりやすく、目立ってしまうことにある。
SNS上ではネガティブな発言のほうが広まりやすく、(注2)より他人に影響を与えるのだ。まさに呪い合いである。
犠牲になるのは、「大きな主語」(注3)の元に批判に巻きまれる人々である。”医療従事者””オリンピック選手””都民””府民””飲食店関係者””若者””老人””と何かブームが起きてしまうと批判は大きな言葉で対象者に向けられることが少なくない。
そもそも人間は無意識に物事を自分の中でカテゴライズするものだ。
「この血液型はこのタイプが多い」「○○出身はこういう傾向がある」
などの会話を聞いた事の無い方はいないだろう。
我々は批判するときに忘れがちになってしまうのは相手も生きた人間であるということだ。「今○○は叩いていいな」という空気が広まってしまうと
一気にストレス発散のおもちゃにされていく事態が横行してしまっている。(注4)
綺麗事かもしれないが、大事なのは自分が批判する相手も生きた人間であるということを忘れないことだと思う。細かい違いはもちろんあれど、うれしいや悲しいという感情も当然ある。(注5)
ここを忘れて一緒くたに自身の意見の押し付けを行うと、呪いの再生産を行ってしまう。呪い合いを止めるために自省も込めて主張をして行きたいと思う。
◆TM NETWORK/BEYOND THE TIME~メビウスの輪を超えて~
(注1)呪術廻戦 44話 第6巻収録より
(注2)やばいデジタル “現実”が飲み込まれる日 /NHKスペシャル取材班/講談社現代新書より
(注3)わたしは分断を許さない/堀潤/実業之日本社より
(注4)そしてそれを既存メディアも理解しながら煽っているスタイルが多いように見える。
(注5)中には本当にとんでもない悪党というのも世の中にはいるがそれはまた別の話。
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