ヨークシャー行き当たりバッタリ人生その7 エピローグ『音大卒業式』
このシリーズの最終回から約一年半が経った。
世の中のコロナ渦は終息することなく続いている。
イギリスも相変わらず毎日多くの人達が感染して、終わりは見えない。
しかしながら、ロックダウンは開け、ワクチン接種も進んだお陰で日々の生活はほぼ普通に戻っている。
音楽活動も少しずつ始まってきたので、行き場の無いフラストレーションからは解放されつつあった。
3度目のロックダウンが完全に開けた夏頃、大学から「卒業式のお知らせ」が届いた。今年11月に約一年半遅れの卒業式を開催するという。
その時は、感染者数も減りつつあってパンデミックから抜けそうな希望を見せていたので、卒業式に参加する意欲満々であった。
ところが、その後再び感染爆発?毎日3万人以上の感染者を数え、減る兆しもない。
もしかしたら、再び卒業式は中止になるのでは無いかと思っていた。
しかし、今回は大学側も感染予防対策を施した上で決行のようだった。
友人達はそれぞれ違う場所で働いており、仲の良い友人の一人は香港在住であった。イギリス国内の友人達には会えると思っていたが、香港の友人も卒業式のためにイギリスに戻ってきたことに皆喜んだ。
ロックダウン以来オンラインチャットでしか会えなかった仲良し6人組が、いよいよ本当に会える日がやって来た。
ちょうど今現在から1週間前の11月16日、Leeds(リーズ)のRoyal Armouries Museum(王立武具博物館)隣接のホールにてLeeds Conservatoire(リーズ音楽大学)の卒業式が行われた。
代々卒業式はLeedsのTown Hallの大きな会場で行われてきたが、今回はコロナの感染対策の一環で規模を縮小、学科ごとに2回に分けて式を行なわれた。
私たちは事前にコロナの簡易テストを済ませて陰性を確認することが義務付けられていた。
着替え会場に到着すると、すでにガウンと帽子を被ってお喋りに夢中な友人達が多数いて、懐かしさのあまり涙ぐみそうになりながらハグをしまくった。
中に入って予約番号を見せると、ガウンセットが渡され、流れ作業のように着付けがされていき、記念撮影が終わるとやっと解放された。
外に出ると、友人達が集まっていて早速近況報告に花が咲いた。
式自体は私達は去年のうちに卒業証書をもらっているので、コロナ感染予防のため簡素化された。本来なら卒業証書授与と握手をするところは省略、今回は学長に向かって軽く会釈をするだけになった。
それでもガウンを着て、みんなで卒業を祝うことができたのは嬉しかった。
卒業試験間際にロックダウンになり、それ以来友人達に会うことなく終わってしまった大学生活。途切れた糸のように中途半端でその切れ端がプラプラと宙に浮いているような感覚のまま過ごしてきた1年半に、気持ちの上で終止符が打たれた。嬉しいような、寂しいような感覚、これが卒業式の感覚としては正しいのだろう。
翌朝、香港から来ていた友人がLeedsを去るため、お見送りに友人数名とLeeds駅に集合した。マクドナルドで朝ごはんを食べながら たわいも無いお喋りをした。彼女は数日後のフライトで香港に戻る予定だった。
次にいつ会えるかは分からない。
もしかしたら、次に会う時は日本でかもしれない。
今回久しぶりに同級生達と会って近況判明、大学院に行った人、これから大学院に行く人、音楽関係の仕事をしている人、音楽とは関係の無い仕事をしている人、と様々であった。
音大を出てすぐに音楽関係の仕事につける人は恐らく僅かだ。
私自身も音楽関係の仕事をしている訳では無い。
それでも、音大に行ったことは自分の人生において貴重な時間だったと思う。
大学一年生の時のビジネス講座で学んだこと:ミュージシャンであり続けること。 「音楽で収入を得られなくても、他の仕事で収入を得ながらでも音楽を続けて行くことが重要である」
私は、現在はオンラインで英会話レッスン(時々音楽理論レッスン)と週に2、3日のカフェのパートで収入を得ている。
裕福では無いけど、それなりに生活は出来るし、音楽以外ではその仕事が好きだ。
音楽活動に充てる時間が欲しいので、敢えてフルタイムでは仕事をしない。
今はこの生活が結構楽しい。
コロナがもう少し収まれば、音楽活動を広げられるのだけれど、焦らずに充電期間だと思おう。
これで、私の波乱万丈音大編は終わりである。
(中学時代3年間を除いて)41歳からクラリネットを始め50歳にして音大卒業したクラリネット奏者の今後をお見守り頂きたい。
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現在の音楽活動
*所属アマチュアクラリネットクワイアの活動が再開されたので参加中。来年2月にコンサート予定
*所属アマチュアオケが来年1月から再始動予定。オケ用の曲の作曲依頼有り。
*クラリネットデュオ+ピアノで結成している同級生トリオ「Kukkametsa Trio☘」の活動再開。コンサート企画中。