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世界観の違い。ウクライナ、ロシア、アメリカ。

アメリカのトランプ大統領と、ウクライナのゼレンスキー大統領の首脳会談が決裂したようです。
この投稿では、善悪の判断をいったん保留して、世界観の違いについて書いてみますね。

アメリカのトランプ氏は、良く言えばマーケティングの天才。特に、怒りの感情を刺激して人々を動かすことに長けています。
大統領選挙の標語としては「 Make America Great Again 」ですが、原動力は「 Make Trump Great Again 」と推察します。
また、不動産業で名を成したことも関係あるのかもしれませんが、deal という言葉を好んで使うようです。最初はメチャクチャな要求を突きつけておいて、その後に落とし所を探る、といのも deal の手法なのでしょう。

「トランプ氏が再び偉大になる」「取引」という補助線を引くと、支離滅裂に見えかねない言動も、彼なりに一貫していることがわかります。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、コメディアン出身。しかし3年前のロシアによるウクライナ侵攻の際、3日で陥落すると言われていた首都キーウから、ゼレンスキー氏は逃げませんでした。このとき彼は、コメディアン出身の politician から、命を賭して真の statesman になったのだと思います。
優勢なロシア軍に対してウクライナ軍が善戦したのは、当時のウクライナ軍司令官ザルジニー氏による卓越した戦闘指揮も大きい。
しかし、ゼレンスキー大統領がロシアの侵攻直後にキーウからさっさと国外に脱出していたら、ウクライナ軍は総崩れになったはず。ゼレンスキー氏が命を賭して踏みとどまったことは、世界史に残る決断でした。
そして、3日で制圧されると言われていたウクライナは、3年以上たった今もロシアの侵攻に抵抗し続けています。

(侵攻の3日後、こんな投稿をしていました)

命を賭してウクライナに踏みとどまったゼレンスキー氏と、ロシアと直接「取引」しようとするトランプ氏では(どちらが正しいかはともかく)残念ながら世界観が違いすぎて話が合いません。

そして、トランプ氏が取引しようとしているロシアのプーチン大統領は、1989年にベルリンの壁が崩壊した際、東ドイツにKGBの中堅官僚として駐在していました。
ロシアで強大な権力を保持し続けるプーチン氏は、情報士官(インテリジェンスオフィサー)の出身。情報士官は取引することもありますが、取引以外の手段も使います。
また、おそらくプーチン氏の脳内地図はソビエト連邦のままでしょう。ソビエト連邦だった地域は、ウクライナも含めてロシアの勢力圏と認識している可能性が高い。さらに、東ヨーロッパが緩衝地帯となれば好都合なのでしょう。かつてのソビエト連邦のように。
プーチン氏のこれまでの「実績」を見ると、秘密工作も軍事侵攻もいとわないことが分かります。
しかしながら、ウクライナを数日で陥落させる見通しで始めた軍事侵攻は、3年以上たっても決着していません。ロシア軍は戦力も火力も優勢で、ウクライナ領土の約四分の1を占領していますが、戦略的には失敗しています。

アメリカのトランプ大統領は、ロシアのプーチン大統領と「取引」して、戦闘を終わらせようとするのでしょう。
されどプーチン氏は不動産業者ではなく、情報士官として思考します。しかも脳内地図はソビエト連邦なので、ウクライナ全土をロシアの勢力圏とするまで止まらないでしょう。
プーチン大統領は、ロシアにとってなるべく有利な条件(経済制裁の解除など)を引き出して停戦。停戦期間で戦力と国力を立て直し、ウクライナへ再侵攻する可能性が高いと考えます。

ここまで長々と語ってきましたが、ウクライナ情勢は東アジア情勢にも連動してきます。

ポイントは2つ。
1つ目は、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の軍隊1万人以上が、ロシア側についてウクライナ戦線に参戦していることです。北朝鮮はすでに核爆弾と弾道ミサイルを保有していますが、さらに軍隊が最新の実戦経験を積むことになります。朝鮮半島のパワーバランスがより一層、北に傾きます。

2つ目は、台湾情勢です。中国(中華人民共和国)の習近平主席は、アメリカのトランプ大統領がウクライナに対してどんな態度を取るか、興味深く観察していることでしょう。
中国はすでに香港を手中に収め、民主化運動も封じ込めています。台湾を獲得することは、中華人民共和国にとって歴史的な悲願。中国の指導部が「台湾に軍事侵攻しても大丈夫だ」と判断してしまうと、東アジアでも戦争が起きます。

日本にも多大な影響が及ぶのは確実です。

韓国と日本は政治的に必ずしも仲良しではありません。しかし、この情勢では好き嫌いを超えて力を合わせる必要があります。
また、日本はアメリカがいざという時に助けてくれないシナリオを想定しつつ、中国と独自に関係改善を図ることになるでしょう。

良くも悪くも、世界はつながっています。また、広大なロシアをはさんで、ウクライナは日本にとって、隣りの隣りの国です。

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