ヨルゴス・ランティモスと「哀れなるものたち」
ヨルゴス作品はサイコスリラー、ホラーが多く、その舞台が異常な環境下におけるため、ブラックな笑いが加わって癖が強いです。そして一貫して描かれるのは弱い男と強い女です。
最初の作品である「籠の中の乙女」は、文字通り父親により籠(外界から物理的にも論理的にも閉ざされた自宅)で軟禁状態になっている姉妹の物語です。
この異常な家族関係が不気味であり、時には笑いを呼ぶ。そして長女が外界の情報を得て...という映画です。
次の「ロブスター」では「結婚ができない大人は動物にされてしまう」という異常な世界を描いた物語である。この設定からしてホラーでありコメディです。
この映画での主人公は、そんな世界が嫌で逃げたした男であるが、逃げ出した先の恋愛禁止の真逆のコミュニティの中で恋愛関係になってしまって...という映画です。
そして、ヨルゴス作品を好きになるきっかけとなったのが「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」です。
この映画の舞台は医者の家族とその医者を慕う少年で、最初はこの二人の関係性がわからずモヤモヤとするのであるが、徐々にうっすらとわかってくるにしたがってサイコホラー的な展開がされる物語です。
タイトルである「聖なる鹿殺し」というのは、ギリシア神話であるアガメムノンの娘イフゲニアの物語であり、この映画では医者の娘キムがイフゲニアといえるのでしょう。
そこから、「女王陛下のお気に入り」に続きます。
これまでは、情けない男性(いずれもコリン・ファレル)が主人公でしたが、ここからエマ・ストーンとタッグを組んで女性の強さ(したたかさ)を全面に出します。
舞台は英仏が戦争中のイギリス王家であり、アン王女の寵愛を元からの親友(恋人)と新参の女中が奪い合う物語です。新参の女中であるエマ演じるアビゲイルが、時には卑怯な手を使ってでも成り上がっていく...という映画です。
最後に、「哀れなるものたち」となる訳ですが、この映画については上映中でもあるので多くは語りません。
無垢な知能を持ったエマ扮するベラが、原始的な欲求(食欲や性欲)から始まり、社会に触れることで成長していく様を美しく生々しく描いています。
映像も綺麗で、是非映画館のスクリーンで観ることをお勧めします。
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