英語のワークを3周解く……ぐらいなら
GWですね。みなさまいかがお過ごしでしょうか。僕は勤務先の塾がGW休みになっているんで、ここぞとばかりに連休明けから当面の文の教材プリントを作っています。それは仕事ではないのか、連休とは、という問いが駆け巡りますね。
さて。
以下では、中学生が学校や塾の英語のワークを解くときの注意点というか、こういうやり方をしていくとしっかり英語ができるようになっていくんじゃないかという方法について、書いていこうと思います。
01. 学習方略は教科によって異なる
問題集を解くということになると、「ワーク3周」みたいな話をよく聞きます。3周でも5周でも10周でもいいんですけれど、要は問題集を何度も解いて、解けない問題をつぶしていく、という方略ですね。
たしかに、それが有効な教科もあるでしょう。でも、どんな学習方法が効果的なのかには、教科によって差があってしかるべきではないでしょうか。英語って、本当に「ワークを何周もする」ことが効果的な教科なんでしょうか。
そもそも、教科学習をするということはそのままイコール「問題を解く」ということではありませんからね。この辺がわかっておらず、「勉強とは、問題を解くことだ」という誤った観念に取りつかれている中学生は、僕の観測するかぎり、かなり多いです。
数学なんかはね、教科書をどれだけしっかり読み込んだところで計算の正確さやスピードがつくわけじゃありませんから、実際に問題を解くということが自主学習の中心になってくるでしょう。応用問題だって、まずは自分の頭を使って考えないことには力がついてこないはずです。(ここで自主学習と書いたのは、授業において理解を構築する過程を話の外に置きたいからです。悪しからず。)
理科や社会は、問題を解くばかりでは少しバランスが悪くなる(知識が体系立てられず、ぶつ切りになる)恐れがありますから、問題→教科書・ノート→問題→…、という具合に、問題を解くことと教科書やノートのまとめを見直すことを交互に行うのがいいような気がします。
国語、それも読解問題の自主学習について語るとなると、それは端的にまとめられるようなものにはならないでしょうから、ここではキャッツアイします。
では、英語はというと、正直なところ、ワークにあるような問題をどれだけ解いたところで、まあ、多少「問題を解くのが得意」な人にはなれるかもしれませんけれど、「英語ができる」人にはなれないでしょうね。学校や塾の問題集って、限られた紙面の中で出題パターンをある程度網羅することを念頭に作られているのか、結果的に「外国語の練習」として意味のある問題の割合が少ないんですよ。
とはいうものの、そのワーク、テストのときに提出しなきゃいけませんもんね。それが評定に影響しますもんね。
どうせやらなきゃいけないワークなら、せめて意味のある取り組み方をしたいじゃないですか。てなわけで、本題いってみよう。
02. 答え合わせで終わるのは論外として…
というわけで、いま適当な問題をwordで作ってみました。こちらです。
ありがちですね。
最初から正解できた場合はひとまず置いといて、解いて間違えた場合の話をしましょう。
はい。間違えました。ありがちな誤答ですね。
ちなみに、ほとんどの中学生はワークのすべての問題を「この状態」にして、「ワーク終わりました」と言います。終わってない。そこ、スタートラインだから。何ならスタートラインの3歩手前ぐらいだから。指導者のほとんどはこう思っています。
せめて、間違えた箇所について、正しい知識のメモぐらいはほしいですね。
このように。こんなメモが残っている時点で、かなり「勉強できる」中学生であることは間違いないのですが、これで済ませてしまうといかにもまずいです。「なんで? ちゃんとポイントもメモできてるし、いいじゃん」とお思いでしょうが、そうは問屋が卸さナイル川。
たとえば「主語が三人称単数のとき、動詞の現在形は-sがついた形になる」という知識。たとえば「~に行ったことがある、はhave been to~で表す」という知識。
これって、「英語に関する、日本語の知識」ですよね。
日本語の知識をいくら増やしたところで、英語はできるようになりません。
だって、英語の練習をしてないんですから。
あたりまえのようなことなんですけど、ここがよくわかっていない学習者は多いです。
03. 英語の「文」を練習しよう
だから、上記のような間違いをしたとして、復習すべきはその問題でもなければ、その問題に正答するための文法知識でもありません。問題の英文そのものです。この場合なら、She has been to China three times. という文そのものです。
この問題を間違えてしまったら、すぐにノートにこの文を書くのです。大文字からピリオドまでを、です。文法は「文の組み立てのルール」なんですから、一文を最小単位として練習するのは当然のことです。
はい、書きました。
それで、このあとどうしましょう。
ここから先は、現時点での英語の成績と、到達したい目標によると思います。具体的には3段階ぐらい、復習方法を提案しておきます。
04. 書くだけだって練習になる
英語がどうしても苦手で、平均点が取れたら御の字……というレベルの中学生は、さっきノートに書いた英文の下に日本語の意味を書いて(もちろん、文法や単語を確認しておくことは前提ですけど)、さらに3回、英文を書きましょう。
さらに3回、英文を書きましょう。
さらに3回、英文を書きましょう。
大事なことなので3回書きました。
これぐらいのレベルの人は、そもそも文法的に正しい英文を見たり聞いたり声に出したり手で書いたりしたことがある絶対数が足りていないことがほとんどです。これだけだって充分、いまより英語の力はつきます。
単に見て写すだけで手首の運動になってしまってもよくないので、上に書いた英文は別の紙か何かで隠しながら書くといいです。1秒前に見たものを思い出しながら書くだけで、見て写すよりは遥かに頭を使ってます。
えっ。「間違えた問題が多すぎて、そんなに何回も書いてられない。」ですか。
うぅ~ん、それじゃ、仕方がないので、英語できるようになるのはあきらめてください。冷たいようですけど、そういうことです。もうひとつは、ワークの問題を解くまえに、ちゃんと教科書の練習してください。教科書の練習については、気が向いたら別の記事にまとめます。
05. 和訳・英訳の素材にする
そこまで英語が苦手なわけでもない人は、最初に書いた英文だけを見て、自力で日本語の文に直してみましょう。和訳の練習ですね。ワークを解いた直後よりは、一晩ぐらい寝かせてからの方が練習にはなるでしょう。
こういうことですね。で、自力で和訳したあとで、先ほど紹介したのと同様に、3回ぐらい書いて練習してもいいでしょう。ただ、それよりも負荷を上げて、英語の力をつけるためには、今度は英語の部分を隠して、英作文してみるといいですね。理解が確かなのか不確かなのか、一発でわかります。
今回は空所補充の問題を例に挙げましたが、空所補充だって整序問題だって、和文つきの問題であれば、英作文ができれば自動的に解けますからね。これは多くの人に聞いてみた結果でもなんでもないんで僕の想像に過ぎないんですけど、英語が苦手な中学生、あるいはそこそこレベルの中学生って、空所補充問題なんかを、一生懸命、書いてある単語と日本語を見比べて、日本語のどの部分を空所に入れて……って考えているみたいなんですよ。一方、得意な人はですね、和文を英作文して、空所の部分だけ書いているって印象です。少なくとも僕が問題を解くときはそのようなことをしています。
まあ、これが高校レベルになると、問題の形式に合わせた頭の使い方……なんてことも、多少は必要になってくるのかもしれませんが、中学レベルの英語でそんな小賢しいこと、あんまり考える必要はありません。和文英訳ができることをひとまずのゴールにしておけばだいたい大丈夫です(だいたい大丈夫というのは、万事解決ということではありません。念のため)。
06. 正答できた問題の負荷を上げて解きなおす
和文英訳がひとまずのゴール、ということになれば、最初から正答できていた問題だって、「英作文として解きなおす」ことにより、レベルを上げた復習が可能です。やり方は単純。問題集の英語の部分を紙やなんかで隠して、ノートに英作文するだけ。ね、簡単でしょう?
「いや、全部英作文はレベル高すぎっす……」
なるほど。
じゃ、ちょっとずつ負荷を高めていきましょう。使うのはチェックペンです。マークした部分が赤シートで見えなくなるあれです。おすすめはゼブラのチェックペン-アルファです。
これで、空所補充や整序問題の、見えている単語の数を減らしていきます。身近にそういうことを頼める指導者がいるなら、指導者の方に減らす単語を選んでもらうといいです。重要度というか優先度というか、ありますから。それが無理なら、別に気分で構いません。1個か2個ずつ、見えている単語を隠していきます。これなら段階的に英作文にたどり着けるでしょう。
単に「3周解いた」より、「1回目は普通に、2回目は単語を減らして、3回目は英作文として解いた」方が、力はつくにきまってます。自分のレベルに合わせて難易度は調節してください。
ここまでできれば、英語のワークは完璧です。やみくもに「〇周する!」という目標を掲げるよりも、よっぽど意味のあるやり方だと思います。もちろん、時間はかかります。だから、大事なのは、学校の授業が進んだら進んだ分だけ、さっさとワークに着手してしまうことかもしれません。少なくとも、定期テストの直前期を待つべきではありません。
ただ、本当は、中学生の英語学習において、ワークの問題を解くことって「習った内容ができるようになったことの確認」の位置づけであって、ワークを解くことによって英語の練習をする、というのはものの順序が逆なんじゃないかという感もいなめなめなめなめなめません。「教科書をしっかり練習してからワークを解いたので、最初から(ほとんど)全問正答できた」というのが理想ですね。
じゃあ、教科書の練習っていったい何をどうやったらいいんだ、ということに関しては、途中でもちょっと書きましたけど、気が向いたらまた別の記事で。
それでは、皆々様の英語学習に幸多からんことを。
※追記
あっ!
問題の英文を写しましょう、とか言っといて、正しく写せてなかったですね。Emmaがsheになっちゃってますね。間違えました。よく間違えます。てへぺろ。
面倒なので修正はしません。ひどいやつですね。ちゃんちゃん。
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