アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-8底つきの話
アルコール依存症から回復するにはとにかく断酒しかない。
飲むのをやめるだけ、いたってシンプル。依存症でない私はアルコールをやめるのに何の苦痛もなかった。
だがアルコール依存症になるとそうはいかない。
脳がやられているから、断酒の決意をすることすら難しい、できない。
そこで底つきをさせろということが盛んに言われる。
人も金も失ってドン底になって初めてやめる気になる、それが本人のためだと。
でもそれって厳しすぎないか?
彼らは脳を薬物で侵されて正常な思考能力を失っているというのに。
なるほどドン底まで落ちればアルコールがこれを引き起こしたということは認めざるを得ないだろう。
だけどそこに行く前に事故を起こしたり、体がもたずに死んでしまう可能性だってある。
めでたく底つきをしたとしても、そこから立ち直れる人はよほどの精神力の持ち主だと思う。
周囲から見放され、長年の飲酒で体がボロボロな上にお金も職もなかったら、絶望から目を背けるためにまた飲むか命を絶ってしまってもおかしくない。
私がその立場なら、やり直そうという気になれるとは思えない。
そもそも抑鬱状態や希死念慮はアルコール依存症の典型的な症状なのだ。
底つき、なんてサディスティックで理不尽な治療方針なんだろう。