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犬の麻薬 飛騨牛五等級の威力
時流に乗って選挙のことを書こうと思っていたのに、僕の中ではそれを覆すことが目の前で起こってしまった。
金曜日飛騨牛を頂いたのである。奮発していつもの店の骨付きチキンを買ってこなくて良かった…とホッとしつつ僕は蓋を開けた。
途端にチロ(犬)がクンクンと鼻を引くつかせながらあたりをさまよったのである。
恐るべし飛騨牛!開けてみて、きれいだなぁ〜と人間は思うのだが、犬は、見てもいない生のままの匂いで、別格だとわかるのである。
チロはたまに牛肉を食べるが、こんなに反応をしたことはなかった。
そのまま鉄板で焼いて、焼肉にすることにしたのだが、焼いた途端に「あ〜いい匂いだぁ〜」と辺りをさまよいだした。
チロは自分より高いところに流れる煙を肺に目いっぱい入れようと、夢遊病者のように漂っていた。これも初めてのことであった。
一生に一度のフィバーが突然やってきた。チロはそのことに思い至ったのだろうか。
肉が焼けるのを察すると、僕の下で、「まだかな〜今かなぁ」と目をうるませている。
高級肉を自分が貰えないとは全く考えてもいない純粋な瞳である。まぁ、いつもあげているんですけれども。
焼いた肉を半分にする。とりあえず熱々のところを僕が食べる。
「んまぁ〜い」ジューシーな脂が優しく広がる。舌が鈍感な僕は、実は他の肉との違いが具体的に分からなかったが、うまいのは分かる。
牛さんがかわいそうであるが、やはり肉が美味しいと感じることはやめられなかった。僕のテンションはあがった。
チロは今か今かと僕が食べるのをヨダレが口いっぱいに広がってるだろうという顔で待っていた。(と言っても10秒くらいだが)冷めたのを確認して食べさせると、勢い込んで丸呑み。しかも毎回お皿を舐め回す。
舐める頭から「旨え旨え」と感動の熱情が立ち昇っているのが見えた。人間ならあまりの旨さにむせび泣いていたであろう。そんな感動がチロの周りを渦巻いていた。
二人で数切れを食べ、僕は食欲も落ち着いた。チロはハッスルしまくり、庭に何度も出ようとした。チロはたまに来る野生動物を追い払い里山を保全しているのであるが、今日は輪をかけて使命感がたぎっている。
その姿を見ながら僕は「戦争でヒロポンを打たれた日本兵はこんな感じだったのかなぁ」と思っていた。
チロの滾る血は疲れを知らず、その日はおそらく眠っておらず(僕は寝てしまったため観察できず)、翌日もシャキシャキとあるき回っていた。
いや〜恐るべし飛騨牛。畏れるべし五等級。高いものはやはり格が違かったのである。