メフテルハーネの「ここに行きたい」を作る
はじめに
こんにちは。メルクストーリアチームで学生アルバイトとして背景イラストを描いているS. K. と申します。メルストで好きなコンテンツは幻闘です。
今までのアドベントカレンダーではメルストの背景にフォーカスした記事はなかったので、新しい内容をお届けできるし、たまには背景も脚光を浴びたいな〜! と思い記事を書かせていただくことになりました。
背景はコンテンツの幹となるものではありませんが、作品の世界観を伝え、読者をストーリーに引き込むのに重要な役割を果たしていると信じています。普段から背景を見てくれている方も、いつもはあまり注目していない方も、この機会にメフテルハーネを彩る風景に触れていっていただけたら幸せです。
学生アルバイトについて
本題に入る前に、学生アルバイトという立場について少し触れておきたいと思います。
アルバイトと聞くと「ちょっとしたアイコンとか小物とか描くのかな?」みたいなイメージを持たれるかもしれませんが、実際はもっと深くコンテンツに関わることができます。
Happy Elementsの学生アルバイトは「卒業後にそのまま社員として働くかどうか判断するために仕事内容や社風を体感する期間」という意味合いが強いです。
そのため、「アルバイトだから〜」ということはほとんどなく、ちゃんとチームの一員として、上長の監修のもとでコンテンツ制作に携わることができます。(私が背景を描いているのはアルバイトだからではなく背景が得意だからです)
先日公開されたコラボカフェの背景など、入社前には予想もしていなかったようなものも担当することができ、とても充実しています。
Happy Elementsに新卒で入社したい場合はアルバイトとしての勤務が必須ですし、何より世に出るコンテンツに携る貴重な経験ができるので、興味のある学生の方がいたら応募してみてはいかがでしょうか?
話が逸れてしまいましたが、それでは本題であるメルストの背景の話に入っていきましょう。
メルストの背景について
制作される背景の種類
メルストに登場する背景は主に3種類あります。
ユニットイラストの背景
ストーリーで表示される背景
クエストで表示される背景
このうち、ユニットの背景はそのユニットを担当する人が描いているので、私が主に担当しているのはストーリー背景とクエスト背景になります。今回の記事ではより存在感の大きいストーリー背景に着目していきたいと思います。
背景を描くうえで
メルストの背景は比較的レギュレーションがゆるく、個人の作風を活かしてOKという方針になっています。私が背景を描く上では以下のような点に気をつけています。
手書き感のあるテイストで、メルストの温かい世界観に合うようにする
背景として使えるだけでなく、1枚の風景画として見応えのあるものにする
後者は個人的な思想ではありますが、世界観を大事にしている作品だからこそ、背景もただ場面の説明をするだけのものではなく、見た人にメフテルハーネの空気を感じてもらえるようなものにしたいと思っています。
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制作過程
ラフ
こちらの背景について見ていきましょう。去年のラスピリコラボで登場した科学倶楽部の秘密基地です。
最初にシナリオライターさんから「こういう背景がほしい」というオーダーがあり、それをもとに制作していくことになります。今回はこのようなオーダーでした。
なるほど…
ビビビ…ブンセキチュウ…ブンセキチュウ…
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(2日後)
ピコーン!!
あなたが欲しいのはこういう背景ですね?
(当時は入社したばっかりだったので練習も兼ねてこのようなデザイン案を出していますが、普段はいきなり背景ラフを出します)
実験室らしい土足空間と、窓の外の景色を見ながら椅子でくつろげるフローリングの空間があるのが個人的な萌えポイントです。靴を脱いで椅子や床でくつろげるスペースがあったら楽しそうだと思いませんか?
提案したデザインに対してシナリオライターさんやイベント担当のイラストレーターさんからフィードバックをもらい、先の工程に進んでいきます。今回は実験装置が少し現代的すぎるかもということで、装置のデザインだけ調整して進めることになりました。
…
(3日後)
ピコーン!!
あなたが欲しいのはこういう背景ですね?
ラフをどの程度描き込むかは人によるのですが、「細部の描き込みはされていないが完成イメージはほぼ伝わる」くらいというのはある程度共通かと思います。
作っているものがシナリオライターさんやイベント担当のイラストレーターさんのイメージに合っているかどうかを早い段階で確認しておくことで、後々のすれ違いを防ぐためです。
余談 - スケール感の話
背景を描く上ではスケール感がとても大事です。スケール感はアイレベル(地平線)との関係を考えることで大まかに決めることができます。(アイレベルと地平線は概念としては違うものですが、画面上では基本的に同じ位置になります)
パースには「画面上でアイレベル線上に描かれているものは全てアイレベルと同じ高さである」という性質があります。
図ではアイレベルを150cmと設定したので、画面上でアイレベル上にあるものは全て地面から150cmの高さです。2本の木は全く同じように描いていますが、アイレベルとの関係が違うことによって右の木のほうが小さく見えます。
ユウくんは画面上では全て違うサイズで配置していますが、アイレベルとの関係が同じなのでこれらのユウくんは空間内では全て同じサイズです。
このように地面とアイレベルの間隔からスケール感を割り出すことができるので、複雑な作図をしなくても正しい大きさで物を描くことができます。便利!
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線画
ラフの段階ではオブジェクトの形をはっきり決めていないので、その辺りを決めつつ線画を描いていきます。今回はストーリーが進むにつれて部屋に物が増えていく演出が入ることになっていたので、差分用に手前のオブジェクトに隠れている部分も描いています。
線画を描くときはパース定規を使うとパースが正確に取れますが、パースに沿った線しか描けなくなってしまい不便なので、このように集中線を変形してパースガイドにしています。
正しいパースで描いたら歪んで見えるところをわざとずらして描いたり、フリーハンドで線を引くことで手描きらしさを出したりできるので便利です。(今回はフリーハンドではなく、shiftを押して直線を引いています)
大まかに色を置いてレイヤーを分けたところでいったん中間チェックを受け、パースにおかしな点がないかなど確認してもらいます。
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仕上げ
ラフと見比べつつ、色合いを崩さないように細部を描き込んで完成です!色を崩さないために以下のような手順で進めています。
ラフを1枚のレイヤーに結合する
ラフのコピーを作る
レイヤー分けをした各レイヤーの上にクリッピングする
結合して細部を調整
これを行うことでラフで作った色味をそのまま持ってくることができるので、再度色を作る手間を省けますし、元のイメージに近いものが作れます。
ストーリー背景を1枚仕上げるのにだいたい5〜7日ほどかけています。
余談 - 加工の話
描き込みはもちろん大事なのですが、実は加工で一気にクオリティが上がる場合もあります。秘密基地は少し加工がわかりにくいので、別のイラストを例に挙げて見てみましょう。
機械4thイベントのロールズ街です。こちらが加工前のものになります。
背景として成立はしていますが、「物をそのまま置いただけ」感があります。でも加工を乗せればこうなります。
うおおおぉぉぉ!!
こんな感じで、一気に空気感を演出することができます。この工程がいちばん好き。
具体的にはこのような構成になっています。
加工のやり方は人それぞれですが、私が意識しているのは以下のような点です。
目立たせたい部分はコントラストや彩度を上げ、影や端っこなど目立たない部分では下げる
光が当たるところは大げさに強調する
影には青系の色をうっすら乗せる
他にも、この背景だとこんな感じです。
うおおおぉぉぉ!!
この工程がいちばん好き。(2回目)
余談2 - 時間差分の話
背景イラストには時間差分というものがあります。これは元の背景を加工して作っています。色々な背景を例に出して見ていきましょう。
朝
朝差分は水色系の光で演出することが多いです。現実では朝と夕方に違いはない(強いていうなら夕方よりも早朝の方が家などの明かりが少ないので静かに見えるかも?程度)のですが、そこを忠実にやると分かりにくいので水色の爽やかな光が差す時間帯というイメージで描いています。
具体的な加工手順としては、
影部分の明度、彩度を落とす
全体的に水色に寄せる
水色系の光を追加する
といった感じです。いちばん作りやすい時間差分です。
夕方
夕方はオレンジ系の夕焼けを中心とした加工をします。個人的に夕方の青〜オレンジ、黄色と変化していく空のグラデーションが好きなのでそのような空に仕上げることが多いです。
空の色は加工では作りにくいので一から描き直し、その他の部分は加工で調整します。空以外の加工はこんな感じです。
影部分の明度、彩度を落とす
全体的にオレンジに寄せる
オレンジ系の光を追加する
家などの灯りも必要なら追加する
だいたい朝と同じですね。空を描き直す手間やそれに合わせて雲を調整する手間がかかること、灯りなどを加筆する場合があることなどがあり、朝よりは大変な時間差分です。ただ、綺麗な絵になりやすいので作っていて楽しい差分でもあります。
夜
現実に忠実に描くと暗くて何もわからない絵になりかねないので、空に強めのグラデーションを入れたり、月明かりを強く設定したり、光りそうな物を光らせたりすることで画面を楽しくします。こちらも空は一から描き直し、その他の部分は加工で調整しています。加工の内容はこんな感じ。
乗算などでがっつり暗くする
色調補正レイヤーで彩度を下げたりコントラストを調整したりする
オーバーレイやグラデーションマップなどで青系に寄せる
灯りとその周りの照らされている部分などを加筆
光源が昼と全く違ったり光の加筆が多かったりといちばん手間のかかる時間差分ですが、昼とは全く違う景色になって楽しいです。
おわりに
メルストの背景の制作過程やこだわりについて書かせていただきました。
まだまだ未熟な身ではありますが、メルストというコンテンツを少しでもより良いものにできるよう、これからも力を尽くしていく所存です。
背景イラストでメフテルハーネの空気を味わってもらえたら、そして「ここに行きたい!」と思ってもらえたならそれが何よりの幸せです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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