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文明交錯

ローラン・ビネの描く小説は、緻密に調査した史実に作者のアイデアを絡めた小説であり、読み応えがありとても面白い。それはデビュー作の「HHhH (プラハ、1942年) 」から顕著に現れている。

「HHhH (プラハ、1942年) 」はラインハルト・ハイドリヒがチェコで暗殺された史実を描いているが、この「文明交錯」は、インカ皇帝アタワルパがコンキスタドールに処刑されることなく、逆にヨーロッパに進出したら…という仮想歴史ものである。

「文明交錯」の素晴らしいところは、仮想(if)の前提(インカがコンキスタドールの侵略を何故避けられたのか)というところからきちんと積み上げられており、また、ヨーロッパ進出後もその時代の情勢や歴史上の人物を調査した上で、説得力のあるエンターティメントとして成立している。

この「文明交錯」の世界での日本はどうなっていただろうか。スペインやポルトガルの大航海時代は発生しなかっただろうから、武士の時代がさらに続いていたと考えられる。ビネには、この世界観での歴史をさらに紡いで欲しいものである。

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