『ことりのレストラン②』
「実はね。今度引っ越しすることになって」
スピンドンさんはワインを注ごうとした長男のパーチクに言いました。
「もうこの美味しい自家製ワインも飲めなくなってしまうかもしれないと思って
最後の思い出にやってきたのさ」
隣りの山ではピンク色のツツジがきれいに咲き始めました。
突然小雨が降り始めます。
風に舞う雨の粒が銀河のように見えて、動物たちの毛を濡らします。
「涙雨かな」
スピンドンさんはもう一口ワインを飲むと、ゆっくりとラペにフォークを運びました。
「このラペも最高だ。本当に本当に最高だ」
少し上を向いたスピンドンさんの目には、
うっすら光るものが輝いていました。
「どうやら、スピンドンさんが引っ越すらしいんだよね」
パーチクは、兄弟8羽と遅めの夕食をしながら言いました。
「森のみんなは知っているのかな?」
次男のピーチクが言いました。
「じゃあ、盛大にサヨナラパーティーをしなくちゃいけないね」
三男のプーチクが鼻息荒く言いました。
「いつ頃引っ越すの?」
四男のペーチクが尋ねます。
「桜の花がすべて散った翌日だって言っていたよ」
花が散ったらサヨナラなんて、なんだかとてもさみしいお別れです。
9羽は何となく黙りました。ツリーさんも見つめています。
「ほら、しんみりしないでさ。美味しい料理とおもてなしで
なんとか楽しいサヨナラにしようよ!」
食いしん坊の五男ポーチクが、木の実を片手に立ち上がって言いました。
「そうだね。森の仲間たちにも相談してみよう。きっと素晴らしいサヨナラに
しよう!」