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ハラマキ通信 冬の破壊神 長引く咳にご用心

 一度かわいた咳が出はじめると喉の奥がヒューヒューと音を立てて息苦しさが止まらない。おまけにわき腹や背中がミシミシと痛む。
最初は三十八点五度の発熱があったものの、三日目には三十六度前半の平熱に下がったので単なる風邪であろうと甘く見ていました。しかしあまりに咳がひどく長患いなので新型コロナウイルスやインフルエンザといった面倒なウイルスに感染したのではないかと思い、私はついに発熱外来のあるクリニックに電話予約をして診察を受けることにしました。
病院の受付ロビーは広く明るい雰囲気で、みんなマスクは着用していますが穏やかに会話する人もいて、2020年当時の“コロナ禍の野戦病院”のような殺伐とした戦場ではありませんでした。しかし私はあらかじめ発熱があったことと、咳が続いていると伝えていたので看護師さんに「発熱外来の患者さんは特別室で待機していただきますのでこちらへどうぞ」とバックヤードのような細長い部屋に案内されました。その一角に、スチールラックにビニールシートを張った“テント”があって、中に置かれた丸いパイプ椅子が発熱外来の指定席でした。この隔離施設で検査対応をする看護師さんはコロナが5類になろうが毎回感染リスクと向き合っているのです。
私たちが2020年以降コロナを経験してから感染症対策への意識はガラリと変わりましたが、病院施設がすべての構造や設備機能を変えることなど不可能です。設備や医薬品、人材、すべて切迫した状況のまま、体勢を整える間もなくいまも限界ギリギリで、継続しているのだろうと思います。
さて、今回まず最初に抗原検査を受けたのですが “SARSーCoV-2・インフルエンザ”  つまり一つの検査キットで新型コロナウイルスとインフルエンザの両方同時に検出できるという便利なものです。

しばらくビニールテントの中で待つと、白衣を羽織った細い人影が上半身を45度に折り曲げたまま超高速のすり足でこちらに接近してきました。
「お待たせして申し訳ありません…」落ち着きなく上半身を何度も折り曲げお辞儀をしながらもぞもぞしゃべる姿はコメディアンの江頭2:50氏によく似ている。
「あ、あの、コロナもインフルも陰性で陰性で」ん。おお、よかったよかった。最悪コロナとインフル両方に罹患していたら?なんてボンヤリ考えていたのです。
「でも咳が続いているようなので咳止めと炎症を抑える薬を一週間分お出ししますはい」
症状が治まらないようでしたらまた…と江頭2:50似の医師は何度も何度も丁寧にお辞儀をして、最後まで私と目を合わせることがありませんでした。
彼はウイルスとの戦いに疲れているのかなあ。それともウイルスを飼育しているヒトですか。あなたを疲れさせている一番の敵は誰なの?もっとやっかいな医療制度とか“マイナなんとか”とか、巨大なシステムってやつらですか。

いつもの薬局に向かうと顔見知りの薬剤師さんが対応してくれました。
「きょうはイレギュラーでね咳止めをもらいにきたんですよ。コロナとインフルは陰性だったんですけど咳がひどくて」
すると薬剤師さんは微笑みながらも恐ろしいことを口にしたのです。
「私は一か月も咳が続いてね、それで肋骨にひび入ったのよ」
「えっ?咳をしすぎて? 薬剤師さんでも、咳止め飲んでも、肋骨にひび入っちゃうの?」
噂には聞いたことがあるけれど、咳をしすぎて肋骨にひびが入るなんて。5類になったコロナやインフルのウイルスより、咳のほうが怖いかもしれない。咳の破壊力すごい。
「だからしっかり治さなきゃだめよ。温かくしてゆっくり休んでね」
はい。今夜はしっかり冬用腹巻きにします。

きょうの医療費合計=3,430円  (発熱外来診察・抗原検査代金=2,740円 薬代=690円)

ウイルスも、咳も、決して侮るなかれ。まずは手洗いうがいで感染予防をしましょうね。

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