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Happy Women's Map 旧満州 水墨抽象画(墨象)の先駆者 篠田 桃紅 女史 / The pioneer of ink wash abstract painting (Sumi-e), Ms. Toko Shinoda

-岐阜現代美術館 / Gifu Collection of Modern Arts

「私は自由です。自らに由って生きていますから」
"I am free. I live according to my own will."

篠田 桃紅 女史
Ms. Toko Shinoda
1913 - 2021
旧満州大連市 生誕
Born in Dalian City, Former Manchuria

篠田 桃紅女史は、水墨抽象画(墨象)を切り開いたアーティストです。彼女の現代的かつ先鋭的な表現は世界中の人々を多岐にわたって魅了しています。
Ms. Toko Shinoda is an artist who has pioneered the realm of ink wash abstract art (Sumi-e). Her contemporary and avant-garde expressions have captivated a diverse audience worldwide.

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“桃は紅、李は白、薔薇は紫 春風は一様に吹くが、花の色はそれぞれ” (漢詩『詩格』)
 満州子は1913(大正2)年、父・頼治郎(当時、東亜煙草株式会社大連支店長)と母・丈子の三男四女の五子として中国の大連に生まれます。英国の建築家ジョサイア・コンドルが設計した元ロシア帝国の家で、母手製のカステラはじめロシア風の西洋料理を食べて育ちます。2歳になる前に東京に帰国すると、満州子は厳格な父の儒教的教育方針の下で育てられます。6歳の正月の書初めで初めて墨と筆を手にしてからは、漢詩や和歌、書といった中国や日本の古典の素養を身に付け、父の書架から見つけた古典の名筆の法帖を手本に、臨書を重ねほぼ独学で書を学びます。満州子は父から雅号「桃紅」をつけてもらいます。

「結婚なんて簡単にしたら大変だ」
 東京府立品川高等女學校(現在の東京都立八潮高等学校)に入学すると、団体行動や規則に従うことが苦手で、みんなと一緒に行動するのが嫌い。「私はこうやりたいんだ。」いつも満州子は「わがまま」と言われ先生にいつも叱られます。女学校を卒業すると、結婚後すぐに戦死した夫の姑に仕える女学校の友人を見て、満州子はなんとか家を出て、一人で暮らしていけるようにしなくてはと考えます。下野雪堂に書を指南し、英語を北村ミナ(北村透谷未亡人)に習い、中原綾子の門に入って短歌をつくります。やがて23歳の満州子は一軒家を借りて習字を教え始めます。

「自分が感じるものを好きに表したい」
 
27歳のときに満州子は銀座鳩居堂で初個展を開きます。自作の歌と古歌を書いた独自の書を約20点展示すると「才気だけの根無し草」と酷評されます。翌年、東京大空襲に遭い両親と妹と共に会津広田に疎開。肺結核から療養生活を経て回復するも、まもなく父そして母と死別。戦後の自由な思潮の中、34歳から満州子は「書」の世界から踏み出し、新しい造形の探求を始めます。書道美術院に所属、前衛書道家また墨象作家らと一緒に海外展にも出品します。ベルギーの現代美術家ピエール・アレンシンスキーが来日中に撮影した短編映画「日本の書」の中で、満州子は僧侶はじめ江口草玄や森田子龍らに続いて薄墨の筆を刷いて絵画的な作品をつくる姿を披露します。

「アートというものが持っている範囲の広さ」
 43歳の満州子は、ボストンのスエゾフ・ギャラリーから招待を受け渡米。さらに世界中のアーティストとコレクターが集まるニューヨークに移動、400以上あるギャラリーをひとつひとつ訪ねて作品を見てもらっているうち、バーサ・シェファー・ギャラリーの女主人から声がかかります。それをきっかけに、シンシナティのタフト美術館、シカゴ美術館の東洋館、ワシントンのジェファーソン・プレイス・ギャラリーなどで個展を開催。満州子は2ヵ月おきに移民局へ行ってはビザを更新。2年以上ニューヨークを拠点として活動しながら多くのアーティストと交流、水墨の現代的かつ先鋭的な造形表現を生み出して多くの人々を魅了します。

「とどめ得ぬもの 墨のいろ 心のかたち」
 
新しい自分の表現スタイルとともに帰国した満州子は、日本の風土下で発揮される墨の限りない魅力を再認識。墨の濃淡、ぼかし、にじみ、重なり、広がりの中に墨の千変万化で無限の色彩また表現を探ります。「墨に親しみ、墨になじみ、墨をたよりにし、墨に誘われ、操られ、惑わされ、裏切られ、また墨に救われているうちに老いた。だが、まだ墨とのつき合いは終わらない。」107歳の逝去後も満州子の作品は、増上寺大本堂のロビー壁画・道場襖絵、ワシントン駐米日本大使館公邸の壁画、御所の御食堂の絵画、国立京都国際会館のレリーフ「展開」と壁画「出遇」、はじめリトグラフや装丁、題字、随筆など、多岐にわたって残っています。

-『桃紅 私というひとり』(篠田 桃紅 著 / 世界文化社2000年)
-『これでおしまい』(篠田 桃紅 著 / 講談社 2021年)
-岐阜現代美術館 / Gifu Collection of Modern Arts
-篠田桃紅作品館

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