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【雑記】大根思う

この後メシどう?

と夕食に誘われて、
自炊のために買ってある大根のことを考える。
すでに一週間も、半切れのままで冷蔵庫に置いてある大根だ。
うっすらと断面を茶ばませて、短冊になる日を待っている。

そんなときの私は、本当に一瞬だけ瞑目して
(一瞬の瞑目は瞬きにひとしい)、
努めて明るく応じ、駅前中華に向かうのだ。

安中華の安餃子付き安ネギラーメンの湯気を掠めて飛び交う、実のない、長いだけの語らいの間、
大根は自宅でひとり眠っている。

(だいたい、初っ端、大根なんてよぎる時点で、この語らいの価値は知れているのだ。
それなら大根の側にいてやった方がいいのに。)
「ぼかぁ許せませんな、あぁいう類は!」
悪態の喉をサワーで潤す、すぐ下のレイヤーに大根がいて私を恨んでいる。気がする。

翌日、運が悪ければさらに先、私はようやく大根を味噌汁にする。挽き割り納豆と。皮は辛子漬けに。
大根は拗ねない。人間の夕食の誘いを断った時と違って。茶ばんでいても変わらず美味くてほっとする。
なんだ、そんなら今日も誰かとクダ巻いてても良かったか。

私は不実だ。人に会っては大根を思い、大根に会っては人を思い。

大根が人間よりも丈夫だなんて最初からわかってる。
ただ大根の萎びゆくままに日々誰かと語らうことができたなら、
それこそが幸福なのだろうな。

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