ハードボイルド読書パンダ

ニンゲンと付き合うと苦労するぜ。 暗闇と孤独の中に置いてけぼりにされたような時、松明となって周囲を照らしてくれる書物を紹介していくつもりだ。

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ニンゲンと付き合うと苦労するぜ。 暗闇と孤独の中に置いてけぼりにされたような時、松明となって周囲を照らしてくれる書物を紹介していくつもりだ。

最近の記事

[詩]2023年10月~2024年3月

    • [心理学ノート]ジョナサン・ハイト『社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学』高橋洋[訳]

      よう、オレだぜ。今回紹介するのはコイツだ。 本書の目次は以下の通り。 ジョナサン・ハイトは道徳の情動的・直観的な基盤、また党派間や文化間で道徳のとらえ方がどう異なるかを研究しているアメリカの社会心理学者だ。 本書は過去のリベラルな心理学者たちがガキの道徳心の発達過程をどのように捉えようとしていたかを概観することから始まるが、文化人類学のリサーチを追っていくことで、心理学者たちの企みはどうも偏ったものだったんじゃないか、ということがまず紹介される。 たとえば、異なる文化

      • [読書]松村進吉『丹吉』

        よう、オレだぜ。今回紹介するのはコイツだ。 いやはや大変面白かったぜ。 本作は丹吉という化け狸が弁才天の神使として認められるための試練を受けることから話が始まっていく。丹吉は江戸時代に生まれ、助平心から何人もの女人と関係を持っていたが、男衆から逆恨みされることで袋叩きに合い、陰嚢の形をした石に封印されちまっていた。それが令和の時代にもなって《プチ弁天》の見栄のために神使見習いとして受肉を遂げることになる。 氏子である松浦とち子との精神的なつながりを通じて、丹吉は現代社会

        • [文学ノート]カミュ『シーシュポスの神話』清水徹[訳]

          よう、オレだぜ。今回紹介するのはコイツだ。 『シーシュポスの神話』に収録されている「不条理な論証」と題打たれたカミュの評論は上の断言から始まるぜ。自殺について考えることが、自殺すべきかどうかを判断することだけが、哲学の仕事である、とカミュは言い切っている。 この断言に触れて「いったいなぜそんなことを問題にしたがるのか?」と首をかしげたくなるヤツもいるかもしれない。現在の自分には自殺したくなるような強い衝動は見当たらない、《人生が生きるに値するか否かを判断する》方がむしろ遊

        マガジン

        • 読書ノート
          5本

        記事

          [文学ノート]シオラン『生誕の災厄』出口裕弘[訳]

          よう、オレだぜ。今回紹介するのはコイツだ。 尊敬を覚える書き手はそれなりにいるが、畏怖の念を抱いてしまう書き手となると案外少ないもんだ。ルーマニア生まれの作家であり、憂鬱と不眠の友であるシオランはオレにとって後者に当たるが、彼に抱くイメージは次のような感じだな。 ――もう4日も眠れていない物憂げな顔をしたニンゲンのオスが公園のベンチに腰かけている。毎日同じ時間に、ヤツの眼の前を、痩せっぽちで、いかにも知恵の足りなさそうな犬がニンゲンの年寄りを引き連れて通り過ぎる。犬は知恵

          [文学ノート]シオラン『生誕の災厄』出口裕弘[訳]

          [歴史ノート]松戸清裕『ソ連史』

          よう、オレだぜ。今回紹介するのはコイツだ。 本書の目次は以下の通り。 オレは読書する際に線を引き、考察や疑問のコメントを添えながら抜き書きするタイプだが、抜き書きを決意する時のポイントがいくつかある。 ・その書籍の主張の核となっている箇所である ・自分の問題意識に新しい洞察を与える ・常識に依存した推論では導出できない知識を理論的に構成している ・単純にフレーズを気に入る あたりだな。基本的には再読を前提とした意味合いが強く、「あの本にあんなことが書かれていたな」と思

          [歴史ノート]松戸清裕『ソ連史』