猫と暮らす(保護猫トライアルの記録)
子どもたちが学校に上がり、職場が変わって平日に趣味の時間がとれるようになったわたしたち夫婦。
ふと。
『犬か猫飼いたいね』夫が言った。
もともとわたしは、SNSでモフモフの生き物を見るのが好きだった。
夫の方は、ペットは考えられないと言っていたくせに、このごろスマホで生き物を眺めるようになったのに気づいていた。癒しを求めてるんだなぁと思った。
その少し前。おばあちゃんが亡くなったという報せがあった。
ここ何年も施設に入っていたから、家族揃っておばあちゃんの家に行くのは初めてだった。歩いていると、よその家の門柱にフワフワの猫が乗っている。
ニャーン。
鳴き声でわたしたちを誘ったその猫はなんとも人懐こく、子どもたちの前に身体を投げ出して、さんざ撫でさせた。
かわいいやんけ。
そんなことがあってまもなくだ。夫が『犬か猫飼いたいなぁ』という気になったのは。
夫がそう言ったもんだから、わたしは仕事中にも、犬ならフローリングを滑らないようにカーペット敷きにしなければ、猫ならリビングにキャットウォークがつくれたら素敵だなぁ、と妄想を始め、やだわたしったらすっかりその気になって舞い上がりすぎ!と頭を振った。
わたしは空想しがちで直感的な方だが、夫は理性的で事前準備をきちんとするタイプなのだ。あまり突っ走ると呆れられる。
初期費用と飼育にいくらかかる?散歩とか誰が行くの?旅行の自由もなくなるじゃん?ほら、現実的じゃない気がしてきた。
一方そのころ、夫はペットショップで犬を抱っこしていた。
LINEで犬の写真が送られてきて、わたしはずっこけた。
もう行ったんかい。
続いてメッセージが届く。
『抱っこしちゃった』
これは情が移ってるな…
『明日この子に会ってほしい』
気が早い!!