突然医学部に行く
高校生の時のことはよく覚えていない。
超田舎で、店もない。
電車で家と学校を往復する日々。
何もないので、勉強することが日課になっていた。
仕事に関してはずっと関心があり、どんな仕事につくか
つきたいかばっかり考えている少女だった。
自分は人に対して優しいところがある、だから医療関係がいい。本当は芸術家になりたかった。でも習い事などゼロの
ド田舎、芸術家は無理なので、医療関係にした。
看護師は身体に自信がなかった、またその時代に看護大学はなかった。なので、保健師関係、薬剤師関係かなあとか。
受験校を決める12月。父から「医療関係に行くのだったら医学部という選択肢もあるぞ」と言われた。
医者は美しい仕事ではない、人の汚い部分や血も見ないといけない、どれでも良かったら医学部という選択肢もあるぞと
言われた。
ピンとこなかった。
そう言えば手塚 治って医師免許持ってるよね。じゃあ、医学部受けても、何の職業にもつけるよね。
そう言い聞かせて、あまり医者になりたくないまま受験したらたまたま受かった。
卒業してから、念願だった研究者になろうと、基礎医学教室に入った。
半年でやめた。
私って、まじめでがんばり屋の反面、とにかく正義感も強いんだよね。
基礎の研究室は閉鎖的で、教授に従わないとやっていけない封建的な世界だった。合わないと一瞬で思った。こんな狭い世界で生きていくなんて無理!
それに研究って想像以上に地味。一日中、顕微鏡をのぞく。
よほどの変わり者でなかったら出来ない仕事。
臨床に転向することにした。
手が不器用で、手を使わなくてもいい科って精神科しかないという理由だった。
精神科や心の問題に関心があったわけではない。とにかく手を使わなくてよいこと、それだけが条件だった。
そうやってなった精神科医だったが・・・・・・これが自分にとても合っていた。
能力をどんどん発揮していった。
それから何十年。精神科の診察室から一歩も出たことないまま、臨床医として一生を過ごしてきた。
天職かも。。。。。。しれない・・・と思うくらい、自分にはこの仕事しか出来ないかもしれない。
多分、精神病になれる素質のある人間だったんだと思う。
知らなかったけど。
素質がなかったら、こころの病の人を本当の意味では診れないと思う。