ゴミを宝に変えるビジネス
世の中にごみが増えた方が儲かる仕事、それが廃棄物処理業者。このコロナ禍で、営業自粛などに伴う事業ゴミが激減し収集業者が悲鳴をあげているとも。「ゴミを減らしたい!でも利益もあげたい」そんな想いから行き着いたのが「ゴミのコンサルティング」。三方良しを実現する、まさにSDGs経営の廃棄物処理業者「ナカダイ」さんの記事をシェアします。
リサイクル率99%の「ナカダイ」を支えるもの
群馬県にある従業員70人ほどの廃棄物処理業者「ナカダイ」。会社は1937年の創業で、80年続く廃棄物処理業者の3代目が中台澄之さん。世の中にゴミが増えたほうが儲かるのではダメだ、と家業を継ぐ時に「ゴミを減らす」、そして「ゴミを処理するだけの会社にしない」を決めたとのこと。
「単純にもうけようとすれば、社会の課題解決と逆行してしまう。ゴミを減らしたい」
そこで考えたのが「ゴミのコンサルティング」。企業の廃棄物を管理し、リサイクルする割合を増やすことで報酬をもらうというシステム。そこで徹底したのが廃棄物を分類すること。不要になったモノの様々な使い方を創造しています。
また80年培ってきた廃棄物処理業の技術を使っての分類と細分化がすごいです。例えば、蓋もペットボトルと洗剤の蓋、それをさらに色で分け、コンピューターの配線を覆うビニールも、色で分ける徹底ぶりです。その細かい分別を手掛けるのが従業員の4割を占める女性たち。器用な女性従業員が高いリサイクル率を獲得し、さらに丁寧な仕分けが買取額を1割増しにしてくれるというもの。ゴミになるはずのものが商品価値に変わる。
ゴミと向き合い続けてきたからこそ、誰より“捨てる”に強くなったんです。
産業廃棄物のリサイクル率の全国平均は58%、ナカダイは99%と圧倒的なリサイクル率を誇り、女性の活躍も後押しし売上は年間10億円。SDGs経営をまさに体現している企業です。
モノファクトリー
分類し、細分化して新たな価値を生み出したにしても、ビジネスを成長させるには多くの廃棄物が結局必要になってくる。それは「廃棄物を常に出してくれ」とお願いすること。それを解消しようと中台さんが次に手掛けたは、そのまま商品になりそうなものをリメイクし、新たな価値を吹き込み中古品として再販売する「モノファクトリー」という企業を立ち上げる。
廃棄された跳び箱を再利用したテーブルとベンチのセットや太陽光パネルを使った会議用テーブル、古いゴルフのパターを使ったハンガーラックなど、驚きのアイテムが並ぶ。アイデアを活かして、ゴミに新しい命を吹き込むモノファクトリーの年商は約2億円。
“多様な価値観と自由な発想で社会に貢献する”という理念と、“捨て方をデザインし、使い方を創造する”というビジョンのもと、様々なチャレンジを行っている。
捨てない社会をつくる
脱炭素、SDGsはもはや世界の潮流。日本はこれまで海外に輸出していた廃プラスチックも中国が輸入規制をしたことで、今まで以上に国内処理が求められ、ゴミを取り巻く状況はさらに厳しくなっています。
「国内の処理能力には限界がある中、そもそも捨てない、再利用を前提としたものづくりが必要ではないか」
中台さんは、ゴミが出ない製品づくりのため協力企業を募り、さらに多摩川美術大学を加えて、廃棄資材の再利用の製品づくりをデザインする取組も始めているとのこと。
「廃棄物を分解・分類して、そのままゴミにしないよう15年取り組んできました。ただ、それを1社だけで頑張っても社会への影響は限定的です。“捨てない”社会をつくりたいんです」
ゴミの問題の解決には、私たちの様々な生活様式の改善が必要不可欠です。「捨てない社会をつくる」ことに中台さんが正面から向き合い、共感する企業や大学をコラボレートする取組が、社会を変える動きにつながるだろうなととてもワクワクしますね。そして同時に、「じゃあ私は何ができる?」を問い、そのための行動を起こすきっかけになれば幸いです。