「黄色い線の内側までお下がりください」
気づけば目の前を特急の電車が通過して行った
ああ まただ
それは、何度か見たことのある風景だった
2020年はそういうことの繰り返しだった
一人でぼんやりと立ち尽くしている
手足は冷たい
駅のホームがあんなに静かだとは知らなかった
轟音を立てて通り過ぎて行く特急は
感覚と感情と共に消えた
あんなに好きだった音楽や
大好きだった人への感情も過去も思い出せない
というより何万回も殺すと消えるらしい
そして蘇らないらしい
2020年はそういうことの繰り返しだった
三十歳になるタイミ