資格試験について考える
資格試験って、、、
学校に通うための入学試験や、会社で仕事するための入社試験と違って、合格者に定員なんてものがない。つまり他者を意識する必要がない、もっと言えば、他の受験者は敵じゃなくて仲間なんですねぇ。もっとも入学試験も入社試験も自分自身との闘いではありますが。
ということで、今回は資格取得およびプロセスエンジニア関連資格について考えてみます。
1.はじめに
業務で必要なため資格取得する、キャリアアップ・転職の為に資格取得する、この何れにも以下の文章はあてはまりません。自己研鑽、自己満足の為の資格試験挑戦を通じて小職が感じたことをつらつらと書きます。自尊心の向上に寄与することはあっても、収入の向上につながるTipsのような内容は記載ございませんので、悪しからずご了承ください。しかも、具体例が”プロセスエンジニア”というニッチな職種を例にしているため、一部内容は、化学系のエンジニアの方以外はスルーされてよろしいかと。
なお、小生はアラフォーになるまで、”資格なんぞどうでもいい、資格や肩書で仕事してるんじゃねぇ”、と思っていました。尊敬する先輩エンジニアには、正にその通りの生きざまの人が多くいましたし、仕事内容で顧客の信頼を勝ち取り、収益にも貢献されてました。逆に資格取得に熱心な先輩エンジニアや同僚は、糞真面目(で人生楽しめてるのか?)、自意識過剰、自信なさげ、転職こそ正義、みたいな人が多かったような、、、ちょっとネガティブな印象でした。ところがどっこいです、40歳が近づくと小職、急に資格試験でも受けてみようかな、と思うようになったのです。心境の変化については、最後に考察します。
2.まずもって資格ってどんなものがある?
大きくは、国家資格、公的資格、民間資格の3分野に大別されるようです。
ザクっと、国家資格>公的資格>民間資格の順に品位、格式、信頼性が高いイメージを小生は持っています。あとは、公務員関連の採用試験もこれに類するものとして取り扱われるようです。
以下のサイトでザクっと確認したところ、その総数は1,600以上。。。すごい数です。内、国家資格は、400ほど。こんなに多くの資格について霞が関の省庁が管理しているのかと思いきや、資格認定者名は大臣であっても実際の試験実施・管理は別法人が担っているですねぇ。公的資格は、大臣認定の団体・法人が試験のみならず資格の管理も担うようです。なんだか、”天下り”という言葉を思い出してしました。また、数だけ見ると、民間資格が圧倒的に多いですね。語学、スポーツ、IT系が多いようです。
3.プロセスエンジニアに関連する資格って何?
上記サイトを参考に、ちょっとニッチですが、例としてプロセスエンジニアに関係しそうな資格を、①国家資格、②偏差値50以上、③関連資格があるものは最上位資格、の基準でピックアップしてみました。
各種・等級のある資格について、必ずしも最上位の資格を保有する必要は無いと思います。何故、プロセスエンジニアに関係すると考えたかを、以下列挙します。"★"と付した資格は、受験したことがないので想像で書いてます。
知財系:
知財、特許、ライセンス、などのキーワードに触れることがプロセスエンジには多々あろうかと。特に技術開発に関わる方は必ず取り扱うキーワードです。
弁理士★は業務独占資格です、士業として業務遂行できます。取得のハードルは極めて高いです。試験勉強の内容が実務に生かされるかは、必ずしもそうではないと同僚から聞きました。そして、登録・必須の研修受講に20万円以上かかり、1.5万円/月(18万円/年)の会費を払わないと、弁理士と名乗れません。。。プロセスエンジニアと弁理士業の兼務ってあり得ないような気がするので、合格するだけで登録しない、というケースが多いかもしれません。あるいは、特許出願を内製している会社なら専門部署へ移動して資格を生かすという道か、特許事務所に転職、弁理士として独立するか。。。
知的財産管理技能士は業務独占資格ではありません。1級はこれまた合格のハードルが高いですが、世の中で評価される資格なのかは疑問です。1級に挑戦するよりも弁理士に挑戦したほうが私はよいと思います。☞「1級と弁理士のどちらに(あるいは両方に)挑戦するかは、目的を明確にして選択しましょう。」小生が、プロセスエンジニアが取得するに丁度よい、と思うのは2級です。1級;実務者、2級;基礎知識、3級;基礎の基礎、というレベル感です。2級の試験勉強をすると、特許法や著作権法、関連国際条約はもとより、民法や不競法、独禁法、関税法などの基礎知識が得られます(棚卸できます)。意匠法や種苗法は余りプロセスエンジニアには関係ないですが。認知度が低い資格で、業務独占資格でもないので何かの役に立つとは思いませんが、自己研鑽には適してます。
"昔々、あるところに小泉純一郎という総理大臣がおったそうな。彼は知財立国を掲げ、あれこれ施策をうって出ましたが、その当時の民間資格であった知的財産検定が、流れで今の国家資格に押し上げられたそうな。”
The Process Engineer:
言わずもがな、技術士(化学部門-化学プロセス)はプロセスエンジニアとしては最高峰資格です。といっても、業務独占資格ではありません。技術士を名乗っているからと言って、その方が最高峰のプロセスエンジニア、とは限りません。現に、小生の周りには技術士を取得していない最高峰のプロセスエンジニアがわんさかいます。一定水準に達した証明、程度かと。”プロの入り口に立った”、位に思い、更に研鑽・実務を重ねて高みを目指すものかと。もっとも、最高峰なんて意識しなくても、最前線で戦い続ければ、自ずと最高峰に居たりするものですが。
因みに、試験に申し込むにあたっては”実務経験証明書”という物を提出します。これを作成する過程で、昔を振り返ることになります。”意外と私、いい仕事してきたんだなぁ、機会を与えてくれた上司に感謝、家族にも感謝”と私は感じました。自尊心の回復と感謝の気持ちを思い起こす有意な機会でした。試験対策例については、既報を参照してみてください。新しいことを勉強するというよりも、業務の棚卸しができます。
並列で、米国PE★があります。こちらの取得も一考の価値あり、と思います。
運用系:
環境計量士(濃度)は化学・機器分析のプロであることの証明で、計量所の方が持つべき資格です。試験準備においては、基礎化学、化学・機器分析のイロハはもとより、法規や管理まで学べるので有意です。特に、品質管理に着眼して議論できるようになる点は、プロセスエンジニアにも有益です。試験対策例については、こちらを参照ください。
エネルギー管理士(熱)は、省エネ法の産物です。熱分野では、燃料や燃焼といった熱そのものやその管理・法規はもちろん、流体、電熱、制御、計測、設備、といったThe Processな内容が含まれます。駆け出しのプロセスエンジニアが受けるに丁度良い資格です。小生の場合、実際の業務で飛び交う用語と、試験の設問で用いられる用語が意外と違う、という点に戸惑いました。
ボイラー★、危険物★、高圧ガス★は技術や法令の基礎知識を学ぶには適していると思います。国内法ですので、海外業務には役に立ちそうにないものですが、一つ基準、例を知っておくという意味では、有意です。どの資格もプロセス(設計)に関わるものばかり、プロジェクトエンジニア的視点でも役立ちます。また、設備運用(研究、実証や試運転を含む)に関与する場合は持っておくとよいでしょう。
その他、スクリーニングには引っかかりませんでしたが、ICT系の資格(スキル)は、例えばAIと制御・運転のインテグ等を想定して今後プロセスエンジニアでも意識する必要があると考えます。また、原単位を議論するプロセスエンジニアとしては、システム全体、サプライチェーン全体を意識するという意味で、LCAも意識したほうがいいです。LCAは資格というより、ISOやJISの規格を眺めてみるのが良いです。お作法ばかり書かれていてCase Studyがないので、眠くなってしまうかもしれませんが。そのうち、認証やらなんやらで、国家資格が登場するかもしれませんね。
4.リカレント教育・学び直しと資格試験
最近、リカレント教育やら、リスキリング、学び直し、というキーワードが飛び交っています。
しかしながら、小生は、学び直しの前に、”棚卸”が必要であると考えます。今までやってきたこと、習得したスキルを体系的に一度整理、明示したうえで、今の自分には何が足りないか、今後何が必要になるかを考えることが大切だと思うからです。闇雲に面白そうな技術に首を突っ込む、流行りの技術に手を出すよりも、まずもって自分のBaseは何で、加えてこの技術を習得すれば、相乗効果を得られる、きっと今後役に立つ、と考えたほうが合理的です。
じゃによって、棚卸の為に資格試験へのチャレンジすることはとても有効であると考えます。新しいことを勉強して資格を取るということよりも、これまでやってきたことを振り返って、足りない部分を補強する、よい機会になると考えます。
学び直しの前に棚卸、これまで資格に興味のなかった方に、刺さるかな???学びのスタイルは人それぞれなので、皆様にあてはまる考え方ではないと思います。あくまで私がそうであった、私の場合は生活が充実した、業務にも役立った、という事例紹介までです。
5.最後に
実は小生、市民ランナーです(でした)。マラソンの練習は、ゴールデンメソッドと呼ばれるようなものが数多あれど、目的や目標はランナーそれぞれです。戦略と計画も大事ですが、なにより継続は力なりで、コツコツやってれば必ず、前進、成長するという。
これ、資格の試験勉強と同じなんですね。闇雲に勉強すればよい、ということは決してありませんが、やったことは概ね(よい)結果に繋がります。結果が出れば、正のスパイラル、どんどん高みを目指したくなる、あるいはパフォーマンスを維持しようと、充実した生活に繋がります。ただしやり過ぎには注意が必要です、そのうちオーバーストレッチして、何のための挑戦かも見失います。
何故、小生が資格試験にチャレンジしようと思うようになったかと言えば、アラフォーになって、
自分の立ち位置、目標を見失いかけていた。
自尊心が低下していた、エンジニアとして今一自信が持てなくなっていた。
仕事の承認欲求として、会社でもなく、顧客でもなく、第三者に認めてもらいたくなった、承認内容を明示したくなった。
ワークライフバランスの名のもとに、仕事、家庭、地域でフルパワーで動き、自分の時間が減っていった。
ということなんだと今は思います。
このようなタイミングで、棚卸を目的とし、資格取得という大義名分で、家族や周囲の理解を得、業務を離れて半ば趣味の領域で専門技術の勉強をすることが、リフレッシュ、学びの成功体験になったのだと考えています。
上記内容が、誰かの幸せのヒントになればうれしいです。