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川の治水と環境,恵みと災いを考える#2 望まれる日本版河川マイスターの職能とは?(FB過去記事)

前記事からの続きである.

日本の河川における治水と環境の調和した河道管理のあり方についてほうぼうでしゃべる機会をいただいている.正確には,講演やシンポジウム,学会での発表といった様々な機会に,「自然の営力」とは何か?洪水によって川の形が変わり,植物が生育し,変化していくことが当たり前の河川環境に,人為的な河川管理行為を加えながら,治水と環境の調和を目指すのが河川管理の仕事であり,それはとっても魅力的ではないか?という問いかけをしている.(もちろん,それを実現するための研究開発も大事だ)

2024年5月末に,「河川環境の管理にも,治水と同様に定量的な目標を設定すべし」という力強い提言が出て,6月末には平成18年に出された「多自然川づくり基本指針」が改訂された.河川環境の議論は新しいステージに入り,この20年間に蓄積された河川環境に関する知見が,現場で展開されることを強く期待している.

一方で,河川管理者向けや現場技術者との対話を通じて,「達成の仕方がよくわからん」というのが河川環境に関わる仕事の一番の悩みなのだろうなぁというのを常々感じています.日本版リバーマイスター制度ができて,その川の治水と環境について誰よりも詳しい!みたいな河川技術者が各河川ごとにいたらいいなぁ.生きてるうちにそういう制度ができるのを見たいものだとつぶやいたところ,いっそ日本版リバーマイスターの職能のたたき台をイメージしてみたら?と佐々木葉先生にコメントいただいたので,以下のとおり書きだしてみた.何人かの先達のアドバイスも入れて修正したものであるが,河川管理者としての職務と管理対象とする河川への深い理解と愛着をもつ現場技術者像が浮かんでくる.

日本版リバーマイスターの職能(私案)

  • その河川の流域・水系・河道の特徴をよく理解している

  • その河川と氾濫域の社会特性をよく理解し,河川管理に関係するステークホルダー,地域住民とコミュニケーションがとれる

  • その河川の治水上の危険箇所をよく知っている(洪水時にどこで何が起こるか理解している)/氾濫域の重要な保全対象の分布をよく理解している

  • 川の自然の形を知っている(島谷先生より)/地形と生息場所の関係性を理解している

  • その河川でとくに重要な生息場の分布やそれが形成・維持される仕組みを知っている

  • 河川構造物の機能や維持管理上の留意点を理解している/その河川のどこに何があるか知っている

  • その河川流域及び河川改修の歴史をよく学んでいる

  • その河川に住む生き物の分布や生態についての基礎知識を持つ/専門家の助言を得ながら環境保全のための対応がとれる

  • デザイン力を磨く努力を続けている/専門家の助言を得ながら水辺の景観形成が重要なエリアで適切な対応がとれる

  • 過去の改修やその後の河道内の変化(河床変動,植生遷移,生物分布の変化)をよく観察し,不断の工夫をもって維持管理方法の改善をする素養と熱意がある

  • 河川、自然環境、人の暮らし、それらからなる風景に愛情を持って接することができること(林先生より)

実際の業務としては,

  • 河道計画や河道設計に対して,専門家として意見できる(計画・設計論も分かっている)

  • 河川管理のことについて地元とコミュニケーションをとる

  • 伐採・掘削等,河川構造物(護岸,根固め,水制等,魚道etc)の計画・設計・施工管理ができる

  • 小改善工事を直営で行える/ちょっとした工事は自分で行える(重機が運転できる) などなど

そんな人に私もなりたい

元記事 2024/6/23 facebookの過去記事に大幅追記

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