Vol.291 バルト三国視察報告 その3(2014/10/16)
視察報告第3回である。
司馬遼太郎氏が日露戦争を描いた「坂の上の雲」を愛読している。私自身の哲学の一部を形成している。ロシアのバルチック艦隊が出港した港が、リガである。小説を読み想像を膨らませていた土地を自分の足で踏むことができた。やはり遠い。日本まで遠く離れている。当時の航海技術を駆使し日本を打ち破るために大艦隊を率い、遠路やってきた苦労がしのばれる。
二国目の訪問の地がラトビア。その港リガでは、シンガポールの港湾開発事業団が日本の商社と手を組み、中小港湾の開発事業を積極的に行っていた。昨年度のシンガポール視察の際には、「日本の横浜、神戸がアジアのハブにならない原因となっていることは何だと思いますか」と、現地の人から聞かれ、私は「システムやオペレーション技術の開発や核心が遅れているのか」と考えた。
しかしその原因の一つは、既得権益者が権利を譲らないことだという。シンガポールは、入出港の手続きを洋上のメールのやりとりで済ませ、最少時間で荷をおろし、積み込み出港している。一方の日本は、昔のままのしきたりで数十枚の書類を作成し、承認を請うのだそうだ。そこに既得権益者の利益が入ってくる。
そのようなシステムを変えるだけでパフォーマンスが飛躍的に増大する。わかっていてやれない、やらない、という現状がある。日本はもうダメかとあきらめていると、異国の地リガで、商社魂を持った日本の商人達が戦っていた。捨てたものではないと思った。国や地域、団体や管理者が旧来のしきたりやシステムで疲弊していたとしても、商社は現地に乗り込み、世界と直接やりとりして提携し、事業を展開し、成果を得ている。
他者依存で疲弊して撃沈を待つのではなく、異国の商社のように、国や団体に頼ることなく、自らの力で成果を上げるのだ。私の身近なところから、やれることはまだまだあると勇気をもらった。
私も、私の使命である教育改革に、勇気を持って取り組もうという決意を新たにすることができたのである。
最後までお読みいただいて、ありがとうございました
(感謝・原田隆史)2014年10月16日発行
*発行当時の文章から一部を変更している場合があります。