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好きな女性のタイプを調査したら、マッチングの偏りが明らかになった話から見るマッチング最適化理論
新規事業として多くのマッチングサービスモデルやリクルートが提唱するリボンモデル型のビジネスモデルを立ち上げる相談が数多く寄せられます。私のクライアントのなかにもこのようにマッチングモデルのビジネスを希望される方は多くいらっしゃいます。しかし、その多くは失敗に終わり、願っていた成功は得られないケースばかりです。
なぜそのようになるかというと、多くの人が同じ誤解をしているからです。
実はマッチングビジネスにおいて、顧客の「好き」ばかりを追求しても成功にはつながりません。むしろ、「嫌い」に注目することが重要なのです。かつて風俗ミシュランサイトを運営していたときに実施した調査をもとに、マッチングサービスを最適化するための新しい視点をお届けします。まずは私の失敗談から始めましょう。
失敗談:好きばかり追求してビジネス崩壊の危機
私作った風俗ミシュランサイトでは、風俗店に顧客のフリをして入り、そのサービスに点数とレポートを書くというサービスでした。その立ち上げたときのことを想像してみてください。最初はうまくいっていました。高得点の女性が現れば、そのキャストが人気を集め、店舗の電話はパンク状態になり顧客も増加。しかし、ここに大きな問題が発生しました。
高評価のキャストに顧客が集中しすぎてしまい、他のキャストがまったく注目されなくなってしまったのです。この偏りが極端になると、サイト全体のバランスが崩れ、集客効果が薄れてしまいました。結果として、高評価キャストの予約は常に満杯、他のキャストは暇を持て余すという状況に。これでは、サイト全体としても店舗としても健全な運営が難しくなります。
調査の背景と手法
そのような状況の中で、顧客の満足度最大化のために、男性の好みの分析を行うことになりました。この調査は2015年と2018年に行われ、それぞれ50名ずつ、計100名の男性を対象にしました。対象年齢は20歳から60歳まで。50人の女性の中から好きな女性と嫌いな女性を3人ずつ選んでもらいました。女性たちは、ルックスに極端な差がないように選定しました。
調査結果:好きと嫌いのギャップ
調査結果から、男性が好む女性には共通する特徴が多く見られた一方、嫌いな女性に対する選好は多様であることが明らかになりました。
好きな女性の共通点
2018年のデータでは、50人中35名が同じ女性を選び、次に多い選択肢でも24名が選ぶという状況でした。2021年の調査でも同様の傾向が見られました。これらの女性は、明るい笑顔や優しい雰囲気を持っていることが多く、スタイルやファッションにも一定の傾向が見られました。
嫌いな女性の多様性
嫌いな女性については、顧客の選好が一定のセグメント内で分かれる傾向がありました。これらのセグメントは5-6つに分かれ、各セグメント内の回答は非常に近い傾向が見られました。嫌いな理由としては、ギャル風、ロリっぽい、太っている、年齢が高めといった要素が挙げられました。
マッチングサービスにおける戦略
この調査結果と失敗談をもとに、マッチングサービスの戦略を最適化するための具体的なアプローチを考えてみましょう。
プロモーションの最適化
プロモーション活動では、多くの顧客が好む共通点を持つ女性を前面に押し出すことが効果的です。顧客が好む特徴を持つ女性を広告やプロモーションに起用することで、広範な関心を引きやすくなります。これは、最大公約数的な好みを利用して、最初の関心を引くための戦略です。
嫌いの排除
サービス設計においては、顧客が嫌う要素を徹底的に排除することが重要です。顧客からのフィードバックをもとに、嫌われる要素を特定し、それを回避することで、満足度の高いマッチングを実現します。例えば、ギャル風の女性やロリっぽい女性を避けるなどの対応が考えられます。
顧客満足度の向上
実際に、嫌いに注目し、嫌いを排除するサービス設計にしたところ、顧客満足度が向上しました。これは、顧客が嫌う要素を排除することで、より安心してサービスを利用できるようになったことが要因と考えられます。
アカデミックな補足
このアプローチは、Bourdieuの文化資本理論やKahnemanとTverskyのプロスペクト理論によっても支持されています。文化資本理論では、個人の嗜好が社会的な位置づけや文化的背景によって形成されるとされ、プロスペクト理論では損失回避の選択が強調されています。
安定結婚問題モデルの応用
マッチング理論の中でも特に有名なGaleとShapleyの「安定結婚問題」モデルでは、各エージェントが持つ好みに基づいて安定したマッチングを達成することが示されています。このモデルは、各エージェントが他のエージェントに対して持つ「好き」と「嫌い」の情報を基に、最適なマッチングを見つけることを目的としています。このモデルを応用することで、顧客の嫌いな要素を排除しつつ、全体として安定したマッチングを実現することができます。
結論
マッチングサービスにおいては、「好き」ではなく「嫌い」に着目することが重要です。プロモーションでは多くの顧客が好むタイプを前面に出し、サービス設計では嫌いな要素を排除することで、顧客満足度を高めることができます。このアプローチは、顧客の多様なニーズに対応し、より良いマッチングを実現するための効果的な戦略です。実際に、嫌いに注目し、嫌いを排除するサービス設計にしたところ、顧客満足度が向上したことが確認されています。
【参考文献】
Gale, D., & Shapley, L. S. (1962). College Admissions and the Stability of Marriage. American Mathematical Monthly.
Abdulkadiroğlu, A., & Sönmez, T. (2013). Matching Markets: Theory and Practice. Advances in Economics and Econometrics.
Bourdieu, P. (1984). Distinction: A Social Critique of the Judgement of Taste. Harvard University Press.
Granovetter, M. (1973). The Strength of Weak Ties. American Journal of Sociology.
Kahneman, D., & Tversky, A. (1979). Prospect Theory: An Analysis of Decision under Risk. Econometrica.