知識共有の革新的な職務行動を向上させる役割：論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回は、知識共有の革新的な職務行動を向上させる役割に関する論文です。
知識共有とは：
スキルや専門知識を同僚間で交換するプロセスを指す。このプロセスには以下の2つの主要な側面が含まれる
・知識提供 (Knowledge Donating):
自発的に知識を伝達する行為。例として、同僚と新しい情報や解決策を共有することが含まれる
・知識収集 (Knowledge Collecting):
知識を積極的に取得する行為。例として、同僚から情報を求めたり、新しい知識を得るための対話を行うことが含まれる
今日の論文
Exploring the Role of Knowledge Sharing in Enhancing Innovative Work Behavior in Small Medium-sized Industries
小規模中規模産業における知識共有が革新的な職務行動を向上させる役割の探求
Journal of Economics, Business, and Accountancy Ventura, Vol. 27, No. 2, August–November 2024
I Gede Rihayana, I Nengah Aristana
サマリ
この研究は、変革型リーダーシップが革新的な職務行動に与える影響を調査し、知識共有の媒介的役割に焦点を当てている
バリ島の小規模輸出産業126名を対象にアンケート調査を実施し、SmartPLS 3.2.9でデータを分析
その結果、変革型リーダーシップが革新的職務行動に有意な影響を持つことが判明
さらに、知識共有は両者の間で媒介的な役割を果たしている。自己評価法のバイアスなどの限界を認めつつ、リーダーがこれらの変数と媒介メカニズムを深く理解する必要性を示唆している
方法
本研究は定量的手法を採用し、バリ島に拠点を置く輸出志向型の小規模中規模産業を対象とした
アンケート調査でデータを収集し、SmartPLS 3.2.9を用いた構造方程式モデリングで分析
標本には、産業ごとにリーダーまたはオーナー、部門長、従業員の3名が選ばれ、計126名が調査対象となった
測定には5段階のリッカート尺度を使用し、変革型リーダーシップ、知識共有(知識提供と収集)、革新的職務行動の指標が採用された
わかったこと
変革型リーダーシップは、知識収集・知識提供を介して革新的職務行動を促進し、知識共有が媒介役として機能していることが確認された。
変革型リーダーシップ → 革新的職務行動:
直接的に正の影響を与える (β = 0.189, p = 0.021)
変革型リーダーシップ → 知識収集:
有意な正の影響を持つ (β = 0.525, p < 0.001)
変革型リーダーシップ → 知識提供:
有意な正の影響を持つ (β = 0.378, p < 0.001)
知識収集 → 革新的職務行動:
有意な正の影響を与える (β = 0.267, p = 0.005)
知識提供 → 革新的職務行動:
有意な正の影響を与える (β = 0.355, p < 0.001)
媒介効果 (変革型リーダーシップ → 知識共有 → 革新的職務行動):
知識収集は部分的に媒介効果を示す (β = 0.140, p = 0.012)
知識提供も部分的に媒介効果を示す (β = 0.134, p = 0.006)
論文から得た学び
変革型リーダーシップが従業員の革新的職務行動を促進するだけでなく、知識共有を通じてその効果を高めることが示唆されています。知識共有は、単なる情報の伝達にとどまらず、従業員が新しい視点や解決策を開発するための基盤として機能していると主張されています。さらに、知識の収集と提供は、特に小規模中規模産業において、競争力を維持するために重要であると主張されています。