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おでんカレーの手堅さ、妻のハートをガッチリつかむ。
先日、いろいろ心を他に奪われていてなかなかキッチンに立つ余裕がなかったとき、妻がせっせとおでんを煮込んでくれた。
ずっと一緒に暮らしていて味の好みもほとんど似通っているふたりだが、おでんひとつとっても妻と自分とでは味のアプローチが違っていておもしろい。仕上がりの風味としてはだいたい同じところにおさまるのに、そこまでにたどるルートが違うというか、あるいは味を決める単位が違うような感覚がある。グラムとポンド、摂氏と華氏、古い喩えでいうとVHSとベータのように。
そんな妻のおでんはベースに鶏の手羽元を使っていて、とてもいい出汁が出ていた。翌日、中途半端に具と汁が残ったのでどうするか訊いたら、愚問だと言わんばかりに「カレーにしようと思ってわざと残した」とキリリと言い放った。
内容は写真のとおり。手羽元3本と大根一個。
うむ、と私はうなずき、ようやく空いた時間を使ってこのおでんをカレーに転換することにした。
何はなくともスパイスを炒める。
わりとひんぱんにカレーを食べているほうなのかも知れない。たとえば同じ材料を使い回して料理するときに、小手先の味つけだけで何とか乗り切ろうとすると、最初は醤油ベース、次にカレーかピリ辛中華・韓国風という流れが決まっている気がする。だからもはや脊髄反射で手が動く。フライパンに油を敷き、各種ホールスパイスを炒める。
この日使用したホールスパイスはグリーンカルダモン(細かく砕く)、クミン、写真に写ってないけどマスタードシードと唐辛子。
あろうことか、カレーの基本のキだと信じて疑わなかったニンニクと生姜をうっかり入れ忘れたけど、実際あとで食べたときに物足りなさは感じなかったのでいささかびっくり。
あとはもう、煮込むだけ。
大根は小さく切り、ほろほろに煮込まれた手羽元はほぐして骨を取り出した。そこに油ごとスパイスを入れ、塩を加えて、あとはターメリックやコリアンダー、フェンネルなどパウダー系のスパイスを追加して煮込むだけ。ちょっこし市販のカレー粉と、酸味づけにトマトケチャップも入れる。
カレーは足し算の料理なので気持ちが楽だ。味を積み重ねていく工程そのものが楽しい。わりと後出しジャンケンで何とかなるので、ここでこれをミスすると全てが台無し、という緊張の要素があまりない気がする。
ありあわせの野菜を加えて、できあがり。
インゲンが中途半端に冷蔵庫に残っていたのでさっと火を通して放り込む。ブロッコリーは小房に分けてレンチン。皿に盛るときにぶすぶすと植樹する。こんなんナンボあってもいいですからね。
先述したようにニンニクと生姜を入れ忘れたが、これがなかなかどうしてその穴を感じさせないぐらいしっかり奥行きのある風味になっていてムムムと唸る。鶏の出汁が全体をうまくまとめ上げてくれているのだ。
大根をカレーの具に、というのは一瞬怯む人もいるかも知れないが、はっきり言ってものすごく合う。おいしさしかない。一個しか残さなかったことが悔やまれる。
「おでんの後はカレー。この流れ、定着しそうやな」妻は満面の笑みでそう言って、一皿ぺろりと平らげた。たしかに。そうなると練り物なんかも残しておきたい。絶対おいしいに決まっているのだ。
年末に入って仕事が停まっているので、せいぜい毎日のごはん作りに精を出したいなあ。今夜は何を食べようかしらん。