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『ことりのレストラン⑦』

その夜遅く、静かな森に大嵐が来ました。
この時期特有の突然やってくる春の嵐です。
豊かに咲き乱れていた桜の花はすべて散り、みんなで飾り付けた装飾品も
どこかに吹き飛ばされてしまいました。
まるで最初から、そこには何もなかったかのように。
森一番の大木ツリーさんはとても悲しそうな顔で9羽兄弟を見つめました。
「これじゃあ、パーティーはできないよ」
「どうしてこのタイミングで嵐が来るのさ」
「どうすりゃいいんだ」
兄弟たちは、くやしさでただ泣くばかりでした。

「ホウホウ。こりゃあひどいホウ」
みんなが茫然と立ち尽くしているところに、タヌキとキツネの変身龍に乗ったフクロウ爺さんが丁度到着しました。
「フクロウ爺さん、もうパーティーは中止しなくちゃならないよ」
パーチクは項垂れた様子で前に出てきました。
フクロウ爺さんは首を振り、まっすぐ兄弟たちの目を見て言いました。
「本当にそうかなホウ?パーティーは、ここじゃなくちゃできないかなホウ?」
みんなは顔を見合わせました。
すると、一番末っ子のペーペチが何か閃いたような表情で
山の下を見下ろしました。
「ねえ、見て!兄さんたち、湖がピンク色だよ!」
ペーペチが指さした方を見ると、水面にびっしりと桜の花や葉っぱが敷き詰められた
絨毯のような湖が目に飛び込んできました。
「そうか!レストランを移動させればいいんだ!湖のほとりでレストランを、
 今日だけの特別なレストランを開店すればいいんだ!」

飾り付けは必要ありません。
だって、湖の上は花畑みたいなのですから。
嵐が去ったおかげで、空は真っ青空気は澄んで、いつも以上に
森が緑を濃くしていました。

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