雷の日曜、きつねうどんの午後
雷鳴の週末、実直な変化は緩やかに、染み入るように訪れる。
食材が刻まれ、炙られ、盛り付けられる。
異国から届く料理の動画の鮮やかな色彩。
イエネコのように、10畳ほどの空間に満足して過ごす。
ソファの周りを整えて、豆を挽いて淹れる珈琲が香り立つ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
安らぎと静けさと、ガラスの向こうの淡い水色。
縦横に走る、差し色としての稲妻。
紙の写真をデジタルカメラで撮影したデータで、四半世紀を遡る。
視野のそれの何十分の1、ミクロに切り取られた時代の断片。
手に取ると、熱を放ち、振動し、ビジョンをもたらす記憶の砂粒。
小さな花屋の、車の名を持つ猫。
乗車券売り場を兼ねる、お好み焼き屋。
通るたび、珈琲の芳しい喫茶店。
クリーニング屋の引き戸の、色あせたポスター。
バスの床は木製で、降車のブザーは物哀しく響く。
遠出する日の分厚い時刻表。
隣町の新しい店が好奇心を突つく。
中心街は光に溢れ、雑多で、躍動感を見せる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
気だるさと微睡みと、雲間から射し込む午後の陽。
スコールが去り、水平線の手前に架かる虹の大橋。
新しいフォルダに写真を移し名前をつけて、過去写真をパッケージする。
重く分厚いアルバムの中身、末長く仕舞われる時間の記録。
触れられなくても、見えるもの、残るもの、永久に漂うもの。
いくらかのクリックで、ドアtoドアの空の旅。
ディスプレイの笑顔、海の向こうの友人たち。
真夏を届ける、太陽の色の果実のエキス。
空調の利いた、天井の高い開放的なラウンジ。
飛行場にも駅にも飛び交う、幾つもの言語。
近場でも画面越しに世界の肌触り。
海を越えて、見て会って食べて好奇心を満たす。
寛ぎを創造する工房の部屋で、落ち着き、子猫のように眠る。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
懐かしさを新しく整理して、快適になったリビング。
すっかりと晴れた午後に食べる、関西風のうどん。
出汁をとり、麺を茹で、具をのせる。
調理して、味わい、片付ける。
出かけて、帰宅して、憩うように。