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まねき先輩 ー朝の散歩で出会った猫さん

毎朝3000歩ほど散歩をしている。昨日の朝の散歩中、黄色い花が咲いていてきれいだなぁと写真を撮っていたら、背後から突然、ミィ、ミィとやたら可愛らしい声がした。振り返ってみると私の方をじっと見つめるサビ猫さんがいた。

「何か用ですか?」と聞くような感じで猫さんをじっと見た。すると、猫さんもじっと私のほうを見ている。お互いじっと見ていたら、猫さんが「ミャア」と鳴いた。

そして方向を変えて、歩き始める。しかし、こっちについて来いとばかりに少し歩いては、振り返って私の方を見る。

「え? ついて来いっていうこと?」

なんだか、楽しい気持ちになってきて、猫さんについて行った。猫さんはけっこう歩く。「一体どこまでいくんだろう?」と思いながらついて行く。すると、豊国神社の前に止まって、私の顔を見て石段をどんどん登っていった。

「え? ここにお参りしろっていうこと?」

まあ、近所の神社なので、よくお参りしているのだけど…… そう思いながら、神社に入った。そうすると、猫さんはダーッと神社の中に走って行って境内の奥に行ってしまった。

「なんだ、別に私を誘っていたわけじゃなかったんだ」

でも、せっかく神社に入ったので、お参りだけでもしていこう、そう思って、奥の境内に向かってお参りした。

「どうか、自分がやりたいことで仕事ができますように」

わたしは今、自分模索中。昨年から大学の講師とか、少しお仕事はやらせていただいているけれど、夫に家賃とかを払ってもらえているから生きていけるだけで、自立しているとは言い難い。自分できちんと稼げるようになりたい。そう思いながら、自分をどうしたら社会で役立てるかいろいろトライしている。派遣会社に登録して仕事を探したり、Webライティングを勉強してトライしたり。Webライティングのほうは、金額は少ないけれど、継続してお仕事させていただいているところはある。でも、できたらもう少し単価を上げたり、仕事を増やしたりできるといいなと思う。

ふと、背後からミイミイ声がするのに気づいて振り向いた。さっき、神社の境内の中にものすごいスピードで消えてしまった猫さんが、いつの間にかわたしの後ろにちょこんと座って鳴いている。

「え? 何? 遊んで欲しいの?」

そう思って、猫さんに近づいたら、ぱっと逃げて、私の顔をじっと見る。

「違うよ!」

そう言っているように感じた。

「じゃあ、何?」

わたしは少しふてくされた気持ちで猫さんに再度近づいた。

「だから、違うってば!」
猫さんはぴょんっと、後ろに下がった。

そんなふうに、猫に拒絶された気がして、私は、「わかったよ。またね!」と猫を背にして歩き始めた。

「ミャアア〜、ミャア〜」
すると今度は、ちょっぴり甘えたような声で私に向かって鳴いた。

「じゃあ、何?」
私は猫さんのほうを振り向いた。すると、猫さんは今度はぴっと背中をまっすぐにして、きびきびとした動きで、私の顔をじっと見たまま歩き始める。

猫さんが向かったのは、神社のすぐ隣にある稲荷神社の祠だった。

「なあんだ、こっちにお参りしろということ?」

私が祠に入ったら、猫さんは、チンっとすました感じで私の後ろに座った。
私はさっきと同じようにお参りをして、「終わったよ」と猫さんのほうを振り返った。

猫さんは、もういなかった。

それにしても、隣にこんな祠があるとは知らなかった。そして、その隣には、大きなお寺の鐘があるのに気づいた。この辺、しょっちゅう歩いていたけど、意外と気づかないことは多いものだ。

神社を出ようと歩き始めたら、再び猫さんがダーっと走ってきて、私の方を見る。

「今度は何?」と追いかけたら、石と木の壁の間に入りこんでしまった。でも、奥まで行かないで、途中で止まって振り向いてじっと私の方を見ている。

「写真を撮ってあげようか?」とスマホを取り出したら、恥ずかしそうに視線をそらした。

「カシャン」
私は写真を撮った。猫さんは「ニヤア」と言って、じっとしている。

「じゃあ、またね」
「ミャアー」

私は猫さんに挨拶をして、家に帰った。

朝ご飯を食べて、仕事の準備をしようとコンピュータを開けた。すると、クラウドソーシングサービス上で、1件、仕事の依頼が入っていた。

あの猫さん、本物のまねき猫だったのかもなぁと思った。

これからは、まねき先輩と呼ばせていただきます!



 

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