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アフリカを脅かすマラリアと人々の取り組み

アフリカで深刻な問題である感染症問題。発展途上国の多いアフリカでは医療体制も不十分なエリアが多く、社会経済、貧困や教育にも影響を及ぼしています。アフリカでの死亡原因1位にあげられているのは、エイズや下気道感染症、マラリアなどの感染症です。なぜアフリカでは多くの感染者を出し続けているのでしょうか?今回はマラリアの問題や取り組みについて掘り下げます。


アフリカで蔓延する感染症

世界中で数多くの感染者数、死者数を出している三大感染症がマラリア、エイズ、結核です。2018年では世界のマラリアの死亡者数の94%がアフリカ大陸に集中。2019年時点での世界のエイズ感染者数の3分の2とされる約2500万人がアフリカで生活をしています。2015年時点での世界の結核の新規感染者数の26%がアフリカからとの報告もあります。

主な感染経路が性交渉と母子感染であるエイズは、2018年時点で毎年2万8000人が新規感染しているとされ、若者の約10人に1人が感染していると言われています。また、熱帯病と言われている、デング熱、狂犬病、トラコーマをはじめとする疾患は世界中で感染、蔓延しており、感染者数は約14億人にのぼり、そのうちの約半数がアフリカでの感染者です。

三大感染症とは?

アフリカで猛威を振るい、人々を病に陥れている三大感染症。マラリア、エイズ、そして結核の3つは昔から現代にいたるまで多くの感染者、死亡者を出しています。そんな3つの感染症とはどんな病気なのでしょうか?

  • マラリア
    マラリアはマラリア原虫という寄生虫を持つハマダラカという蚊に刺されることで感染する病気です。症状は感染から約10〜15日後に発熱、頭痛、悪寒などが出始め、原虫の種類によっても違いがあります。また、数か月後、数年後に再発症する可能性もあり、合併症を伴うと意識障害や重症貧血が起こる可能性もあります。治療が遅れたり、5歳未満の子供は重症化しやすく死にいたる危険性も。

  • エイズ
    エイズは主に性行為や母子感染、血液感染によるもので、HIVというヒト免疫不全ウイルスが体内の細胞の中で増殖する病気です。
    発症して約2週間で発熱、倦怠感、筋肉痛などのさまざまな症状が起こります。しかし症状が出ない場合もあり、感染から発症まで5〜10年かかることがあります。エイズは完治はできませんが、薬で発症を抑えられる病気です。

  • 結核
    結核は結核菌に侵された結核患者の飛沫を吸うことにより感染します。
    症状は風邪が長引いたり、発熱などです。現代では多くの国で予防接種が行われ、日本では生後4〜6か月ごろに接種を推奨されています。

※参照URL:https://www.worldvision.jp/children/education_04.html#d0e9d87eb78fa54e47cd213ca7606442

※参照URL:https://www.msf.or.jp/news/malaria.html?utm_medium=cpc&utm_source=goole_grants&utm_medium=cpc&utm_source=google_grants&utm_content=douteki&gad_source=1&gclid=CjwKCAjw_Na1BhAlEiwAM-dm7If7-YyaksHauHU_U_fCj2JyO2q1HP7f4mvECMunZe5RHCsx5FamBxoCB00QAvD_BwE

マラリアによる影響とリスク

マラリアは健康面だけでなく、アフリカの多くの国で経済へ影響を及ぼしています。

マラリアはどんな人でも感染する病気です。そのため経済を動かすうえで重要な労働者が感染してしまい、労働生産性が低下してしまいます。それによって、経済が停滞する影響を及ぼしてしまうのです。マラリアはすぐに治るものではないので、お金が必要で働きたくても働けない期間が長期的に続くことになります。

また、マラリア流行地域は多くの旅行者が渡航を避け、それにより観光業に影響を及ぼします。観光業は経済を大きく動かせる産業であるうえに、外貨を獲得できるので経済と切って離せない重要な産業です。

さらに深刻なのが、子どものマラリアへの感染です。経済と関係が薄いように見受けられますが、実はそうではありません。マラリアに感染した子供たちは、学校に行ける子供でも欠席せざる負えなくなります。学校で教育を受ける機会を失ってしまうこと、つまり教育水準の低下につながるのです。それにより、将来、社会で経済を回し活躍していく大人たちが減ってしまい、結果経済成長へ悪影響を及ぼすことに繫がってしまいます。

これらの影響からマラリアによるアフリカでの経済損失は年間推定約1.2兆円にも上るとされています。


小さな命への影響

アフリカでは乳児の死亡率が世界のほかの国々に比べて大変高いことも問題のひとつです。

乳児の主な死亡原因とされているのが、出産時の合併症、肺炎などの感染症、下痢、そしてマラリアの4つが挙げられます。新生児の死亡原因に絞ると、合併症と感染症が死亡原因の約80%を占め、毎年年間約85万人もの乳幼児がマラリアによって死亡しています。この結果から分かるように、感染症で亡くなる小さな命が絶えません。

しかしこういった感染症を未然に防ぐことはできないのでしょうか?乳幼児をはじめ人々をこうした感染症から守るには、感染症に対しての知識を広める教育、そして何より十分な医療体制が重要です。


貧困との悪循環

マラリアは災害時にも大きな問題になっています。2024年3月からケニアを襲う豪雨で大規模な洪水が発生しました。インフラが整っておらず多くの犠牲者と避難せざる負えない人が続出。そのような中懸念されていたのは、けがや事故だけではありませんでした。

それが水でも感染するコレラやマラリアの蚊が多く媒介するリスクです。発展を続けるケニアですが、それでもインフラや医療体制が整っている環境があるのはほんのわずかで、ほとんどの地域では十分な恩恵が受けられません。

貧困に悩まされている多くの人はたとえどのような状況でも対処する知識さえなく、よってその人たちが病気で苦しむという貧困の悪循環が生まれてしまいます。

※参照URL:https://globalnewsview.org/archives/15808#%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E3%83%BB%E7%B5%8C%E6%B8%88%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%BD%B1%E9%9F%BF

※参照URL:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/bunya/health/ghana1.html#:~:text=%E3%83%9E%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%82%92%E3%81%AF%E3%81%98%E3%82%81%E3%81%A8%E3%81%99%E3%82%8B,%E3%81%A8%E3%82%82%E8%A8%80%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82

※参照URL:https://www.msf.or.jp/news/detail/headline/ken20240508nt.html

マラリアの感染対策について

マラリアは早期発見と治療が治るカギになり、死に至るリスクが低くなります。これまでのマラリアの対策としてあるのは、抗マラリア薬、蚊帳、そして殺虫剤です。

マラリア原虫によって効果のある抗マラリア薬は異なります。WHOが推奨するアルテミシニン系医療(ATC)が世界基準とされており、使用率はまだ低いですがアフリカ諸国でATCが導入されています。

次に最も古典的なのが、蚊帳です。蚊帳を使用することで蚊との接触を防ぎます。現在アフリカの多くの地域で使用され、使用率が高い感染対策です。アフリカでマラリア流行地域にいる人々の中、2019年時点では推定46%が蚊帳を使用しているとされています。また、殺虫処理がされた蚊帳も広まっており、さらに高い感染対策ができるとされています。

さらに高い感染対策であるのが高い感染対策であるのが殺虫剤です。屋内残効性殺虫剤噴霧(IRS)は殺虫剤処理がされた壁に蚊がとまることで蚊が死滅する強力な感染対策です。サハラ以南のアフリカ諸国では2017年時点で64%の使用率になっています。しかし、近年では人体への影響が懸念されているため、製造や利用が制限されているのも事実です。

女性と子どもを守る予防治療

サハラ以南のアフリカでは特にマラリアの感染率が高く、多くの人がマラリアによって命を落としています。2015年ではマラリアの感染者の90%、そしてマラリアによる死亡者の92%がサハラ以南のアフリカの人々でした。さらにそのうちの約70%が5歳に満たない小さな子どもたちでした。

そのような状況でWHOによって推奨されているのが、スルファドキシン・ピリメタミンを使用した「妊娠中の間歇的な予防的治療」(IPTp)です。この予防治療によって女性をマラリアから守り、妊娠中の女性と胎児の死亡や貧血などのリスクを避けることができるのです。
2015年時点では、予防内服投与の普及率が31%と5年間で5倍も広まりました。

※参照URL:https://www.forth.go.jp/topics/2016/12191047.html

※参照URL:https://globalnewsview.org/archives/15808#%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E3%83%BB%E7%B5%8C%E6%B8%88%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%BD%B1%E9%9F%BF


マラリア感染対策の新たな試み

マラリアの新しい感染対策として進められているのがワクチン開発です。

多くの試験を重ね、2019年に安全性と効果が認められました。このワクチンの効果を得るためには4回の接種が必要とされ、生後5か月に1回目を接種後、6か月、7か月、18か月目で接種が完了。

アフリカでもそのワクチンは試験され、ワクチンを接種した1000人のマラリア発症を防ぐ効果があったと報告されています。さらに、マラリアを発症したとしても重症化するのを約30%も減少させる効果が見られました。マラリアのワクチンには他のワクチン接種に対する影響はなく使用できるとのことです。

※参照URL:https://globalnewsview.org/archives/15808#%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E3%83%BB%E7%B5%8C%E6%B8%88%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%BD%B1%E9%9F%BF

※参照URL:https://www.bbc.com/japanese/58813906

まとめ


昔から世界中で猛威を振るい、多くの人を悩ませ死に陥れてきたマラリア。現代においてもなお、アフリカでは毎年多くの感染者が出ています。そのような中で、さまざまな試行錯誤の結果、マラリアの感染対策が生み出されてきました。

アフリカでは、医療体制が不十分でまだ多くの人が十分な医療を受けられずマラリアに脅かされている人が多くいるのも事実です。しかし、経済や医療の発展とともに効果的な感染対策が徐々に広まっています。

今後の未来では、アフリカが発展し続けマラリアをはじめとする感染症から多くの人が生き延びられるような社会ができていくことを願います。

著者:庄寿見千織
学生時代は15年間新体操漬け。海外に興味を持ち始め大学で外国語学部卒業後、13か月間の世界一周を達成。渡航歴は合計約50カ国。世界一周中にスラム訪問やボランティア活動等を通して海外の現状を目の当たりにし、国際問題にさらに興味関心を持つ。現在はライターとして活動する傍ら、ダンサーや情報発信にも力を入れて、今後も海外とのかかわりを持ち続けるように模索中。

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