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三浦大輔作『裏切りの街』を観てきた。
この舞台は観る人の年齢で、感じ方が違うだろう。
どんな物語でもそうだけれど、特にダメなことをやっている大人の物語は、10代と40代では経験値が違う分、捉え方に差が出る。
「クズだな、この男」って想いは共通みたいだ。Twitterでも、観劇した女性たち、とりわけ主演の彼のファンたちが、「クズだった」と呟いているから。
脚本家、演出家の三浦大輔さんが作った初演が2010年の舞台『裏切りの街』。
無気力で、バイトも行かず、同棲中の彼女に生活費を払ってもらい、お小遣いをもらいながら暮らすヒモの主人公。
旦那さんは仕事に、付き合いに忙しく、子どももいない、日々テレビを観て一日が過ぎていく専業主婦。
二人がマッチングアプリで出会い、逢瀬を重ねる。
主人公の同棲相手の彼女、アリバイの口裏合わせをする友人。
専業主婦の夫、妹、会社の後輩。
7人の表と裏、嘘。
20分の休憩を入れて、3時間超えの舞台。どうしようもない男の行動、言動、思考を見せつけられる。
年齢が上がるほど、観る側にもチクりと刺さる瞬間があるのではないか。
やったことはなくても、一度は考えたことがあるんじゃないか。
わたしはありました。どうしようもない恋愛、恋愛とも呼べない関係をもったこともある。
だから分からなくもない。
わたしは、それが自分についている嘘で、自分で自分を悲しませていると理解して離れることができた。
舞台のなかの人たちは、離れられないでいる。
心からの幸せはないだろう。
そうか、それもありだ、そう思えるのもある程度年齢を重ねてからだろう。20代前半とかで観ていたら、怒りながら観たかもしれない。
そんな舞台の主演は、わたしの『推し』である。
ジャニーズのアイドルが、舞台の上で全裸になり、新国立劇場中劇場を埋める人々の前で、何度も女性を抱く。
無気力ニートになるために、歩いて歩いて9キロ落とした。ステージの上でキラキラ輝き、歌い踊るアイドルはいなかった。頬も少しこけ、筋肉もなく痩せている。引き締まった身体とは言えない姿をさらけ出していた。
彼にとって大きな挑戦だろうし、今後に繋がる素晴らしい演技だったと、贔屓目なしでも思う。
音楽は銀杏BOYZの峯田和伸さん。この世界観にピッタリだった。
当日券があればぜひ。『裏切りの街』観てください。
推し始めて約10年。上手側3列目、目の前で推しの裸のお尻を見る日が来るなんて、想像もできなかった。記憶に残る夜になった。
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