暗黙的リーダーシップ理論の因子構造(2004年):論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回は、2004年の暗黙的リーダーシップ理論の因子構造に関する論文です。
下記論文の尺度を用いて検証されています。
今日の論文
Implicit Leadership Theories in Applied Settings: Factor Structure, Generalizability, and Stability Over Time
応用現場における暗黙的リーダーシップ理論:因子構造、一般化可能性、および時間を超えた安定性
Journal of Applied Psychology, 2004
Olga Epitropaki, Robin Martin
サマリ
この研究の目的は以下の3点に焦点を当てている
Offermannら(1994)による暗黙的リーダーシップ理論(ILTs)の尺度を複数の組織環境で検証し、短縮版を提供すること
ILTsが異なる従業員グループ間で一般化可能であるかを評価すること
ILTsが時間を経てどのように変化するかを評価すること
500名と439名の独立したサンプルを用い、6因子構造(感受性、知性、献身性、ダイナミズム、専制性、男性性)が組織環境におけるILTsを最もよく表現していると判断された
さらに、ILTsは時間を通じて一定の安定性を示したが、因子間の完全な不変性は部分的にしか確認されなかった
方法
サンプル1: イギリスの空港で500名のフルタイム従業員を対象にデータを収集。平均年齢39歳、平均勤続年数18.24年
サンプル2: 439名の従業員(製造業72%、サービス業28%)に郵送調査を実施。1年後に271名からの追跡データを収集
測定: Offermannらの41項目ILTs尺度を使用し、9段階評価で各特性がビジネスリーダーにどの程度当てはまるかを測定
わかったこと:
Offermannら(1994)による暗黙的リーダーシップ理論(ILTs)の尺度を複数の組織環境で検証し、短縮版を作成
元の41項目尺度を組織環境に適用し、データ分析を実施
因子構造:初期の8因子モデルを基に、6因子モデル(感受性、知性、献身性、ダイナミズム、専制性、男性性)に再構築
短縮化:実用性向上のため41項目から21項目へ簡略化し、心理測定的な信頼性と妥当性を確保
各因子の負荷量(factor loadings)は統計的に有意 (p < 0.001)
プロトタイプ(理想的なリーダー像)は以下の4因子で構成
Sensitivity, Intelligence, Dedication, Dynamismアンチプロトタイプ(避けたいリーダー像)は以下の2因子で構成
Tyranny, Masculinity
わかったこと②:ILTsが異なる従業員グループ間で一般化可能であるか
分析対象のグループ:
性別(男性 vs 女性)
年齢(若年層 vs 高年層)
勤続年数(短期 vs 長期)
職務階層(管理職 vs 非管理職)
業種(製造業 vs サービス業)
職場環境(現場職 vs 非現場職)
主要な結果:
ILTsの因子構造は全体的にグループ間で一貫性を示した
一部の特性に関して、性別や役職などの属性による統計的な有意差が認められた(例: 女性は感受性を、男性は専制性をより重視)
わかったこと③:ILTsが時間を経てどのように変化するか
期間: 1年間の追跡調査を実施
方法:
Gamma変化: 因子の再概念化や構造の変化を評価
Beta変化: 測定基準の再調整を評価
Alpha変化: ILTs特性レベルの変動を測定
結果:
Gamma変化とBeta変化は確認されず、因子構造は安定していた
Alpha変化(特性レベルの変動)は一部の因子で観察された
管理者の変更やリーダー経験がILTsの一部特性に影響を与える可能性を示唆
論文から得た学びと活用場面
時間の経過や環境要因に対する適応性が部分的に示唆される一方で、多くの特性は安定していることがわかりました。ILTsの理解を通じて、従業員のリーダーシップに対する期待と実際のリーダー行動との一致を向上させることができそうです。