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2020年の取り憑かれた洗濯機

一月。
死人が出るぞ。
彼はそう言った。
まさかと思った。
だって、みんな普通に暮らしている。
駅の改札を通り、バス停に並ぶ。
下のロータリーを車が滑らかに蛇行していく。
死人が、出るぞ。
彼は再び力強く言った。
この人は何かに取り憑かれているに違いない。
かわいそうだなぁ。
他人事のように私は感じ、
死人が出ないことよりも、
干しっぱなしの洗濯物が夜の湿気に
やられていないことを念じた。

二月。
冬でも春でもお正月でもないような、
居心地の悪い寒さを引きずったこの月は、
忘れられずにいる初恋の相手を、
もうどうしようもする術もないのに、未だに
心の内ポケットに大事にしまっているみたいで、
すごく不快だ。
カラッカラに乾き切ったタイミングで取り除こうと思っているのに、そのタイミングになると、
なぜかいつも忘れてしまう。しかも何度も。
洗濯槽のネットのゴミと同じだ。
乾き切ったところに水を注ぐ。
自分が注いでいるのか、
それとも自分の意思とは関係ないところで
もうすでに注がれてしまっているのか。
厄介で、不快だ。
なのに何故、忘れられないんだろう。
何故、忘れてしまうのだろう。

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