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映画『攻殻機動隊SAC』ストーリー解説

こちらでは本編の内容について、流れを追いながら補足説明していきます。

いろいろな人間の思惑が交錯していて、時系列も分かりにくい上に、登場人物たちの理解力が高すぎるせいで、一般の視聴者は置いてけぼりをくらいますからね。

本編を見ても話がよく分からなかった方は、以下の文章を読んでいただければと思います。では、どうぞ。


作中での社会不正の流れ


・本作より前の出来事

A
マイクロマシンによって脳をデジタルデバイス化する電脳技術が一般的になりだした頃、電脳化した部位が硬化する謎の病気「電脳硬化症」が発見され話題となる。発症後の根本的治療法が見つかっていなかったため21世紀の不治の病と言われていたが、やがて医学博士の村井千歳によって特効薬「村井ワクチン」が開発される。


B
当時の医師会はマイクロマシン治療法の推進派が多数を占めており、村井ワクチンを容認することでマイクロマシンの開発・発展に影響が出るとの懸念があった(建前)。さらには厚生労働省中央薬事審議会理事である今来栖の、村井に先を越された事に対する嫉妬心も重なって、表向きは効果が不明である事を理由に村井ワクチンは不認可とされてしまう。


C
その代わりに薬事審議会はセラノゲノミクス社のマイクロマシン治療法を認可するが、これは当時たまたま申請が出されていたからであり、このマイクロマシンに治療効果は無い。その後、今来栖が理事を務めるマイクロマシンインダストリアル社のマイクロマシンも治療効果が無いにも関わらず認可されているが、同社はこれによって1兆円程の利益を上げている。

なお、当時の厚生労働大臣である薬島は元海上幕僚長であり、かつて軍医だった今来栖とは当時から最も親密なゴルフ仲間である。このため、マイクロマシン治療法認可の件に薬島が関わっていた可能性は高い。おそらく認可の裏には、薬島の圧力があったのだろう。(荒巻の推理)


D
不認可になったはずの村井ワクチンが突然、特定指定者有償実験薬として認可される。これにより村井ワクチンは、薬事審議会の認可した人にだけ有償で接種されるようになるが、これは一般に非公開であり、表向き使用者はいないことになっている。


E
セラノゲノミクス社社長であるアーネスト瀬良野は、マイクロマシン治療法の無効性と村井ワクチンの事をネタにした脅迫メールを受ける。3年後に起きる瀬良野誘拐事件は、このメールが切っ掛けになっており、このメールの作成者こそ笑い男のオリジナルとも言える人物である。



・ここから笑い男事件

F
アオイという青年がネット徘徊中に、3年前の瀬良野脅迫メールを偶然見つける。マイクロマシン医療の裏側に隠された真実を知ったアオイは正義感にかられ、真実を白日の下に晒すことを決意。

瀬良野の電脳をハックして誘拐すると、全てを公開することを要求する。この犯行の際、アオイは顔を隠すためにテレビカメラや周囲にいた人々、監視カメラまでもハッキングし、自分の顔が写る箇所全てに笑い顔のマークをリアルタイムで上書きしていた事から「笑い男」と呼ばれるようになる。


G
瀬良野はアオイから解放された後、誘拐直後会社に対して巨額の身代金要求(現金100億と金塊100kg)があった事を知る。警察は笑い男(アオイ)を身代金誘拐犯と断定し捜査を開始する。瀬良野はアオイと対峙したときの印象から、身代金を要求したのはアオイではないと考えたが、余計な証言からマイクロマシン治療の裏側が露見するのを恐れ、警察の尋問には身に覚えが無いと答えるに留めた。


H
その後犯人は、マイクロマシン製造ラインに殺人ウィルスを混入するという手口で、セラノ社を引き続き脅迫。マイクロマシン製造が滞り、セラノ社の株価が大幅に下がり始めると、まるでそれが目的であったかの様に脅迫は止んだ。しかし犯行はこれで終わらず、犯人は同様の手口を使ってマイクロマシンメーカー6社を次々と脅迫。各社の株価は、セラノ社同様急落する。


I
犯行が3ヶ月程続いた後、被害メーカーに対して政府が公的資金導入を決定し、被害メーカーの株価は回復する。犯人はこの際、株の空売り等で多額の利益を上げたものと思われる。


J
株価が戻り始めた頃、瀬良野のもとに薬島厚生大臣の私設後援会会員を名乗る男が訪れ、企業脅迫を止める事が出来る人物を知っているから事態収束の暁には献金して欲しいと申し出る。献金の金額は、投入された公的資金の額と脅迫で要求された額を合わせたものであった。つまり、身代金要求をはじめとする一連の企業脅迫は、薬島を中心とした組織による犯行だった。



・ここから本編の内容

K
6年後。インターセプター事件にて、笑い男事件捜査関係者などに、本来手続きが必要なインターセプターが本人の許可なく取り付けられていることが明らかになる。警視庁とセラノ社との癒着の疑い。大堂警視総監は薬島の協力者であり、真相に辿り着かないように監視していた。それには瀬良野も含まれている。


L
インターセプター事件の責任は刑事課長に責任を被せられるが、その記者会見中に笑い男から大堂警視総監に殺害予告がなされる。(自作自演の茶番)


M
警視庁はその殺害予告を利用し、インターセプター事件を有耶無耶にする。その上、ナナオという模倣犯を用意し、笑い男事件そのものを処理しようとした。この情報操作は、厚生労働省より発行された正規の書類により実行されていることから、薬島(現在は連合与党幹事長)が絡んでいると思われる。


N
そして時は流れて、厚生省にハッキングした形跡のあった授産施設をトグサは調査することになり、その途中でアオイと出会う。しかし調査終了後、アオイの記録は存在しないことが明らかになり、トグサはアオイの似顔絵を書いたが、記憶は笑い男マークで上書きされていた。


O
さらに時は流れ、トグサはアオイがオリジナルの笑い男だと考え、単独捜査を続ける。トグサは笑い男の思考を読み取り、笑い男が電子媒体より紙媒体に重きを置いていると推測し、紙媒体の資料を調査した。


P
そこで村井ワクチン接種者リスト → ひまわりの会 → 今来栖 → 新見まで上りつめ、さらに笑い男との記憶の共有、瀬良野氏との接触により、薬島が裏で糸を引いていたことが明らかになる。

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STAND ALONE COMPLEX

社会不正の流れについては以上ですが、もうひとつややこしいワードがありますね。ここからは本編の内容を追っかけながら、タイトルの「STAND ALONE COMPLEX」とは何だったのか理解して行きます。


①アパンタイトル
:あらゆるネットが眼光を巡らせ、光や電子となった意志をある一方に向かわせたとしても”孤人”が複合体としての”個”になる程には情報化されていない時代……(2030年代)

:犯人を追いつめた素子の台詞。「世の中に不満があるなら自分を変えろ。それが嫌なら耳と目を閉じ、口を噤んで孤独に暮らせ。それも嫌なら……」


②インターセプター不正疑惑
:本庁でトグサと同期だった山口が、写真におかしな点を見つける。しかし上層部に何か不審な動きがあったため、実際に会って相談したいとトグサに電話した。

:山口は笑い男事件の特別捜査本部に所属していた。


③外務大臣拘束事件
:通話を終了した後、外務大臣が料亭で芸者ロボットに拘束される事件が起こる。軍が介入したがるが、荒巻が公安9課に取り仕切らせる。現場を制圧するも、芸者ロボットを操作していた犯人は見つからなかった。

:笑い男事件とは関係が無い模様。攻殻機動隊の世界観を印象強く示した。


④疑惑?
:事件が終わり徹夜して待っていたトグサだったが、新聞で山口が死亡したことが分かる。タイミングが良すぎるため、笑い男事件と上層部の企みについてトグサが調査することになった。

:笑い男事件は最大の企業テロだったため、本庁としても引き下がることができないでいた。笑い男の人間像は全てが不明だが、憶測の中で一致したのは、特A級のハッカーであることだけだった。


⑤残されたメッセージ
:トグサは山口の葬式に出席すると、その妻を通して山口から写真を渡される。その写真にカメラが無い事に気づき、上層部が何故か特捜にインターセプターを仕掛けた事が判明する。

:事件の被害者である会社の製品を警察が正式採用したことで、何か裏があると推測する(癒着の疑い)。その上、瀬良野社長についている刑事たちの目にもインターセプターが仕掛けられていた。(監視のため)


⑥視聴覚デバイス不正使用事件会見
:公安はマスコミに情報を流し、警視総監が記者会見を開く。しかし、その内容は特捜を足切る偽りの釈明だった。その途中、笑い男は記者会見中に刑事部長の電脳にハッキングし、口を借りて警視総監に真実の公開を迫る。

:今まで関わるべきではないと思ったアオイだったが、今回のことは酷過ぎたため、彼はもう一度だけ社会の不正に挑戦することを決めた。


⑦笑い男事件
:素子による笑い男事件の説明。瀬良野を誘拐し、脅迫した劇場型犯罪。電脳化していた目撃者の全てに笑い男のマークを上書きしていたことから、そう呼ばれるようになった。

:実際に笑い男が脅迫したのはセラノ社の一件だけで、その後の企業テロは当時の薬島厚生大臣が笑い男を模倣することで株価を操っていた。


⑧対ナナオ ブリーフィング
:荒巻は記者会見に現れた笑い男の犯行声明は、警視庁による自作自演の茶番だと推理する。その根拠は本当の犯人とは思えないナナオという男が、笑い男事件の重要参考人として特捜がマークしていたからだった。公安9課は笑い男事件において特捜を騙している警察内部の秘密工作と、笑い男を演じるナナオを同時に押さえようとする。

:素子はナナオの捜査から外れ、荒巻に警視総監の護衛を申し出る。「我々の間にはチームプレイなどという都合の良い言い訳は存在せん。あるとすれば、スタンドプレーから生じるチームワークだけだ」そう言って荒巻は了承する。


⑨警視総監護衛
:公安はナナオに張り付くも、ナナオはインターセプターで特捜の目を盗み、別の場所から遅行性のウイルスを送っていた。ナナオの電脳汚染によりSPの指揮官がウイルスに発生し、総監を襲撃する。それを阻止し、素子はSPの電脳に繋げてウイルスの正体を探ろうとするが、オンラインでSPの脳を覗いていたものがいたらしく、その記録は消去される。公安はナナオの居場所を突き止めたが、そのナナオは口封じのため殺害されていた。

:また、自然発生的な多数の笑い男模倣者が総監を襲撃する。これはウイルスによる感染かと思われたが、ウイルスに感染していたのは最初のSPだけで、他の30数名の暗殺犯は洗脳もされていなければ、ウイルスにも感染していなかった。


⑩内偵捜査
:重度の電脳閉殻症の子ども達を収容する施設から、厚生省にハッキングが仕掛けられるという事件が発生する。そこでハッキングした人物の正体を探るため、トグサが施設の職員として潜入捜査に乗り込むことになる。トグサはアオイという青年を担当することになった。そして施設の子ども達の間では、団長という人物のことが噂されていた。

:団長の正体はアオイ。施設を利用し、厚生省にハッキングを仕掛けていた。この後、アオイは痕跡を残さず施設から姿を消す。


⑪タチコマハンガー
:タチコマが一斉にラボ送りとされてしまう。素子はタチコマのAIが急速に進化し過ぎたため、兵器としては利用できないと判断した。

:タチコマはロボットであるにもかかわらず、多様な個性があった。


⑫定時連絡~脱出
:所長の部屋に潜入し、ハッキングされた厚生省のファイルと団長について調べようとしたトグサだったが、そこを所長に見つかり倒されてしまう。トグサの証言で笑い男に目星がついたが、そのトグサの記憶はアオイによって改竄されていた。

:素子がトグサを助けに来た時、トグサの血と所長の姿が消え、アンドロイドが石造に変わっていたことから、トグサはアオイに電脳をハッキングされたと考えられる。


⑬should I ?
:「誰も僕を知らず、僕の方でも誰も知らないところでありさえしたら、そこへ行ってどうするのかというと、耳と目を閉じ、口を噤んだ人間になろうと考えたんだ。だが、ならざるべきか?」施設に書かれてあったこの一文によって、トグサは笑い男の犯人像を導き出す。

:笑い男はハッキングが得意だからこそ、書き換えが可能な電子情報に何ら価値を見い出していなかったのではないかと推理した。


⑭厚生労働省
:トグサは授産施設からハッキングしていた輩がペーパーメディアを狙っていたと推理し、厚生労働省に通い詰めていた。そして調査を進めるうちに、電脳硬化症に効果があるとされた村井ワクチンの接種者リストが紛失していることを突きとめる。


⑮村井ワクチン
:トグサによる電脳硬化症と村井ワクチンの説明。村井ワクチンは効き目が確かであるにも関わらず、マイクロマシンによる治療法の完成を遅らせるという理由で認可されなかった。ところが急遽、村井ワクチンは認可される。しかし一般的には発表されておらず、使用している患者も表向きには存在しないことになっていた。

:特別に認可された理由は、薬事審議会の中心人物である今来栖自身が電脳硬化症になったからである。村井ワクチンを接種していた人物は、どれも重役の者たちばかりだった。


⑯ひまわりの会
:村井ワクチンの秘密を探るNPO団体ひまわりの会が、笑い男に関係あるのではと睨み、接触を試みるトグサ。村井ワクチン接種者リストのファイルにより、村井ワクチンを不認可にした今来栖が、村井ワクチンを接種していたことが分かる。

:ここでアオイは、以前から村井ワクチン被害について活動を行うひまわりの会に情報を与え、彼らの活動によって告発が行われることを期待したと思われる。


⑰今来栖と笑い男
:厚生労働省から村井ワクチンの接種者リストを盗んだのは笑い男だった。マイクロマシン産業の裏側で行われていたことを暴くため、笑い男は今来栖を保護していた。

:今来栖は瀬良野と同様、医療マイクロマシン特許の書類の提出から一ヶ月で認可が下りていた。そして何も効果の無いマイクロマシンで年間一兆円もの利益を上げている。


⑱ファイルの行方
:そこに証拠を隠滅しようとすべく、厚生省お抱えの麻薬取締強制介入班の連中が迫っていた。トグサは深手を負い、ファイルは回収されてしまう。しかしそれはコピーであり、その差出人は今来栖ということになっていた。

:厚生大臣だった薬島は自衛軍出身であり、太いパイプがあった。そのため、厚生省が軍人の受け皿になっている。


⑲トグサの記憶
:トグサの記憶を読み、状況を整理している公安9課。麻取と今来栖の捜査に分かれる。


⑳今来栖争奪戦
:公衆電話から今来栖の居場所が判明し、公安と厚生省との今来栖争奪戦が始まる。苦戦しながらも麻取との勝負は公安が勝つが、別の厚生省の人間によって今来栖は殺害されてしまう。目を盗み、笑い男はバトーに村井ワクチン接種者リストのファイルを渡す。


㉑新見局長逮捕
:今来栖を確保することはできなかったものの、麻取の連中を捕まえたことで今来栖殺害の容疑により、厚生省の新見局長を逮捕するに至った。しかし、新見はとかげのしっぽに過ぎず、その上には大物が控えていた。


㉒素子と笑い男
:義体交換のため病院に行った素子は、医師に成り済ました強制介入班の残党によって命を狙われる。寸でのところを突如現れたアオイによって助けられるが、アオイは交換条件として「これから僕が仕出かす最後の挑戦を黙って見ててほしい」と申し出る。さらに、もし失敗したときは代わりにこの事実を公表して欲しいと言い、笑い男事件の真相である自身の記憶を素子に渡しその場を去る。

:しかしアオイは、結局この後何もしていない。後の本人の証言によると、素子と記憶を共有した時点で「後はあなたがうまくやってくれるだろう」と思い「全てが終わってしまった」と感じたからとのこと。


㉓対瀬良野
:事件の黒幕には、連合与党の幹事長である薬島が絡んでいると荒巻は推理した。笑い男事件の発端には、セラノ社の社長である瀬良野が関わっており、事情聴取するため瀬良野を保護することになった。


㉔瀬良野と笑い男
:笑い男(アオイ)に扮して瀬良野に告発を決心させる素子。どうして天才的ハッカーである笑い男が、拳銃による脅迫などというアナログな手段に打って出たのか。そして、正義心から起こした笑い男の行動が、企業テロに利用されるようになった経緯。さらには、そのことにより誰が利益を得たのかが、瀬良野の口から語られることになる。

:笑い男を模倣するというやり方で、素子はアオイとの約束を守った。


㉕舐められた9課
:薬島は瀬良野社長誘拐や笑い男事件に公安9課が絡んでいたという嘘の事実をでっち上げる。しかも、警察機構と独立して捜査を進める公安9課を危険な存在として、世論まで味方につけて公安9課廃止へ向けて動き出す。

:総理が衆院選を前にして幹事長更迭を見送ろうとする。そこで荒巻は9課の表向きの消滅と引き換えに黒幕・薬島幹事長の逮捕を総理に了承させる。


㉖公安9課壊滅
:薬島は海上自衛隊と強いコネクションを持っていたことから、軍の力を使ってまで公安9課壊滅を図ろうとする。壊滅の危機に陥り、散り散りになって逃げ出した公安9課のメンバーたち。

:この時にはトグサは復帰していたが、荒巻の気遣いによって先に保護される。


㉗タチコマ哀愁
:老人ホームで介護ロボになっていた一体のタチコマは、9課の危機を知った。残っていたタチコマ達はそれぞれの持ち場を抜け出し、バトーを助けたいという共通の想いで集結する。

:「みんな独立していながら、同じ欲望を持っていたということだね」


㉘セーフハウス
:素子の腕時計を取りに行くため、バトーは単独で少佐のセーフハウスへ向かう。しかし、軍隊に襲撃されてしまったところを、タチコマに助けられる。機械でありながら、ついに自己犠牲の精神まで獲得するに至った彼らに対し、素子は認識を改める。

:タチコマは多くの自分に囲まれて並列化されたAIに不満を感じながら、個の獲得を望んでいく。これを通し、少佐は映画のテーマであるSTAND ALONE COMPLEXについて、一つの答えを導き出す。


㉙記憶の欠片
:生き残った素子とバトーは、自らに課せられた役割を果たすべく、飛行機に乗って旅立とうとするが、素子は狙撃兵が放った銃弾の前に息絶える。体を失った少佐と、ネットの世界で見ていたアオイが個について対話する。

:「刹那に過ぎる時の中で、自分という個を特定しうる証拠を記録しておきたいからこそ、人は外部記憶にそれを委ねる」バトーにはそういう考えがあったため、少佐の記念品である腕時計を取りに行った。


㉚トグサ奮起
:公安9課を追い詰めた張本人であった厚生族議員の薬島の不正は暴かれ、ついに検察庁によって逮捕される。薬島を逮捕するという当初の目的は果たされたものの、既に公安9課はその存在を失っていた。憔悴していたトグサは自らの手で薬島に鉄槌を下そうとするが、目の前にバトーが現れる。

:社会の不正に苛立ち、汚い大人に怒りを燃やすトグサの姿は笑い男そのものであり、『ライ麦畑でつかまえて』の主人公ホールデンにも重なるものがあった。


㉛公安9課、再び
:公安9課のメンバーは全員、無事に生き残っていた。存在が白日の元にさらされた公安9課を解体させ、メンバー全員の命は安全に確保し、薬島逮捕という目的は果たす。全ては多少の犠牲を払いながらも、最善の状態に持っていこうとする荒巻の考えた作戦だったのだ。

:これにより、公安9課は世間には存在しない攻性の組織に戻った。


㉜STAND ALONE COMPLEX
:少佐とアオイの対話。アオイの動機について語られる。オリジナルの不在が、オリジナルなきコピーを作り出す現象をSTAND ALONE COMPLEXと名付けた。少佐は情報が並列化していく中で個を取り戻すための一つの可能性として、「好奇心」という答えを見つけた。

:アオイは笑い男のオリジナルではなかった。「全ての情報は共有し並列化した時点で単一性を喪失し、動機無き他者の無意識に、あるいは動機ある他者の意志に内包される」とは、経験から導き出したアオイの言葉。


㉝エンディング
:冒頭の場面に戻るような終わり方で、視聴者に素子の台詞を反芻させる。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。本編の映画評は以下のリンクにありますので、是非ご一読ください。


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