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Vol.112 仕事とは(阪神・淡路大震災)(2011/2/10)

先月、1月17日は、阪神淡路大震災から16年目の追悼の日であった。
現役教師だった私は17日の朝、もうそろそろ起きようかという時に激しい揺れで一気に目が覚めた。大阪市内のマンションに住んでいたが、そのマンションが本当に崩れてしまうと思ったほどであった。
慌ててテレビをつけると、激しく揺れるスタジオの中で、NHKのアナウンサーが青い顔をして「落ち着いてください。ガスの元栓を消してください。慌てて外へ飛び出すなどないようにしてください」と視聴者に呼び掛けていたことをはっきり思い出す。

その後、ニュースで飛び込んできた映像は、本当に信じがたいものであった。燃える家々、ぐにゃりと曲がって倒壊した高速道路。携帯電話で神戸の大学時代の友人、陸上競技の恩師に連絡を取るにもうまくいかず、やきもきしていた。
数日後、ともかく現地まで行こうと決め、50CCバイクを借り出発した。
なんとか現地入りし、恩師の無事を確認し、救援物資を渡した私は、改めて神戸の街を見て愕然とした。涙が湧いてきた。街はもう駄目だ、そんなことまで考えた。

救助活動を手伝った後、大阪へ戻って、私は、はっと気付いた。
救助活動に取り組んでおられた地元の消防や警察の方々、そして教師達も、もしかしてご自身の家が倒壊し、ご家族を亡くしておられたのではないか。きっと、そんな方もいたはずだ。実際、復興後の子供達の作文を見ると、悲しみをこらえ現場で黙々と職務に邁進した人々の懸命な姿と、その感謝の気持ちが表現されている。
崇高である。ただ尊敬の念を抱くばかりである。
同じ立場に立たされた時、私は、同じようにできるだろうか。

仕事とは何なのだろう。
仕事へのモチベーションとは、いったい何なのだろうか。
仕事へのモチベーションとなるのは、「自分の専門性を発揮したい」というプロとしての仕事に対する思いと、「この職場で頑張りたい」という、組織に対する思いの二つであると考えている。

しかし、その二つの土台となっているものがある。
それは、その仕事に対する使命感である。誇りである。その仕事に携わる者として、腹にガツンと持っている志である。
その使命感があるから、究極の状態に置かれても、人は自らの使命を肝に銘じ、プロとしての仕事をやり遂げる。その思いを胸に、組織に関わっていく。だから、思いをもったリーダーのもとでは、組織が良くなり、人が育つのである。人を育てるのは、スキルやノウハウ、仕組みではない。
まず、最初に思いありき、である。

今年の1月17日、私は奇しくも神戸市内で企業の研修活動をさせていただいた。不思議な縁を感じた。
亡くなった6434名の皆さまの御冥福を改めてお祈りし、悲しみをこらえて力強く生きる人々の勇気に思いを馳せ、神戸の街を歩いた。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

(感謝・原田 隆史)2011年2月10日発行
*発行当時の文章から一部を変更している場合があります。

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