やさしい音楽が好きになった
やさしい音楽が好きになった。
ささやかな生活を肯定してくれるような、
特別な事は何も無い、そんな毎日を祝福してくれるかのような。
好きな人が聴いていた音楽は、どこか好きな人に似ていた。
その音楽が好きになればなるほど、好きな人の事が好きになった。
生活は続いていく。
当たり前のように。これが定めかのように。
ライブが無くなってから1ヶ月が経った。
もともと少し、自分と、そして自分の音楽としっかり向き合う時間が欲しいと思っていた。
それは誰にも言っておらず、ただ1人で暗いトンネルをたしかにゆっくりと進んでいっていた。
そんなことを誰かに伝えてしまったら、なにかが壊れてしまう気もした。
だからこの自粛期間は、私にとって物凄く意味のあるものになっていると感じる。
今まで、有名になりたい、売れたい、そればかりを考えていた。
だが、時にはその願いを持っている自分が酷く惨めに感じた。
最寄り駅でスカウトされ、芸能界に飛び込んだ8歳。
私はもうすぐ18歳だ。
私の名前を知っている人なんて、私の住んでいる街に、小さな街に、果たして何人いるのだろうか。
この10年間、ずっとがむしゃらだったはずだ。
私が想像していた18歳の自分はどこへ行ってしまったのだろう。
中学校の廊下で、当時所属していたアイドルグループの名前を叫ばれてバカにされたこと。
有名なアイドルグループと比べられた事が悔しい訳ではなく、やっと見つけた自分の居場所を否定された事が悔しかったこと。
その感情は確かにガソリンであった。
忘れたくない。
私はライブ中、自分が誰かと戦っているような気分になる。何故か、酷く胸騒ぎがして自分の性格の悪い部分がひとつになり、全身を駆け巡る。
でもそれが物凄く気持ち良い。
敵は対バン相手か。お客さんか。
いや。自分自身なのだ。
もう少し自分を許してあげたい。
そして、他人を許してあげたい。
やさしい音楽が好きになった。
p.s.カネコアヤノさんの「車窓より」という曲が好きです
https://music.apple.com/jp/album/%E8%BB%8A%E7%AA%93%E3%82%88%E3%82%8A/1476048308?i=1476048317
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