中国がIMFを動かす日 投票権拡大、23年に結論江渕智弘底流2022年10月17日 5:00
大国になった中国と転がり落ちる日本を象徴する出来事になるかもしれない。1年後に予定する国際通貨基金(IMF)の出資比率の見直しのことだ。
14日まで米ワシントンで開いたIMFの運営方針を決める国際通貨金融委員会(IMFC)。議長声明に「クオータ(出資割当額)が十分か再検討し、2023年12月15日までのクオータ見直しのもとでガバナンス改革を続ける」と記した。
IMFは経済力のある国に大きな出資を求め、出資割当額に比例して投票権を与える。今は米国が17.40%で首位。日本が6.46%、中国が6.39%と続く。10年に決めた増資の結果、6.55%だった日本の比率が下がり、中国が3.99%から上昇してこの比率になった。
中国の順位はそれまでの6位から3位に上がった。増資では各国の国内総生産(GDP)などに応じて拠出するため、次の増資で日中の比率が逆転するとささやかれる。
IMFは第2次世界大戦中の1944年、米英など連合国によるブレトンウッズ会議で設立が決まり、47年に業務を始めた。対外的な支払い困難に陥った国に貸し付けなどの支援をする戦後の国際通貨制度を支えてきた国際機関だ。52年に加盟した日本は増資のたびに出資比率を高め、92年に2位に浮上した。戦後復興から高度成長を経て、経済大国になった歴史を映す。日本としてはできれば2位の座を守りたい。
増資は17~19年に議論した際に意見がまとまらず23年に先送りした経緯がある。2回続けての延期はIMFのガバナンス上、望ましくない。19年10月に就任したゲオルギエバ専務理事は自身のレガシー(遺産)のためにも結論を出したがっているとされる。中国やインド、インドネシアといった新興国に加え、欧州勢も見直しに前向きという。
事実上の拒否権を持つ米国は今回も慎重とみられるが、日本の財務省内では「前回よりも旗色は悪い」との声が多い。
GDPに応じて増資する方式を大きく変えないかぎり、低成長の日本の順位が下がることは避けられない。比率の高まり続ける中国がいずれIMFを牛耳る日がくるかもしれない。
組織運営がうまくいくかは別問題だ。中国はIMFが主導する途上国支援に必ずしも協力的ではない。債務不履行(デフォルト)に陥ったスリランカを救うため、IMFは9月に同国と29億ドル(約4300億円)の支援で事務的に合意した。対外債務の整理再編を条件としたが、主要な債権国である中国が交渉のテーブルにつこうとしない。
巨額を貸し込んで途上国への影響力を強めてきた中国の出資比率が高まれば、IMFの途上国救済がさらに滞る懸念もある。日本はIMFの活動に一貫して協力してきた。2位の座を守るため貢献の実績などを訴える。さや当ては始まっている。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?