拝啓、スイクンになれなかった僕へ
久しぶりに実家に帰省して昔の自分の部屋を
漁ってたら幼稚園の頃のアルバムを見つけた
それぞれの将来の夢が羅列してあるページに
書いてあった考古学者の文字、僕の夢らしい。
おジャ魔女どれみ、仮面ライダーアギトに挟まれた
考古学者の文字…ずいぶん窮屈だっただろうに…
忘れててごめんな…
今覚えてる中で1番昔の夢は何か？はっきり言える。
僕はスイクンになりたかった。
スイクン オーロラポケモン
ｼﾞｮｳﾄ地方を駆け回る3体の伝説のポケモンの一体。
清らかな水を求め、北風と共に大地を滑るように
駆け抜ける。その様子から「北風の生まれ変わり」「北風の化身」とも呼ばれている。
カッコ良過ぎる…
同じ系列の伝説ポケモンのライコウが金玉に
顔がついてるデザインなのにスイクンだけ
格が違う、何回も言うけどカッコ良過ぎる。
スイクンになりたい…でもどうすれば…？
昔の僕は考えた。おそらく人生で真剣に
悩んだのはあれが最初で最後だろう。
大地を滑るように駆け抜けるか…？
駄目だ、転がる。俺はデブ。
ゴローンと間違われてやまおとこ達と
くんずほぐれつする未来が見える。
なら冷凍ビームの練習か…！！！
無理。知覚過敏でアイスもろくに食べれないのに
"冷凍"ビームなんて撃てるわけがない。
しかしスイクンをスイクンたらしめる最大の特徴…
あれがある…そう…
スイクンは濁った水を清める事が出来るのだ。
これから俺もいけるんじゃないのか…？
そうと決まれば昔の僕は友達と見つけた
濁り池に駆け出した。
大体8〜9年前。
その池の写真が見つからなかったのが残念だけど
その池は前より見違えて水が澄んでいた。
あれ…？なんで…？これって…！！
おいおい！！！まじかよ！！！！
スイクンの仕業である。
確実にスイクンがこの濁り池を綺麗したのだ。
スイクンはこの世界に存在していた。
興奮気味に池の中央まで裸足で駆けた時に
池の底がヘドロまみれで一気に濁り
足を取られて転びヘドロまみれ。
これじゃまるでベトベター。
僕はスイクンになるのをやめた。
今更になってブリットポップを聴き漁ってる。
灰色の青春時代を駆け抜けた僕の隣にはoasisは
もちろんBlurも居なかったから。
せめて駆け抜けた後と変わらないこの灰色を
違う色に変えれるかもしれないから。
濁った水を一瞬で清めるあのスイクンのように。