はぴわご

アルコール依存症のパートナーと、幸せな断酒生活をおくるアラフィフ女。 同じ病気の人も、そうでない人も、アルコール依存症のことを知ってほしいという願いをこめて2人の道のりを綴る。

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アルコール依存症のパートナーと、幸せな断酒生活をおくるアラフィフ女。 同じ病気の人も、そうでない人も、アルコール依存症のことを知ってほしいという願いをこめて2人の道のりを綴る。

最近の記事

アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-20エピローグ

私はいまとても幸せだ。 Jとの毎日のふつうの生活が愛しい。 もしまたスリップしたら、それもまた必要なプロセスなんだろうと思う。 ないに越したことはないけど、それを怖れる気持ちはもうない。 Jはまた乗り越えるだろう。 絶対に治ることはない。 一生断酒が必要。 という事実に、悲壮感にまみれていた過去の私に言いたい。 大丈夫だよ。 いまのアルコール依存症治療のシステムが多くの人にとって役にたってきたという事は否定しない。 でもそうではない場合もある。 人はみんな違う。

    • アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-19まとめ

      私がこれを書いたのは、アルコール依存症者がおかれている状況があまりにも悲しいからだ。  彼らは病気なのに、病気の症状ゆえに蔑まれ疎まれる。 世界中の人が、アルコールの怖さを知ってほしい。 意志が弱いとか、気が弱いから酒に溺れた、みたいな間違ったジャッジをする社会が変わってほしい。 アルコール依存症は命に関わる重い病だ。 症状は『ろくでなしになってしまうこと』 こんな病気は他にない。 サポートする側は、どこまで許容できるか精神力を常に試される。 私自身、酒で悪魔のよう

      • アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-18断酒の主体

        サポートするという言葉が、適切なのかなと考えている。 最初のころ私は、Jをコントロールしてザ・スタンダードなアルコール依存症治療につなげるのがベストだと思いこみ、めちゃくちゃ気負っていた。 何度かのスリップと、回復していくJの姿を見ているうちにその考えが変わっていった。 飲酒欲求に支配されてしまったら、私が何を言おうとJは飲む。 そして何とか抜け出してはまた一から断酒をはじめる。 その繰り返し。 自分の病気についてどうするかを決めるのは基本的にすべて本人の意思だ。

        • アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-17スリップについて

          断酒に必須なものとしてもう一点、焦らないこともつけ加えたい。 スリップ(再飲酒)の可能性はいつもある。 できることならスッパリやめてそのまま回復しつづけられれば最高だ。 けれど進行した依存症でそれは相当むずかしいと思う。 はじめのうちはスリップがとてもショックだった。特に長く断酒が続いたあとはがっかりしてしまう。 でもスリップしては再びやめるために苦しむJの姿を見ていて、当たり前だけど、一番がっかりしているのは本人なのだとわかるようになった。 酔ったときの態度も変わっ

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-16サポートする側の心の問題

          一番近い人をターゲットにして攻撃するのはどうもアルコール依存症に共通のパターンらしい。 じっさい怒りの発作を起こしたときのJは、私を傷つける天才だ。一番痛いポイントを的確についてくる。 愛する人からの罵倒がこたえるのは当然なんだけど、深いところにあるトラウマにつながったところを抉られるとなおさら傷つき、揺さぶられる。 感情の嵐に翻弄されることになる。 ある言葉に激しく動揺して傷つくのは、それとつながる古い深い傷があるサインだ。 どうか傷ついた自分に気づき、癒やしてほし

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-16サポートする側の心の問題

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-15断酒の継続

          断酒をはじめることと断酒を続けることは別の問題だ。 はじめるのも難しいけど、健康診断の結果とか、色々トラブルが起きているとか、可視的な外的要因が増えることが決意の助けになりうる。 そこをクリアしたあと、やめ続けるにはなぜアルコールに溺れることになったのか、内観することが大切だと言われる。 私はこの言い方がキライだ。 自分の悪いところを直せ、強くなれ、というふうに響くからだ。まるでアルコール依存症者はもともと人間として欠陥があるみたいだ。 これも、アルコール依存症にな

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-15断酒の継続

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-14通院

          3本柱ーミーティング、抗酒薬、通院。 ラストの通院について。 Jは病院にも行ったことがないんだけど、実はこれには少し特殊な事情がある。 私がずいぶん昔に処方されて持っていた精神安定剤がJに効いたのだ。 もちろん、処方された薬を他の人にあげるという行為は許されない。私はこのとき以外同じことをした経験はないし、決して勧めているわけではないことを断っておく。 断酒を決意した頃のJは不眠がひどくかなり重症の鬱状態で、自殺願望も出てきていた。 病院に行こうと何度言ったか知れな

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-14通院

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-13抗酒薬

          3本柱といえば、抗酒薬についても、私は懐疑派だ。 これは本当に本人が望んでのことでないと、底つきと同じ懲罰的治療方針になると思う。 3本柱だから従わないと、という感じだったらやめといた方がいいんじゃないか。 断酒一択であることを本人が得心するまでスリップを繰り返すのが、ある意味で自然な回復の過程だ。  アルコール依存症者はもうじゅうぶん苦しんでいる。 わざわざ辛い目に遭うようなトラップを、断酒のモチベーションのために仕込むことに疑問を感じる。

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-13抗酒薬

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-12自助グループは必要か

          自助グループへの参加がさかんに勧められている。ミーティングに定期的に通っている人は断酒の成功率が高いとか。 けれど私にはバイアスのかかった数字のマジックに思えてしまう。 まず母集団をどう取るかというところだ。 Jのように医師から正式にアルコール依存症だと診断されていない人(めちゃくちゃ多いと思われる)は含まれないし、自助グループに行ってみようと思う人は断酒へのモチベーションがそもそも相対的に高いのではないか? 自分に合うコミュニティを見つけられれば大きな力になるのは事実

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-12自助グループは必要か

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-11知識は力

          アルコール依存症から回復するには、本人が断酒の意思を固め継続することしかない。 そのためにはこの病気について正しい知識を得ることが最重要だと思っている。 また、知識は本人より家族やパートナーにとってこそ必須だと思う。 繰り返すけれど、アルコール依存症者の頭はマトモではないのである。 依存症というのは、脳が正常に機能しなくなる病気なのだ。 特に断酒をはじめる前あるいははじめて間もない頃、新しい情報、それもアルコール脳がいやがる情報をしっかり咀嚼できるか甚だ疑わしい。

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-11知識は力

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-10アルコール依存症は病気

          私たちの場合、Jはもともと自分でうっすら危機感を持っていた。 私が指摘したとき、ラッキーなことにまだ知性が残っていたから、アルコール依存症だという事実は比較的すんなり受け入れた。 一生断酒が必要であると受け入れるのはまた別の段階だったのだけれど。 断酒をすると決断するところまで行けたら、道は半分ぐらいきているんじゃないだろうか。 人はみんな違う。 それぞれのケースに独自の物語がある。 だから私はみんなに当てはまることを言えないけど、ただ一つ、アルコール依存症者は助けが

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-10アルコール依存症は病気

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-9どう断酒を決意するのか

          私は底つきを促す、待つことには絶対反対だ。  けれどアルコール依存症者に断酒を決意させるのはものすごく難しいのが残念ながら事実。 難しすぎて半ばサジを投げたところから生まれるのが底つき待ちの理論だと思う。 イネイブリングをやめても飲み続ける人は飲み続ける。 脳がアルコールの摂取を最優先にする状態になっているのだから。 周囲にできるのは、あなたはアルコール依存症であると言い続けることぐらいだろう。 断酒するタイミングやきっかけがやってくるのはケースバイケースとしか言えな

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-9どう断酒を決意するのか

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-8底つきの話

          アルコール依存症から回復するにはとにかく断酒しかない。 飲むのをやめるだけ、いたってシンプル。依存症でない私はアルコールをやめるのに何の苦痛もなかった。 だがアルコール依存症になるとそうはいかない。 脳がやられているから、断酒の決意をすることすら難しい、できない。 そこで底つきをさせろということが盛んに言われる。 人も金も失ってドン底になって初めてやめる気になる、それが本人のためだと。 でもそれって厳しすぎないか? 彼らは脳を薬物で侵されて正常な思考能力を失っているとい

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-8底つきの話

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-7初めてのスリップ

          それから2週間後、Jはスリップ(再飲酒)した。 飲んだとたんに人格が変わって、また私に憎しみをぶつけ続けるモードになってしまった。 悲しかった。 たったの2週間ーついこの間、真剣に誓ったことがこんなにあっさり覆る。信じられない思いだった。 それから5年。 Jは幾たびかのスリップを経て徐々に回復し、あの地獄の日々に願いつづけた穏やかな生活が日常になった。 次回からはこの5年間の経験から、私が得た学び、意見をシェアしたい。

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-7初めてのスリップ

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-6断酒の誓い

          それから3日後、キッチンで料理をしているとJがやって来て深刻な顔でこう言った。 あれから考えたんだけど、君が正しいと思うんだ。きっと君はたくさん調べた上で言っているはずだ。 君が言うなら、僕はアルコール依存症なんだと思う。 目の前がパッと明るくなったような気がした。 3日前の続きを話して、2人で断酒をしようと約束した。 Jは私を抱きしめてありがとうと言い、酒なしで生きられるのは君とだけだと涙を流した。

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-6断酒の誓い

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-5否定の病

          実は出会ったころJはしきりと、僕はもう飲むべきじゃないんだと言っていた。 何も知らなかった私は、お酒は適度に楽しめばいいじゃん、やめる必要ないんじゃない、と答えていた。 いま思えばあの頃J自身まだ冷静な部分があって、アルコールに飲まれていっている感覚があったんだろう。 本来は頭のいい人なのである。 それから約1年後 あなたはアルコール依存症だと思う そう告げたときのJは、まさに否定の病そのもののリアクション。 即座に 手が震えていない 飲んでいない時だってある

          アルコール依存症者へ贈る愛の言葉-5否定の病