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ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)の先にシンギュラリティは訪れるのか?

管理職っぽい仕事が増えてきまして,あまりにもこの類の仕事が多く,しかもブルシット・ジョブに,DX(デジタルトランフォーメーション)が組み合わさって,デジタル・ブルシット・ジョブとでもいうべき悍ましい様相を呈しているので,ちょっとBSJについて調べてみた.

デヴィット・グレーバーによる定義

2018年の著書でグレーバーは、以下に述べる5種類の「ブルシット・ジョブ」について説明している(らしい)。
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①取り巻き
誰かを偉そうにみせたり、偉そうな気分を味わわせたりするためだけに存在している仕事。例えば、受付係、管理アシスタント、ドアアテンダント。「管理職に昇進した以上、部下をつけなければならない」と見做されて仕事もないのに雇われた人々。権威付けと序列、メンバシップを確認する為だけにある会議体。
②脅し屋
雇用主のために他人を脅したり欺いたりする要素を持ち、そのことに意味が感じられない仕事。ロビイスト、顧問弁護士、テレマーケティング業者、広報スペシャリストなど、雇用主に代わって他人を傷つけたり欺いたりするために行動する悪党。
③尻ぬぐい
組織のなかの存在してはならない欠陥を取り繕うためだけに存在している仕事。たとえば、粗雑なコードを修復するプログラマー、バッグが到着しない乗客を落ち着かせる航空会社のデスクスタッフ。
④書類穴埋め人
組織が実際にはやっていないことを、やっていると主張するために存在している仕事。たとえば、調査管理者、社内の雑誌ジャーナリスト、企業コンプライアンス担当者など。役に立たないときに何か便利なことが行われているように見せる。
⑤タスクマスター
他人に仕事を割り当てるためだけに存在し、ブルシット・ジョブを作り出す仕事。中間管理職や号令係、取り次ぎや仲介。
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…だそうだ.なるほど…しっくりくるような来ないような.

日本社会のブルシット・ジョブの構造は

日本社会は構造的に,④書類穴埋め人⑤タスクマスターがアホみたいに多く,その根源が③尻ぬぐいなのかな,と思われる.
尻ぬぐいの際たるものが,目標に対する達成状況とか,役所から組織が後から怒られないようにするためのアリバイ・建前のための調査ものやら.

日本はそのBSJまみれの中で,長時間労働によって無駄な仕事を乗り越えて実質的な生産をモーレツにこなしてきたが,「働き方改革」でかたち上労働時間を減らし(リモートワークなんかもできるようになったという意見もあろうが,コロナ禍の副産物であって働き方改革の結果ではない),一方でデジタルBSJを増やし(メール添付ファイルのPPAPなどもその一端),効率が悪いまま労働時間だけ減らすものだから,残念な状態になっている.

事務職員の仕事を減らすためにデジタル化された書類が,専門職側に放り投げられる事案が特に多く,なんでもかんでも電子システム化すればよいものでもないと思われる.事務職員の労力を減らすなら,事務手続きそのものを簡素化すべきであって他人に仕事をつけ回せばよいというものではない.

…この時代に生み出され,増殖し続けているデジタル・ブルシット・ジョブはもしかして,日本社会全体が「なんて日本は無駄だらけなのか~」と悟るための試練のフェーズなのだろうか?

AIエージェントよ,デジタルBSJから我らを救いたまえ…

私が希望を抱いてるのは,AIを使うAIともいえるAIエージェントだ.これが早いとこ普及して,標準的な事務手続きなどは,AIエージェントとの対話で済むようにしてもらうだけで,多くの日本人に時間が生まれるだろう.

近未来のSFものだと,コンピューターのオペーレータ自体がアンドロイド(人造人間)だったりする.例:攻殻機動隊など.
人間がマシンを直接操作するより,マンーマシン・インターフェースとしてマシンに適切な処理を人間よりも高速で指示できるアンドロイドが挟まる,というのは実に合理的な発想だ.昔はそれがよくわからなかった.

AIエージェントは,現在のAIの使いかた(キーボードや音声認識経由でAIに指示を出す)であれば,アンドロイドのように実体をもたなくても,マンーマシン・インターフェースとしては十分だろう.
まずAIエージェントの採用は民間企業から進むだろうが,いずれ官公庁向けの事務処理用AIエージェントを実用化してほしいものだ.

AIが普及するとなくなる仕事…なんてリストがあったが,実用的なAIエージェントが実現したとき,それが現実になるかもしれない.

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