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【復活の狼煙を上げろ】CLリーグフェーズ第3節 FCバルセロナ 対 バイエルン・ミュンヘン マッチレビュー【24/25】

ついに訪れた前半戦最初の大一番。早々の退場劇で前節モナコ戦を落としたバルセロナにとっても、POT4のアストン・ヴィラに不覚を取ったバイエルンにとっても巻き返しを図りたい試合である。なんでヴィラがPOT4なんだよ。バルサファンからすれば最近CLに出るたびにバイエルンに跳ね返されているイメージがあるので、欧州で戦う力を占ううえで一つ大きな壁のように捉えらえているチームでもあったりする。

バルセロナは一昨年にリーガ制覇を成し遂げた堅守の中心たるテア・シュテーゲン、アラウホ、クリステンセンの3名が負傷離脱中。プレシーズンにラ・マシアから掘り出した17歳のピボーテ、マルク・ベルナルも早々に負傷してしまい今シーズンはもう見られない。エリック・ガルシア、フェラン・トーレスの元シティ組も最近怪我をしてしまった。GKはシュチェスニーを引退から復活召喚したがデビューには至っていない。

またガビ、フレンキー・デ・ヨング、ダニ・オルモの3名は最近復帰したものの、試合への出場は10分未満ということで起用できても時間制限がつくはずである。フェルミン・ロペスも最近の復帰組だが、直近のリーグ戦では24分プレーできたのでフィットネスはある程度整っていそう。

対するバイエルンも新戦力の伊藤洋輝に加えてスタニシッチ、ボエイの右SBコンビが揃って離脱中。DFラインの控えがCBのダイアーのみという状況になっている。中盤もパヴロヴィッチがおらず、ムシアラもケガ明けで出場時間は限られる様子。悪夢の象徴のひとりであるゴレツカはいつの間にか出番を減らしているらしく、今シーズンは10分以上出た試合が一度もない。

スタメン

バルセロナのスタメンはほぼ予想できるメンバーで、不確定だったのはフェルミンの所くらい。直近のリーグ戦ではハフィーニャが中盤でアンス・ファティが左WGに入っていた。

対するバイエルンは左SBやSHをやっていた左利きのゲレイロが右SBを務める。中盤にはパリーニャを起用し、キミッヒとコンビを組む。


ハイプレス:バイエルンの場合

お互いにハイラインで戦う、ボールを持ちたがるチームの対決である。主導権を握るのは果たしてどちらか。

バイエルンのプレスの形は少し変わっていて、右WGのオリーセとCFのケインがCBを監視する配置になっている。おそらく最終ラインから一発で最前線に刺せるクバルシや、単騎でプレッシングを搔い潜って前進できるヤマルからボールを遠ざけたかったのだろう。

右WGがCBに出るということは対面のSBが空くということだが、そこにはゲレイロが出てくる仕様になっていた。背中を気にせず積極果敢に前に出てくる。

バルデから効果的なプレス回避は発動しないだろうと踏んだのだろうが、なんと試合開始後1分経たずにプレッシングをひっくり返してバルセロナが先制。レヴァンドフスキが潰れてペドリに渡し、フェルミンを経由してハフィーニャが突っ走った。

ちなみにWGが外切りで制限をかけ、SBが相手のSBまで出ていくプレッシングはバルサファンなら見慣れた形である。普段はバルデの走力でごまかしているが、スピードがあまりない控え選手にやらせると普通にボロが出るリスキーな形だったりする。

SBが釣り出される前提な上に、中央の封鎖に2人使っているので5人でなんとか守る必要がある

ゲレイロは3点目のハフィーニャとの対面でも後手を踏んでいたが、そもそもこの広範囲をカバーする守り方は技巧派の30歳にやらせるタスクではない気もする。それこそデイヴィスのほうが向いてそうだったが、そこはヤマルへの対応を優先させたということなんだろうか。


ハイプレス:バルセロナの場合

いきなり1点のビハインドを背負ったバイエルン。当然前掛かりに攻めてこざるを得なくなるわけで、同じくハイプレスで突っかけてくるバルサの背中を攻略しにかかる。

先ほど書いたように、バルセロナはWGが外切りでCBにプレッシングをかけていく形をとっている。基本的にハフィーニャが突進していく形が多く、ヤマルはそのスイッチに合わせて動くイメージ。これは2人のエネルギータンクの大きさに加えて、左右のSBのキャラの違いも影響しているような気がする。バルデをスプリントさせて前に出し、CBもできるクンデは後ろで構える。

しかしこの試合では、バルデがSBまで突撃するシーンはそこまで多くならなかった。理由は単純、ゲレイロが内側に入ってきていたから。

構造上、ある程度余裕をもってボールを扱えるキム・ミンジェから対角にロングフィードを飛ばすバイエルン。ミュラーが右に流れ、ゲレイロが後方サポートで数的有利を作る。

オリーセはカットインしながらDFラインの背後にボールを落とすのがべらぼうに上手く、それに合わせてゲレイロがチャンネルランを狙っていく。狙っていくのだが、この人も左利きなのでそのままクロスを上げるシーンは全然なかった。なんとなく合わないことばっかりやってるね君は。

ミュラーがサイドに流れてクロスを上げるパターンもあるが、そうなるとターゲットが減るので多用したい形ではなさそうだった。とか言っていたらケインにピンポイントで合わされて失点してどっきり。オフサイドで助かったね。

しかし結局、オリーセ起点で逆サイドまで飛ばされてグナブリーからケインで同点。185cm以上ある選手がフィールドにレヴァンドフスキしかいないのである程度仕方ないが、それにしてもクロスにはめっぽう弱いのが今のバルセロナである。


手ごたえの先に

これはイケると確信を持ったのだろう。バイエルンはキミッヒという発射台を用意して対角フィードを強化して畳み掛けにかかる。完全に中盤が空洞化しているが、これで前進できるのだからそれでいいのである。しばしばケインが降りてきて保持を安定させてくるのが憎らしい。

これでそこそこチャンスを作られたのだが、バルセロナも徹底したラインコントロールと時折発動する同数プレス、そしてペドリやヤマルの質による前進などで手ごたえを得ながらゲームを進めていく。ピボーテの位置で構えながら、必要な時に必要なだけ動いてボールに関わるカサドもお見事だった。実質デビューシーズンみたいなもんなのにな。

そして2点目を決めたのはバルセロナの方だった。フェルミンが手で押したのは確かだが、あれはキム・ミンジェのポカといって差し支えないだろう。174cmのちびっこが競ってくることはないと踏んだのかもしれないが、そうだとしたらフェルミンを舐めすぎである。きっちり詰めてたレヴァンドフスキは流石の一言。

3点目はカサドのフィードが素晴らしかったのと、ウパメカノが持ち場から離れすぎたが故の出来事だったように思う。ハフィーニャが凄かったのは大前提として。レヴァンドフスキに釣られてキム・ミンジェの前まで出てきたのはいくら何でも動きすぎだし、サイドチェンジされてからのスペースの埋め方も微妙だった。あれならキム・ミンジェがカバーに走り、ウパメカノはそのままレヴァンドフスキを消し続けたほうがよかったのではなかろうか。


ハイラインの明暗

2点目はともかく、他のゴールを見る限りバイエルンは誰を基準に最終ラインの高さを設定するか明確に決まっていない印象を受けた。これはウパメカノ、キム・ミンジェ両名がともに迎撃に強い選手だからなのかもしれないが、この試合においてはラインが揃わないデメリットの方が強く出たように感じる。

オフサイドでアタッカーを無力化できないならアタランタよろしく極端なマンツーマンを仕掛けるのも一つの手なのかもしれないが、この試合ではマークの受け渡しをする理性が残っていた。それが逆に一歩目の遅れを生むこともあるのだからサッカーは難しい。3点目もそうだし、1点目もフェルミンとハフィーニャが入れ替わったタイミングでウパメカノとキミッヒが一瞬どうするか迷っている様子が見て取れた。


エル・クラシコに向けて

バイエルンのことばかり書いたような気もするな。同じくハイライン・ハイプレスを志向するチームとして何が違ったんだろうね、という疑問が膨らんだ結果がこの記事です。徹底って大事だよな。

バイエルンに大勝し、次はすぐそこにクラシコが控えている。エンバぺにヴィニシウスに、ハイライン裏を使うのが大好きな選手が相手にはいる。

それでも、まずは自分たちのプランを徹底して信じるバルセロナが見たいのだ。ここで勝てば、そのまま最後まで走り切れそうな気さえしてくる。このチームならやり切れると信じる。決戦はもうすぐ、楽しみに待つとしましょう。



2024/10/23 UEFA CHAMPIONS LEAGUE Matchday 3
FC Barcelona 4-1 Bayern Munich
Stadium : Estadi Olímpic Lluís Companys
Referee : Slavko Vincic

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