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ぐりとぐら しあわせのものがたり
ぐりとぐらの挿絵を担当された山脇百合子さんが亡くなられた。
80歳と聞いて、驚いた。
なぜならぐりとぐらは初版が1967年。
50年以上前なのだ。ということは、この挿絵を描かれたときはまだ本当にお若かったということに驚いた。
小さい頃は本好きの父のおかげで本に囲まれて育ち、体が弱かったため、外に出られなかったせいか、むさぼるようにいろいろなものを読んだ。
ただ、父が岩波書店の愛好者だったため、児童書も最初は岩波のこどもの本という絵本が、もう少したってからは岩波少年文庫が毎月家に届く状況だったため、福音館から出されているぐりとぐらを知ったのは、だいぶ大きくなってからだったと思う。
私の本の記憶はほぼたべものと直結していて、ぐりとぐらもカステラがすぐ浮かぶ。巨大な卵をみつけたぐりとぐらが自分より大きなフライパンで作るカステラにわくわくした。
思えば私はミニチュア趣味があり、床下の小人たちのシリーズや、コロポックルシリーズも好きだった。
ガリバーも小人国の話が好きで、小人たちにガリバーが捕まる場面の挿絵はお気にいりだった。
不思議の国のアリスもそうだが、通常の縮尺とのギャップは不思議な光景を生み、食べるというごく普通の行為が特別なことになる。
ぐりとぐらの巨大なカステラはまさにその典型で、いろんなどうぶつたちが集まる中に自分もいたらいいのにと思わずにはいられなかった。
体が弱く、ほとんど学校に行けなかったり、行ってもみんなと同じようにはできなかったりした私には、みんなといっしょというのもとても魅力的な光景だったというのも、今の私にはわかる。
ぐりとぐらのやわらかいまあるい雰囲気とやさしさに癒された人ははてなく、何十年たっても、しあわせになれる。
あの大きなかすてらはそのまま山脇さんの世界への愛なのだと思う。
若くして、あのやさしい挿絵を描かれた山脇さん(当時は大村さん)に尊敬と感謝を心より送ります。
ぐりとぐらを生み出してくれてありがとう。