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PMIにおけるミドルマネージャーの感情の定性的ケーススタディ:論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回は、PMIにおけるミドルマネージャーの感情の定性的ケーススタディです。
今日の論文
The Role of Emotions in Middle Managers’ Sensemaking and Sensegiving Practices During Post-merger Integration
ポスト・マージャー・インテグレーションにおけるミドルマネージャーの意味形成および意味伝達の実践における感情の役割
Group & Organization Management, 2023, Vol. 48(3), pp. 790–832
David P. Kroon, Hannah Reif
サマリ
ポスト・マージャー・インテグレーション (PMI: Post-merger Integration) におけるミドルマネージャーの感情が、彼らの意味形成 (Sensemaking) および意味伝達 (Sensegiving) の実践にどのように影響を与えるかを解明する定性的ケーススタディ
本研究の主要な発見として、「感情探求 (Senseseeking)」と「合理化 (Rationalizing)」という意味形成プロセス、および「感情逆転 (Emotional Reversal)」と「感情隠蔽 (Emotional Hiding)」という意味伝達プロセスを明らかにし、PMIにおけるミドルマネージャーの感情管理の重要性を示した
方法
ケーススタディ対象:
Merck Group と Sigma-Aldrich のPMIプロセスを追跡データ収集方法:
2015~2020年の5年間の定性データ収集
17名のミドルマネージャー、14名の従業員へのインタビュー
社内資料、観察データの分析
データ分析:
Gioia法 によるコーディング
感情の分類 (Lazarusの分類モデルに基づく)
わかったこと:PMIの3つのフェーズと感情の変化
フェーズ1 (2015-2016年): 感情のジェットコースター
統合初期の不確実性と混乱により、不安・興奮・興味 が交錯
意味形成: 「感情探求 (Senseseeking)」 → 変化の意味を積極的に探索
フェーズ2 (2016-2018年): フラストレーションと感情隠蔽
新たな手続きや役割に適応する中で、ストレス・怒り・嫉妬 が増加
意味形成: 「合理化 (Rationalizing)」 → 感情を抑えて客観的にPMIを理解
意味伝達: 「感情隠蔽 (Emotional Hiding)」 → 従業員の不安を増幅させないよう、ネガティブ感情を隠す
フェーズ3 (2018-2020年): 抵抗から楽観へ
従業員の不満と抵抗 がピークに達し、統合プロセスの混乱が続く
意味伝達: 「感情逆転 (Emotional Reversal)」 → 前向きなメッセージを強調し、感情をポジティブに変換
結果: ミドルマネージャーはPMIを「エネルギーを与えるプロセス」として認識し、最終的に楽観的な態度 へと変化
論文から得た学び
従来のPMI研究はネガティブ感情の抑制に焦点を当てていましたが、本研究は感情を活用してPMIを成功に導くことが可能であることが示唆されています。また、ミドルマネージャーの感情が従業員に影響を与え、ネガティブ感情を隠すことが従業員の抵抗を生む可能性が主張されています。