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リーダーシップスタイルと性格の関係:論文レビュー

こんにちは、原田です。
今回は、リーダーシップスタイルと性格の関係に関する論文です。以前のリーダーシップ開発に関するレビュー論文のコメントでご紹介いただいた論文です。


今日の論文

What Are We Measuring? Convergence of Leadership with Interpersonal and Non-interpersonal Personality
リーダーシップと対人および非対人性格の収束に関する測定
Leadership, 2008
Reinout E. de Vries

サマリ

  • 本研究では、リーダーシップスタイル(MLQやLBDQによる)とHEXACO性格スケールおよび対人円環との関係を調査

  • カリスマ的リーダーシップやリーダーの配慮は「温暖・親しみやすい」八分円で強い投影を示しており、一方でトランザクショナルリーダーシップや受動的リーダーシップは投影が弱いかほぼ見られなかった

  • リーダーシップの評価が性格的特性の測定に収束している可能性が示唆された

方法

  • 152名の被験者を対象とし、リーダーの性格やリーダーシップスタイルをインターネットベースの質問票により評価

  • HEXACO-PI(性格モデル)とMLQ(多因子リーダーシップ質問票)、LBDQ(リーダー行動記述質問票)を用い、それぞれの信頼性と妥当性を確認

HEXACO-PI(性格モデル):
HEXACO-PIは、性格を6つの次元で測定する性格評価ツール。6つの次元は「誠実さ・謙虚さ(Honesty-Humility)」「情緒性(Emotionality)」「外向性(Extraversion)」「親和性(Agreeableness)」「誠実性(Conscientiousness)」「経験への開放性(Openness to Experience)」。このモデルは従来のビッグファイブモデルに「誠実さ・謙虚さ」の次元を加えた点が特徴であり、人間の性格をより包括的に捉えるために使用される。

MLQ(多因子リーダーシップ質問票):
MLQはリーダーシップスタイルを測定するためのツールであり、主に「変革型リーダーシップ(Transformational Leadership)」「取引型リーダーシップ(Transactional Leadership)」「受動的リーダーシップ(Passive Leadership)」の3つの主要次元で構成されている。この質問票は、リーダーが部下にどのような影響を与えているかを評価するために使用され、リーダーシップの効果性を分析する研究などで頻繁に活用されている。

LBDQ(リーダー行動記述質問票):
LBDQはリーダーの行動を測定するための古典的なツールであり、リーダーシップのスタイルを「配慮(Consideration)」と「構造の開始(Initiating Structure)」の2つの主要次元に基づいて評価する。配慮は部下への支持や配慮を示す行動を指し、構造の開始は業務の計画や役割の明確化といったタスク指向の行動を指す。このツールはリーダーの行動スタイルを特定し、それが組織のパフォーマンスに与える影響を評価するのに用いられる。

対人円環 (Interpersonal Circumplex):
対人円環とは、個人の対人関係における性格や行動特性を視覚的に表現するための2次元モデル。主に心理学や性格研究で用いられ、人間の対人行動の多様性を理解するフレームワークとして利用される。
2つの主要次元:

  1. 支配(Dominance): 垂直軸に沿う次元。対人行動の「主導権を握る/従う」を表す

  2. 親和(Affiliation): 水平軸に沿う次元。対人行動の「友好的/敵対的」を表す

  • 8つの八分円(Octants):
    円環全体が8つの八分円に分かれ、それぞれ異なる対人特性を表す。特性は隣接する八分円間で連続的に変化する

    1. 温暖・親しみやすい(Warm-Agreeable)

    2. 自己主張的・支配的(Assured-Dominant)

    3. 社交的・外向的(Gregarious-Extraverted)

    4. 高慢・計算高い(Arrogant-Calculating)

    5. 冷淡・無関心(Cold-Hearted)

    6. 控えめ・内向的(Aloof-Introverted)

    7. 優柔不断・従順(Unassured-Submissive)

    8. 素朴・誠実(Unassuming-Ingenuous)

わかったこと:

  • カリスマ的リーダーシップ

    • 対人円環では「温暖・親しみやすい(Warm-Agreeable, LM, 0°)」八分円に強い投影を示した

    • 外向性、親和性、誠実性、経験への開放性、誠実さ・謙虚さと高い正の関連があった

    • 情緒性とは負の関連が確認された

    • 対人次元と非対人次元の両方に関連が見られた

  • リーダーの配慮(Consideration)

    • 対人円環で最も強い投影を示し、主に「温暖・親しみやすい(Warm-Agreeable, LM, 0°)」八分円に関連した

    • 親和性、外向性、誠実性、誠実さ・謙虚さ、情緒性と強い正の関連を持つ

  • トランザクショナルリーダーシップ

    • 対人円環にはほとんど投影を示さなかった

    • 非対人次元である誠実性と唯一有意な関連があった

  • 受動的リーダーシップ(Passive Leadership)

    • 対人円環に弱い投影を示し、主に外向性と負の関連があった

    • 誠実性とは負の関連、親和性とは正の関連が確認された

  • リーダーの構造の開始(Initiating Structure)

    • 対人円環では「高慢・計算高い(Arrogant-Calculating, BC, 135°)」八分円に弱い投影を示した

    • 誠実性とは正の関連、親和性とは負の関連が見られた

  • HEXACOモデルとの総合的関連

    • カリスマ的リーダーシップとリーダーの配慮は、主に対人次元(外向性、親和性)に関連した

    • トランザクショナルリーダーシップと受動的リーダーシップは、主に非対人次元(誠実性など)に関連した

    • リーダーシップスタイルによって、関連する性格次元が異なることが示唆された

論文から得た学びと活用場面

カリスマ的リーダーシップとリーダーの配慮は性格次元によってほぼ完全に説明可能であることが示されています。対照的に、トランザクショナルリーダーシップや受動的リーダーシップは、対人次元よりも非対人性格に依存している傾向があることが主張されています。

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